スーパーの床に寝そべって、手足をバタつかせ、火がついたように泣き叫ぶ我が子。
周りの冷たい視線が突き刺さる中、あなたの頭の中で、何かがプツンと音を立てて切れる。「いい加減にしなさい!」気づけば、自分でも驚くような大声で、子どもを怒鳴りつけていた…。
そして、車に戻って一人、ハンドルを握りしめながら涙が止まらなくなる。「なんて酷い母親なんだろう」と、自分を責めて、責めて…。
こんにちは。3人の娘を育ててきた、現役ママナースの皐月です。
まず、あなたに伝えたいこと。**子どものイヤイヤにイライラしてしまうのは、あなたが母親失格だからではありません。**むしろ、あなたが24時間365日、子どもの命と向き合い、必死で頑張っている証拠なんです。
この記事では、そんな風に自分を責めてしまう、優しいあなたのために、「怒りの感情」の正体と、爆発寸前の自分を救うための具体的な方法を、看護師としての知識も交えながら、お伝えしたいと思います。
この記事でわかること
- あなたのイライラは、実は「心のSOSサイン」である理由
- 【緊急対処法】感情が爆発する直前の「6秒」を乗り切る方法
- もう怒らない自分になるための「心の予防接種」
- 「完璧なママ」より「笑顔のママ」が、子どもにとって一番なワケ
そのイライラの正体は、あなたの「助けて!」という叫び声
なぜ、あんなに愛おしい我が子に対して、自分でもコントロールできないほどの怒りが湧いてくるのでしょうか。
結論から言うと、その怒りの正体は、あなたの「心と体のキャパオーバー」を知らせる、アラーム音です。
- 慢性的な睡眠不足
- 栄養の偏り
- ホルモンバランスの乱れ
- 社会からの孤立感
- 「ちゃんとしなきゃ」というプレッシャー
これらが複雑に絡み合い、あなたの「理性」を司る脳の前頭前野の働きを鈍らせています。つまり、理性のブレーキが効きにくくなっている状態。これは、根性や愛情でどうにかなる問題ではなく、脳の機能の問題なのです。
だから、自分を責めるのは今日で終わりにしましょう。あなたはただ、助けが必要なだけなんです。
【緊急アンガーマネジメント】爆発する直前の「6秒」を乗り切る3つの方法
怒りの感情のピークは、長くて「6秒」と言われています。この6秒をやり過ごせば、最悪の爆発は避けられます。
① 物理的に「離れる」
子どもが安全な場所にいることを確認したら、「ママ、ちょっとあっち行ってるね」と一言だけ告げて、物理的にその場を離れましょう。 トイレに駆け込む、ベランダの空気を吸う、隣の部屋に移動する。たった数メートル離れるだけで、視界からの刺激が遮断され、冷静さを取り戻すきっかけになります。
② ひたすら「呼吸」に集中する
怒りで心臓がバクバクしてきたら、「吸う」ことより「吐く」ことに意識を集中させてみてください。「1、2、3」で吸って、「1、2、3、4、5、6」で、細く長ーく息を吐ききる。これを数回繰り返すだけで、興奮を司る交感神経が鎮まり、リラックスを促す副交感神経が優位になります。
③ 自分を救う「呪文」を唱える
心の中で、自分を落ち着かせるための「呪文(マントラ)」を決めておきましょう。
- 「大丈夫、これは成長の証…」
- 「この子は困っているだけ。私を困らせているわけじゃない」
- 「まあ、いっか。死ぬわけじゃないし」
バカみたいだと思うかもしれませんが、言葉の力は絶大です。怒りの感情に支配されそうな自分を、客観視する手助けになります。
もう限界にならないための「心の予防接種」
「その場しのぎ」だけでなく、そもそもイライラしにくい心を作るための、長期的なセルフケアも大切です。
1. 自分の「怒りのクセ」を知る
「お腹が空いている時」「寝不足の時」「時間に追われている時」など、自分がどんな時にイライラしやすいか、パターンを把握しておきましょう。「あ、今私、ヤバいかも」と事前に察知できれば、早めに対策が打てます。
2. 1日10分でいい。「何もしない」時間を死守する
スマホもテレビも見ず、ただ一人、温かい飲み物を飲んでボーっとする。そんな「完全オフ」の時間を、意識的に作りましょう。「子どもが寝た後の10分だけは、私のゴールデンタイム!」と決めて、誰にも邪魔されない聖域を確保してください。
3. 「助けて」の練習をする
「察してほしい」は、夫婦喧嘩のもと。一番身近なパートナーに、「ごめん、5分だけ代わってほしい」「今日、本当に疲れたから、帰りに何か買ってきてくれると嬉しいな」と、具体的に「助けて」と伝える練習をしましょう。あなたの「助けて」は、決して相手を困らせるものではなく、家族の平和を守るための、賢明な判断です。
まとめ:あなたは、あなたのままで、最高の母親
イヤイヤ期は、子どもが「自分」という存在を確立するための、大切な成長過程。そして同時に、親が**「完璧な親」という幻想を手放し、自分自身の限界を知り、人に頼ることを覚えるための、大切な成長過程**でもあります。
子どもは、いつも完璧で、決して怒らない聖人のようなママを求めているわけではありません。
少し失敗しても、「ごめんね」と謝って、笑いかけてくれる。そんな、人間らしい、ありのままのあなたのことが、きっと大好きなんですよ。
