夜中に響く、ポリポリという音。朝、シーツに滲む血の跡。
「かゆい、かゆい…」
そう言って、眠い目をこすりながら、自分の体を掻きむしる我が子。
夜中にその音で目が覚め、朝、シーツに血が滲んでいるのを見つけた時の、胸が張り裂けそうな気持ち。
アトピー性皮膚炎の子どもを持つママ・パパにとって、この光景は、本当に辛いものですよね。
「代わってあげたい」
「どうして、こんなに痒いの?」
その気持ち、痛いほどわかります。
でも、どうか自分を責めないでください。アトピーは、あなたの育て方のせいでは、決してありません。
こんにちは。3人の娘を育てながら、ナースとして働く皐月です。
今日は、アトピーっ子の辛いかゆみの悪循環を断ち切るための、**正しいスキンケアの「基本のき」**について、徹底的にお話しします。
なぜ?アトピーっ子の肌で起きていること
アトピー性皮膚炎の肌は、一言でいうと**「バリア機能が壊れて、スカスカになっている状態」**です。
健康な肌は、レンガとセメントのように、細胞と脂質がしっかり組み合わさって、外部の刺激(汗、ホコリ、細菌など)から体を守っています。
しかし、アトピーっ子の肌は、このセメントが不足しているため、刺激が入りやすく、水分も逃げやすい。だから、乾燥して、かゆくなるのです。
そして、「かく→さらにバリアが壊れる→もっと痒くなる」という、負のスパイラルに陥ってしまいます。
このスパイラルを断ち切る鍵こそが、毎日の「スキンケア」なのです。
【ママナースの処方箋】かゆみの悪循環を断つ!3つの鉄則
スキンケアの基本は、**「①優しく洗う」「②すぐ保湿」「③薬は正しく」**の3つです。
鉄則①:洗浄|ゴシゴシは厳禁!「泡」で優しく
汗や汚れは、かゆみの原因になります。でも、洗いすぎは禁物。
- ぬるま湯で: 熱いお湯は、肌の潤いを奪います。38〜40℃のぬるま湯で。
- たっぷりの泡で: 石鹸はよく泡立て、ナイロンタオルなどは使わず、手で優しく撫でるように洗いましょう。泡が、汚れを吸着してくれます。
- しっかり流す: シャワーで、石鹸成分が残らないように、丁寧に洗い流します。
- 優しく拭く: 清潔なタオルで、こすらずに、ポンポンと押さえるように水分を吸い取ります。
鉄則②:保湿|お風呂上がり「5分以内」がゴールデンタイム!
これが、スキンケアで最も重要なポイントです!
お風呂上がりの肌は、水分をたっぷり含んでいますが、同時に、ものすごいスピードで乾燥していきます。
お風呂から上がったら、5分以内!
肌がまだしっとりしている「ゴールデンタイム」に、たっぷりの保湿剤を塗りましょう。
- 量は「たっぷり」と: 「少し多いかな?」と思うくらいが正解です。塗った後、ティッシュが貼り付くくらいが目安。
- 擦り込まない: 毛穴を詰まらせないよう、毛の流れに沿って、優しく、一方通行で塗るのがコツです。
- 1日2回以上: 朝の着替えの時と、お風呂上がりの最低2回。日中も、乾燥が気になったらこまめに塗りましょう。
鉄則③:薬|ステロイドは「怖い」?いいえ、「味方」です
「ステロイドは怖い」というイメージ、ありますか?
確かに、自己判断で長期間ダラダラと使い続けるのはよくありません。
でも、医師の指導のもと、適切な強さの薬を、適切な量、適切な期間使うのであれば、炎症をしっかり抑え、壊れた肌バリアの回復を助けてくれる、**非常に心強い「味方」**です。
怖いのは、中途半端に塗って炎症を長引かせてしまうこと。医師に指示された量を、しっかり守って塗りましょう。
日常生活でできる、ちょっとした工夫
- 衣類: 肌に直接触れるものは、チクチクしない綿100%がおすすめ。タグも切ってあげましょう。
- 爪: 短く切り、やすりで丸くしておくと、掻き壊しを防げます。
- 汗対策: 汗をかいたら、こまめに濡れたタオルで拭くか、シャワーで流しましょう。
最後に。長い目で、焦らず、一緒に。
アトピー性皮膚炎との付き合いは、時に長く、根気がいるものです。良くなったり、悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ肌が強くなっていきます。
「どうして良くならないの…」と、一人で抱え込まないでください。
かかりつけの皮膚科の先生や、私たちのようなナース、地域の保健師さんなど、頼れる人はたくさんいます。
正しいケアを続ければ、お子さんの肌は、必ず落ち着いてきます。
その日を信じて、焦らず、お子さんと一緒に、一歩ずつ進んでいきましょう。
