「うちの子、運動神経悪いかも…」その一言が、子どもの未来を縛る
公園で、ほかの子はひょいひょいと登っていくジャングルジム。
でも、うちの子は、怖がって、なかなか挑戦しようとしない。
ドッジボールでは、いつもボールから逃げ回ってばかり。
かけっこをしても、いつもビリの方…。
そんな我が子の姿を見て、
「もしかして、うちの子、運動神経が良くないのかも…」
と、不安な気持ちになったことはありませんか?
そして、その不安を、つい子どもの前で口にしてしまってはいませんか?
3姉妹の母であり、ナースとして子どもたちの発達に数多く関わってきた私から、今日、ママたちに、声を大にしてお伝えしたいことがあります。
その**「運動神経、悪いかも」という言葉こそが、お子さんの可能性を縛り付け、運動嫌いにしてしまう、最も強力な「呪いの言葉」**だということを。
「運動神経」は生まれつき、ではない
まず、知っておいてほしいこと。
それは、「運動神経」というものは、決して生まれつき決まっているものではない、ということです。
もちろん、骨格や筋肉のつきやすさなど、遺伝的な要素が全くないわけではありません。
でも、子どもが、自分の体を思い通りに動かす能力は、幼児期の経験によって、いくらでも、どこまでも、伸ばしていくことができるのです。
親が「この子は運動が苦手だから」と決めつけてしまうと、子ども自身も「僕は(私は)運動ができないんだ」と思い込み、挑戦する前から諦めてしまうようになります。
これほど、もったいないことはありません。
6歳までに本当に育てるべきは「体の土台」
では、幼児期に、特定のスポーツを習わせたり、速く走るための特訓をさせたりするべきなのでしょうか?
私は、そうは思いません。
ナースの視点から見ると、6歳までの幼児期に本当に育てるべきなのは、かけっこが速い、ボール投げが上手いといった、目に見える「スキル」ではありません。
将来、あらゆるスポーツや動きに、しなやかに対応できるための、**ブレない「体の土台」**作り。
これこそが、何よりも重要なのです。
家を建てる時、いきなり壁や屋根から作り始めませんよね?
まずは、地面を固め、頑丈な基礎(土台)を作るはずです。
子どもの体も、全く同じなのです。
ナースが注目!「体の土台」を作る“3つの感覚”
この「体の土台」を作る上で、特に重要だと考えられているのが、3つの感覚です。
① 固有感覚(自分の体の地図を、頭の中に描く力)
これは、目で見なくても、自分の体のパーツが今どこにあって、どう動いているかを、無意識に把握する力のこと。「ボディイメージ」とも言われます。
例えば、目を閉じて片足立ちをしたり、自分の鼻を指で触ったりできるのは、この感覚のおかげです。
この感覚を養うには、自分の体重を、自分の手足でしっかりと支える経験が不可欠。
- ハイハイ(高ばい)
- 公園のうんていや鉄棒へのぶら下がり
- 雑巾がけのお手伝い
- 段ボールのトンネルくぐり
などが、最高のトレーニングになります。
② 前庭感覚(バランスをとる力)
これは、体の傾きや回転、スピードなどを感じ取る、いわば「バランス感覚」のこと。
この感覚が弱いと、乗り物酔いをしやすかったり、転びやすかったりします。
この感覚を鍛えるには、日常の中に、適度な「揺れ」や「不安定さ」を取り入れるのが効果的。
- ブランコ、ハンモック
- パパのひざの上での飛行機ブーン
- 坂道の上り下り、ダッシュ
- わざと、デコボコした道を歩く
などがおすすめです。
③ 触覚(皮膚で、世界を感じる力)
皮膚は「第二の脳」とも言われるほど、重要な感覚器官です。
様々なものに触れる経験は、脳に多様な刺激を与え、①のボディイメージを、より豊かにしてくれます。
- 裸足で、砂浜や芝生の上を歩く
- 泥んこ遊び、水遊び
- 粘土遊び、指絵の具
- ママやパパとの、くすぐり遊びやマッサージ
洋服が汚れる…なんて気にせず、ぜひ、五感をフルに使った遊びをさせてあげてください。
運動能力は、後からいくらでもついてくる!
この3つの感覚を土台として、幼児期にしっかりと育てておけば、どうなるか。
小学校に入って、どんなスポーツを始めても、自分の体を思い通りに動かし、スムーズに技術を習得していくことができます。
幼児期に大切なのは、特定のスポーツの早期教育ではありません。
公園の遊具で遊んだり、野山を駆け回ったり、鬼ごっこをしたり…。
多様な動きが詰まった**「外遊び」こそが、子どもの「体の土台」を作る、最強のトレーニング**なのです。
「うちの子、運動神経悪いかも…」
もし、あなたがそう感じているのなら、それは、まだ「土台工事」が終わっていないだけ。
結果を焦らないで。
周りと比べないで。
6歳までは、とにかく、親子で思いっきり、体を動かす遊びを楽しんでください。
その一つ一つの楽しい経験が、お子さんの未来の可能性を無限に広げる、最高の「投資」になるのですから。
