【体験談】娘が学校に行けなくなった日。不登校の闇を抜けた、母ナースの全記録

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プロローグ:「お腹が痛い…」その言葉が、悪夢の始まりでした

「いってきます!」

毎朝、元気よく玄関を飛び出していく娘の背中を見送る。それが、私の当たり前の日常でした。

あの日までは。

こんにちは。3人の娘を育てる、現役ママナースの皐月です。
これは、かつて私の次女が「学校に行けなく」なり、暗くて長いトンネルの中を、親子で彷徨った日々の記録です。

看護師として、人の心身の不調には敏感なはずだったのに、我が子の「SOS」には、全く気づけませんでした。
もし今、あなたがお子さんの「学校行きたくない」という言葉に、どうしようもなく苦しんでいるのなら、この私の失敗と後悔の物語が、あなたの心を少しでも軽くするきっかけになることを願っています。


第1章:兆候(中学1年生の秋)

異変は、些細な体調不良から始まりました。

「お腹が痛いから、今日の部活、休んでもいい?」
「頭が痛くて、朝起きられない…」

活発で、友達も多く、生徒会にも立候補するような娘でしたから、最初は「季節の変わり目かな」「ちょっと疲れが出たのかな」くらいにしか思っていませんでした。
病院に連れて行っても、結果はいつも「異常なし」。

今思えば、この時、娘の心はとっくに限界を超えていたのです。でも、私は「気のせいでしょ」「頑張って行きなさい」と、娘のSOSを、いとも簡単に突き放してしまいました。

第2章:宣告(冬の朝)

そして、運命の日が訪れます。

いつものように、ぐずる娘を叩き起こし、制服に着替えさせ、玄関で「早くしなさい!」と怒鳴った、その時でした。
娘は、今まで見たことのないような無表情な顔で、私を見つめ、静かに言いました。

「もう、学校には、行けない」

その瞬間、私の頭の中は、真っ白になりました。

【私が犯した、最初の過ち】
この時、私が最初に口にした言葉は、「どうして?」「何があったの?」という、原因を問い詰める言葉でした。しかし、子ども自身も、なぜ行けないのか分かっていません。問い詰められることは、子どもにとって尋問でしかなく、心を固く閉ざすきっかけになります。

第3章:停滞(出口のない日々)

そこからの日々は、まさに地獄でした。

娘は、昼夜逆転し、自室に閉じこもる。私は、仕事から帰ると、荒れた部屋と、虚ろな目をした娘の姿に、絶望する。

「私の育て方が、悪かったの…?」
「いつまで、こんな日が続くの…?」

焦りと不安から、私は娘に、「怠けてるだけじゃないの」「将来どうするの」と、言ってはいけない言葉を、何度もぶつけてしまいました。そのたびに、娘は深く傷つき、夫婦喧嘩も絶えなくなりました。

【ママナースのカルテ①:心身症の可能性】
この時期の娘の症状は、今思えば「起立性調節障害」の典型でした。朝起きられない、頭痛、腹痛…。不登校の背景には、こうした自律神経の乱れが隠れていることも少なくありません。精神論だけで片付けず、小児科や心療内科に相談することも重要です。

第4章:転機(一本の電話)

八方塞がりだった私を救ってくれたのは、学校のスクールカウンセラーの先生からの、一本の電話でした。

私の話を一通り聞いた先生は、静かにこう言いました。

「お母さん。今、一番休まなければいけないのは、娘さんじゃなくて、お母さん、あなた自身ですよ」

涙が、溢れて止まりませんでした。
私は、娘をコントロールしようとすることに必死で、自分自身がボロボロになっていることに、気づいていなかったのです。

その日、私は、戦うのをやめました。
娘を「治す」のをやめました。

ただ、娘にとっての**「心の安全基地」**になること。それだけを、心に決めました。

第5章:回復(何もしない、をする)

私がしたことは、たった一つ。

朝、娘が起きてこなくても、「おはよう。朝ごはんは、食べられそう?」とだけ聞き、あとは、何もしない。

「学校は、行きたくなったら行けばいい。行かなくても、ママは、あなたのことが大好きな気持ちは、1ミリも変わらないからね」

そう伝え続けました。

ゲームに没頭する日、一日中パジャマで過ごす日…。焦る気持ちがなかったと言えば、嘘になります。でも、ひたすら「待つ」と決めました。

数ヶ月が経った頃、娘が、ポツリと言いました。
「このアニメの聖地、行ってみたいな」

それは、止まっていた時間が、再び動き出した、小さな、でも、確かな瞬間でした。

第6章:新しい道(学校だけが、すべてじゃない)

私たちは、一緒に、そのアニメの聖地に行きました。そして、その旅の途中で、娘は、通信制の高校に、イラストのコースがあることを見つけました。

「私、絵を描く勉強がしたい」

娘が、自分の口から、未来の話をしたのは、本当に、久しぶりのことでした。

今、娘は、その通信制高校に通いながら、毎日、大好きな絵を描いています。表情は、驚くほど明るくなりました。

エピローグ:不登校は、親子の絆を見つめ直す機会

今、渦中にいるあなたは、きっと、孤独で、不安で、押しつぶされそうになっていることでしょう。

でも、どうか、一人で抱え込まないでください。そして、何よりも、自分自身を責めないでください。

不登校は、決して「終わり」ではありません。それは、子どもが、自分に合った生き方を見つけるための、大切な「自分探しの旅」の始まりなのです。

そして、親にとっては、これまでの子育てを見つめ直し、親子の絆を、もう一度、深く結び直すための、神様がくれた、貴重な時間なのかもしれません。

あなたが笑顔でいることが、子どもにとって、一番の安心材料になります。どうか、あなた自身の心も、大切にしてあげてくださいね。

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