「うちの子は、歯磨きを嫌がるから…」その諦めが、子どもの将来を左右する
「甘いものを、そんなに食べさせていないのに、なぜ…」
子どもの歯に、黒い点や、茶色い着色を見つけた時の、あのショックと罪悪感。
「きちんとケアしてあげられなかった…」と、自分を責めてしまうお父さん、お母さんも少なくないでしょう。
断言します。子どもの虫歯は、遺伝や歯の質だけの問題ではありません。そのほとんどは、日々のデンタルケア、つまり「家庭での習慣」によって、防ぐことができるのです。
この記事では、歯科医の立場から、なぜ子どもの歯は虫歯になりやすいのか、そして、お子さんの大切な歯を一生守るために、**家庭で絶対に実践してほしい「最強の虫歯予防法」**を、科学的根拠に基づいて解説します。
なぜ、子どもの歯は虫歯になりやすいのか?
子どもの歯(乳歯)は、大人の歯(永久歯)に比べて、
- エナメル質が薄く、柔らかい: 歯の表面を覆うバリアが弱いため、酸に溶かされやすい。
- 歯の溝が深い: 食べかすが詰まりやすく、歯ブラシが届きにくい。
- 歯と歯の間の隙間が少ない: 汚れが溜まりやすく、歯の間から虫歯になりやすい。
といった特徴があり、非常にデリケートで、虫歯菌の格好のターゲットなのです。
家庭でできる!最強の虫歯予防・3つの柱
子どもの歯を守るために、ご家庭で実践してほしいことは、突き詰めれば、この3つしかありません。
1. 「フッ素」を、制する
フッ素には、**①歯質を強化し、酸に溶けにくい歯を作る、②虫歯菌の活動を抑制する、③初期の虫歯を修復する(再石灰化の促進)**という、3つの強力な効果があります。
- フッ素配合歯磨き粉を使う: 歯が生えてきたら、フッ素濃度が適切な歯磨き粉を使い始めましょう。年齢別の推奨濃度は以下の通りです。
- 6ヶ月〜2歳: 500ppm
- 3歳〜5歳: 500ppm
- 6歳以上: 1000ppm
- うがいは「少量・1回」で: 歯磨きの後、たくさんの水で何度も口をゆすぐと、せっかくのフッ素が流れてしまいます。少量の水で、1回だけ、軽くゆすぐのが正解です。
- 歯科医院での定期的なフッ素塗布: 家庭でのケアに加え、3〜4ヶ月に一度、歯科医院で高濃度のフッ素を塗布してもらうことで、予防効果は格段にアップします。
2. 「仕上げ磨き」を、極める
子どもが自分で歯磨きができるようになっても、少なくとも小学校中学年(10歳頃)までは、親による「仕上げ磨き」が必須です。
- いつ磨く?: 最も重要なのは「寝る前」です。就寝中は、唾液の分泌が減り、虫歯菌が最も活発になるため、寝る前に、口の中の汚れをリセットすることが不可欠です。
- どう磨く?:
- 子どもを膝の上に仰向けに寝かせ、頭を固定します。
- ペンを持つように歯ブラシを軽く握り、細かく、優しい力で磨きます。
- 特に、**「奥歯の溝」「歯と歯の間」「歯と歯茎の境目」**は、磨き残しが多い三大スポット。意識して、丁寧に磨きましょう。
- デンタルフロスを併用する: 歯と歯の間の汚れは、歯ブラシだけでは落とせません。1日1回、寝る前の仕上げ磨きの際に、デンタルフロスを使う習慣をつけましょう。
3. 「食生活」を、見直す
虫歯は、**「糖分」と「時間」**の二つの要素が大きく関わっています。
- 「だらだら食べ」をやめる: 食事をしたり、甘い飲み物を飲んだりすると、口の中は酸性になり、歯が溶け始めます。時間を決めずに、だらだらと食べ続けることは、歯が酸にさらされる時間を長くし、虫歯のリスクを飛躍的に高めます。
- おやつの内容と時間を決める: おやつは、砂糖を多く含むスナック菓子やジュースはなるべく避け、おにぎりや果物、チーズなどを選びましょう。そして、時間を決めて与えることが大切です。
まとめ:毎日の歯磨きは、親から子への「一生モノの贈り物」
子どものデンタルケアは、正直、面倒なことも多いでしょう。しかし、この数年間の親の努力が、お子さんの一生の健康を左右すると言っても、過言ではありません。
健康で美しい歯は、美味しいものを、美味しく食べられる幸せ、自信を持って、思いきり笑える幸せに繋がります。
それは、親が子に贈ることができる、何物にも代えがたい「一生モノの財産」なのです。
「痛くなってから」ではなく、「痛くなる前に」。今日から、ぜひ、かかりつけの歯科医院を見つけ、親子で楽しく、予防歯科を始めてみませんか?