「学校では、一度もトイレ(大)に行ったことがない」
「お腹が痛くなるから、学校に行きたくない…」
もし、お子さんからそんな言葉を聞いたら、あなたはどう感じますか?「どうして?」「家では普通にできるのに」と、不思議に思うかもしれません。
しかし、これは決して珍しい悩みではありません。多くの子どもたちが、**「学校のトイレで排便ができない」**という、見えない壁に苦しんでいます。
この問題を、単なる「恥ずかしがり屋だから」と片付けてはいけません。背景には、子どもなりの複雑な理由が隠されており、我慢を続けることで、慢性的な便秘や腹痛、さらには登校しぶりといった、心と体の深刻な問題に繋がる可能性があるのです。
この記事では、現役ママナースである私が、
- なぜ子どもは学校のトイレを避けるのか?5つの心理的ハードル
- 家庭でできる、心と体の両面からのサポート策
- 「学校が安心な場所になる」先生との上手な連携方法
を、詳しく解説します。
この記事を読めば、お子さんが抱えるトイレ問題の根っこにある原因が理解でき、親として、今すぐできる具体的なアプローチが見つかります。
なぜ?学校のトイレが「怖い場所」になる5つの理由
子どもたちが学校のトイレ、特に個室にこもることを避けるのには、大人には想像しにくい、様々な理由があります。
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音や臭いを、からかわれるのが怖い
これが最も多い理由です。「自分がトイレにいる音や、出てきた後の臭いを、友達に気づかれたらどうしよう」「『くさい』って言われたら、恥ずかしい…」。自意識が芽生え始める小学生にとって、排泄は非常にプライベートで、デリケートな問題なのです。 -
和式トイレが使いにくい、汚い
家庭では洋式トイレが一般的な現代、和式トイレを使ったことがない子も少なくありません。使い方への戸惑いや、「汚い」「暗い」といった不衛生なイメージが、トイレへの苦手意識を増幅させます。 -
休み時間が短く、落ち着いてできない
わずか10分程度の休み時間で、友達との遊びも、トイレも済ませるのは至難の業。「トイレに行っていたら、次の授業に遅れちゃうかも」「友達に『まだー?』って急かされるのが嫌だ」と感じ、行くタイミングを逃してしまうのです。 -
「うんち=汚いもの」という羞恥心
成長とともに、「うんち」という言葉自体に羞恥心を感じるようになります。先生に「トイレに行きたいです」と言うことさえ、はばかられる子もいます。 -
過去のトラウマ
以前、トイレのことで友達にからかわれた経験があったり、トイレが間に合わず粗相してしまったりした経験が、トラウマになっているケースもあります。
家庭でできる!心と体の「快便サポート」
学校で安心してトイレに行けるようになるためには、まず、家庭で「排便は自然で、大切なこと」という安心感を育み、リラックスして排便できるリズムを作ることが不可欠です。
【体のサポート】朝食後の排便リズムを習慣づける
最も排便反射が起こりやすいのは、朝食後と言われています。朝、家でスッキリ出す習慣がつけば、学校で我慢する必要がなくなります。
- いつもより15分早く起こす: 朝の時間に、心と体の余裕を作りましょう。
- 朝食をしっかり食べる: 朝食を食べることで、胃腸が動き出し、便意が促されます。特に、食物繊維(野菜、果物、海藻など)と水分を意識して摂らせましょう。
- 食後、トイレに座る時間を確保する: 便意がなくても、食後に5〜10分、トイレに座る習慣をつけてみましょう。絵本を持ち込んだり、足台を置いてあげたりして、リラックスできる環境を整えるのがポイントです。
【心のサポート】排便へのポジティブなイメージを作る
- 「うんちの話」をタブーにしない: 「今日のうんちは、どんな形だった?」「バナナうんちが出ると、お腹がスッキリして気持ちいいね!」など、親子でオープンに話せる雰囲気を作りましょう。排便は、健康のバロメーターであることを伝えます。
- 絵本を活用する: 排便や体の仕組みに関する、楽しい絵本を一緒に読むのも効果的です。「みんな、同じようにうんちをするんだ」と知ることで、子どもの羞恥心が和らぎます。
- 学校のトイレ事情を聞いてみる: 「学校のトイレって、どんな感じ?」「和式と洋式、どっちが多い?」など、さりげなく話を聞いてみましょう。子どもが何に困っているのか、ヒントが見つかるかもしれません。
最終手段は「先生との連携」
家庭でのサポートを続けても、なかなか改善しない場合は、遠慮なく担任の先生に相談しましょう。その際、感情的に「うちの子がトイレに行けないんです!」と訴えるのではなく、具体的に、そして建設的にお願いするのがポイントです。
【伝え方の例】
「いつもお世話になっております。実は、息子が学校のトイレで排便ができず、毎朝お腹を痛がることがあり、悩んでおります。もし可能でしたら、授業中でも、本人がトイレに行きたいと申し出た際には、快く行かせていただけますでしょうか。また、人目が気になるようなので、少し離れた場所にあるトイレを使わせていただく、などのご配慮をいただくことは可能でしょうか。」
このように伝えることで、先生も問題の重要性を理解し、具体的な対策を考えてくれやすくなります。
まとめ:子どものSOSを見逃さず、安心できる環境を整えよう
学校でトイレに行けない、という問題は、子どもの心と体に大きな負担をかける、見過ごせないSOSです。
- 子どもがトイレを我慢する背景には、羞恥心や衛生面など、様々な理由があることを理解する。
- 家庭では、朝食後の排便リズムを作り、排便へのポジティブなイメージを育む。
- どうしても改善しない場合は、一人で抱え込まず、先生と連携して対策を考える。
排泄は、生きていく上で欠かせない、自然な生理現象です。子どもが、いつでも、どこでも、安心してトイレに行ける。そんな当たり前の環境を、家庭と学校が協力して整えてあげることが、子どもの健やかな成長に繋がります。
お子さんの小さな悩みに寄り添い、その背中をそっと押してあげてくださいね。