保育園からの着信。電話の向こうから聞こえてくる、先生の申し訳なさそうな声。
「すみません、お母さん。〇〇ちゃんが、お友達を噛んでしまって…」
その瞬間、心臓がキュッと縮むような感覚。頭が真っ白になりながら、何度も何度も「申し訳ありません」と頭を下げる…。
「どうして、うちの子だけ…」「私の育て方が、いけないの…?」
そんな風に、自分を責め、一人で涙していませんか?
こんにちは!3人の娘を育てながら、看護師として働く皐月です。その気持ち、痛いほどわかります。私も、娘たちが小さい頃、お友達とのトラブルで、何度も胸を痛め、自分の無力さに落ち込みました。
でも、今だから、あなたに強く伝えたいのです。
子どもの「噛む」「叩く」という行動は、**その子が「悪い子」だからではありません。それは、まだ言葉で自分の気持ちを伝えられない、小さな心からの、必死の「SOS」**なんです。
この記事では、そのSOSを正しく翻訳し、感情的に叱るのではなく、子どもの心を育てるための「処方箋」を、具体的にお伝えします。
この記事でわかること
- 子どもの攻撃行動の裏に隠された「本当の気持ち」
- その場でどうする?ママナース流「応急処置3ステップ」
- 年齢別!子どもの社会性を育む、これからの関わり方
なぜ?行動の裏側にある、子どもの「心の声」を聴こう
子どもは、私たちを困らせようとして、叩いたり噛んだりするわけではありません。その行動の裏には、必ず理由があります。
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「言葉にできない!」という、もどかしさ
特に1〜2歳頃は、「イヤだ!」「貸して!」「やめて!」という気持ちを、言葉で表現できません。そのもどかしさが、手や口になって出てしまうのです。 -
「これは僕のだ!」という、自我の芽生え
「自分」という意識が芽生え、自分の思い通りにしたい、という気持ちが強くなる時期。大切なものを守るための、原始的な自己主張とも言えます。 -
「ママ、こっち向いて!」という、愛情確認
下の子が生まれた、ママが仕事で忙しそう…など、自分への関心が薄れていると感じた時、気を引くために、わざと困らせるような行動をとることがあります。 -
「こうしたら、どうなる?」という、好奇心
叩いたらどんな音がする?噛んだら、どんな顔をする?純粋な好奇心や、相手の反応を見るための「お試し行動」である場合も。
その場でどうする?ママナース流「応急処置3ステップ」
子どもが手を出してしまったその瞬間、親の対応が、その後の子どもの心を大きく左右します。感情的に怒鳴る前に、この3ステップを思い出してください。
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Step1:止める(毅然と、短く)
まずは、子どもの手を掴むなどして、物理的に行動を止めます。そして、「ダメ!」と、短く、低い声で、真剣な表情で伝えます。長々としたお説教は、子どもの耳には入りません。 -
Step2:代弁する(気持ちを翻訳)
「おもちゃ、取られそうになって、イヤだったんだね」「貸してって言えなくて、悲しかったんだね」。子どもの「心の声」を、あなたが言葉にしてあげるのです。子どもは、「ママは、わかってくれた」と安心し、自分の気持ちと向き合うことができます。 -
Step3:教える(正しい方法を)
気持ちを代弁した後、「でも、叩くのは違うよ」「イヤな時は、『イヤ』って言おうね」「貸してほしい時は、『かーしーて』って、おててを出すんだよ」と、具体的な代替案を、根気強く、何度も教えてあげます。
《皐月の魔法の言葉》
相手の子に謝らせる時、「ごめんなさいは!?」と無理強いしていませんか?まだ理由がわかっていない子に謝罪を強要しても、心は育ちません。そんな時は、まず親が「ごめんね、痛かったね」と謝る姿を見せましょう。そして、自分の子には「お友達、泣いちゃったね。悲しいお顔してるね」と、相手の気持ちに気づかせる言葉をかける方が、ずっと効果的ですよ。
【年齢別】これからの関わり方のヒント
応急処置と並行して、子どもの発達段階に合わせた関わり方で、心を育てていきましょう。
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乳幼児期(〜3歳頃)
言葉で伝える練習を、遊びながら何度も繰り返しましょう。「どうぞ」「ありがとう」のやり取りや、気持ちを表す言葉が出てくる絵本を読むのもおすすめです。 -
幼児期(3〜6歳頃)
「叩かれたら、どんな気持ちになるかな?」と、相手の気持ちを想像させるような問いかけを増やしていきましょう。ごっこ遊びの中で、トラブル解決のシミュレーションをするのも良いですね。
まとめ:攻撃行動は、コミュニケーションを学ぶ、またとないチャンス
子どもの攻撃行動は、親の心をえぐる、非常につらい出来事です。でも、見方を変えれば、それは、子どもが社会性を学び、自分の感情と向き合うための、またとない成長のチャンスなのです。
「ダメ!」と行動を抑えつけるだけでは、子どもの心は育ちません。
その行動の裏にある「心の声」に耳を傾け、正しい方法を一緒に見つけてあげる。その根気強い関わりこそが、子どもの「人を思いやる心」を育てる、最高の栄養になります。
あなたは、一人ではありません。悩んだ時は、いつでも私たち専門家を頼ってくださいね。
