「もう、ピアノ行きたくない…」その時、あなたはどうしますか?
「ママ、あのね…。もう、ピアノ、行きたくないんだ」
ある日、子どもから、突然、そう告げられた時。
あなたの心の中には、どんな感情が渦巻くでしょうか。
「え、なんで!?あんなに『やりたい』って言ってたじゃない!」
「月謝だって、安くないのに…」
「せっかく、ここまで続けたのに、もったいない!」
焦り、戸惑い、そして、ちょっぴりの怒り…。
その気持ち、3姉妹を育てる母として、私も、何度も経験してきました。
でも、子どもの「やめたい」という言葉は、実は、その子の将来を左右する、非常に重要な「分岐点」。
ここで親がどう対応するかで、その子が、困難なことからすぐに逃げ出す「辞めグセ」のある子になるか、自分で考えて乗り越える力を持つ子になるかが決まる、と言っても、過言ではないのです。
今日は、私が、長女の習い事で、一度、大きな後悔をした経験から学んだ、「やめさせ方」の重要性について、お話しさせてください。
なぜ「やめさせ方」が、そんなに大事なのか?
子どもの「やめたい」という気持ち。
その背景には、様々な理由が隠されています。
その気持ちに、きちんと向き合わないまま、
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「そう、わかった。じゃあ、やめれば?」と、安易に許可してしまう
→子どもは、「嫌なこと、難しいことは、すぐに投げ出していいんだ」と学習してしまいます。これが、「辞めグセ」の始まりです。 -
「絶対にダメ!続けなさい!」と、頭ごなしに強制する
→子どもは、「自分の気持ちは、聞いてもらえないんだ」と、心を閉ざし、自己肯定感を下げてしまいます。親への不信感にも繋がります。
どちらの対応も、子どもの健やかな成長にとっては、マイナスでしかありません。
大切なのは、やめさせるか、続けさせるか、という二者択一ではなく、子どもが、自分の気持ちと向き合い、納得して、次の一歩を踏み出すための、プロセスそのものなのです。
親が絶対にやってはいけない!NGな対応3選
子どもの「やめたい」を聞いた時、カッとなって、こんな対応をしていませんか?
NG①:感情的に怒り、親の都合を押し付ける
「今まで、月謝をいくら払ったと思ってるの!」
「ママが、毎週、送り迎えしてるのだって、大変なんだからね!」
お金や、親の労力の話を持ち出すのは、最悪です。子どもは、罪悪感で、心を閉ざしてしまいます。
NG②:根性論を振りかざし、気持ちを無視する
「みんな、頑張ってるんだから、あなたも頑張りなさい!」
「石の上にも三年って言うでしょ!」
子どもの「なぜ、やめたいのか」という、一番大切な気持ちを、完全に無視した、一方的な精神論です。
NG③:理由も聞かずに、即決で許可する
「はいはい、わかった、わかった。じゃあ、もうやめようね」
一見、子どもの気持ちを尊重しているように見えますが、これは、親が、子どもと向き合うことを「放棄」しているのと同じ。子どもは、「自分は、その程度の存在なんだ」と感じてしまいます。
子どもの「次の一歩」に繋がる!親子の“前向きな”話し合い・3ステップ
では、どうすればいいのか。
私が実践している、親子の話し合いの3つのステップをご紹介します。
ステップ1:まずは、気持ちを、丸ごと受け止める(共感)
「そっか、行きたくないんだね」
「練習、しんどくなっちゃったんだね」
と、まずは、子どもの「やめたい」という気持ちを、一切、否定せずに、受け止めます。
「なんで?」と質問攻めにせず、「そうか、そうか」と、子どもが、安心して、自分の気持ちを吐き出せる「安全基地」になってあげましょう。
ステップ2:「なぜ、やめたいのか」本当の理由を、一緒に探る(深掘り)
心が落ち着いたら、いよいよ、本題です。
「行きたくない」という言葉の裏に隠された、本当の理由を、一緒に、探っていきます。
- 先生が怖い、厳しい?
- クラスに、苦手な友達がいる?
- 練習が、難しくて、ついていけない?
- 他に、もっとやりたいことが、できた?
「もし、〇〇がなかったら、続けられそう?」と、角度を変えて質問してみるのも、効果的です。
親が、探偵になったつもりで、冷静に、本当の原因を、突き止めましょう。
ステップ3:解決策と「やめる前の目標」を、一緒に決める(伴走)
もし、原因が、練習方法や、人間関係など、解決可能な問題であれば、「先生に、少し相談してみようか」「この練習方法を、試してみない?」と、解決策を、一緒に考えます。
それでも、「やめたい」という気持ちが固い場合は、**「やめる前の、着地点」**を、親子で、一緒に決めるのです。
「わかった。じゃあ、次の発表会で、この曲を弾いたら、終わりにしようか」
「このテキストが、全部終わるまでは、頑張ってみない?それができたら、ママも、納得できるから」
と、親子で納得できるゴールを設定する。
この**「自分で決めたゴールまで、やり切った」**という経験が、たとえ、習い事をやめるという結果になったとしても、子どもの中に、大きな自信と、達成感を、残してくれるのです。
「やめる」は「失敗」じゃない。「次へ進む」ための、大切な“決断”です
習い事をやめることは、決して「失敗」や「挫折」ではありません。
それは、子どもが、自分の気持ちと向き合い、自分には合わないことを見極め、次へ進むために下した、**尊い「決断」**なのです。
親の役目は、その習い事を、無理やり続けさせることではありません。
子どもが、その「決断」のプロセスを通して、自分で考え、納得し、次の一歩を踏み出すための、最高の伴走者になってあげること。
その経験こそが、将来、お子さんが、勉強や、仕事や、人間関係で、困難な壁にぶつかった時に、自分で考え、乗り越えていくための、本当の「生きる力」になるのですから。
