「また、お友達を噛んじゃったって…」
「どうしてうちの子は、すぐに手が出ちゃうんだろう…」

子どもが友達や兄弟を噛んだり、叩いたりする姿を見ると、親としては本当に胸が締め付けられる思いがしますよね。心配、恥ずかしい、そして何より「私の育て方が悪いのかな…」と、つい自分を責めてしまう気持ち、痛いほどよく分かります。

私自身、3人の娘を持つ母として、子どもの攻撃行動に悩んだ経験があります。看護師として、子どもの発達や心理に関する知識を持つ視点から見ても、この行動は、親が冷静に対応することが非常に重要だと感じています。

でも、大丈夫。子どもの「噛む」「叩く」といった攻撃行動は、決して「悪い子」だから起こるものではありません。それは、子どもの発達段階における自然な行動であり、その裏には様々な心理が隠されています。

この記事では、現役ママナースの私が、子どもの攻撃行動の背景にある心理と、親が感情的に叱らずに、子どもの心を育むための具体的な対応術、言葉かけのヒントを徹底解説します。

なぜ子どもは「噛む・叩く」の?攻撃行動の裏にある心理

子どもの攻撃行動は、決して「わざと」ではありません。多くの場合、それは子どもが自分の気持ちをうまく表現できないために起こる、「SOS」のサインです。

1. 気持ちをうまく伝えられない「もどかしさ」

  • 言葉の発達の未熟さ:特に乳幼児期は、まだ言葉で自分の気持ちをうまく伝えられません。「貸して」「やめて」と言葉で伝えられない代わりに、手が出てしまうことがあります。
  • 欲求不満:自分の思い通りにならない時、怒りや悲しみ、もどかしさを感じ、それを攻撃行動で表現してしまうことがあります。

2. 自己主張の表れ

  • 自我の芽生え:「これは私のもの!」「私がやりたい!」という自己主張が強くなる時期に、自分の思いを通すために手が出てしまうことがあります。
  • 試し行動:「これをしたら、どうなるんだろう?」という好奇心から、親や周りの反応を試すために攻撃行動をすることがあります。

3. ストレスや不安

  • 環境の変化:新しい保育園や幼稚園、きょうだいの誕生など、環境の変化にストレスを感じ、攻撃行動として現れることがあります。
  • 愛情不足や寂しさ:親の関心が自分に向いていないと感じた時、注目を集めるために攻撃行動をすることがあります。

【年齢別】子どもの攻撃行動の特徴と親の対応術

子どもの攻撃行動は、年齢によってその特徴と対応が異なります。

【乳幼児期(0〜3歳)】「噛む」「叩く」が中心

  • 特徴:言葉が未熟なため、手や口が出てしまうことが多いです。相手を傷つける意図はほとんどありません。
  • 親の対応
    • すぐに止める:「ダメ!」と短く、毅然とした態度で止めましょう。同時に、子どもの手や口を優しく押さえるなど、物理的に行動を止めます。
    • 気持ちを代弁する:「〇〇したかったんだね」「嫌だったんだね」と、子どもの気持ちを言葉にして代弁してあげましょう。
    • 代替行動を提示する:「噛みたい時は、これを噛んでいいよ(噛むおもちゃなど)」「叩きたい時は、クッションを叩いていいよ」など、安全な代替行動を教えてあげましょう。

【幼児期(3〜6歳)】言葉でのやり取りが増える

  • 特徴:言葉の発達とともに、言葉でのやり取りが増えますが、まだ感情のコントロールが難しい時期です。友達とのトラブルが増えることもあります。
  • 親の対応
    • クールダウン:興奮している時は、一度その場から離れ、クールダウンさせましょう。「落ち着いてから話そうね」と伝え、静かな場所で気持ちを落ち着かせます。
    • 「どうしたの?」と聞く:落ち着いてから、何があったのか、子どもの話に耳を傾けましょう。相手の気持ちも想像できるように促します。
    • ルールを教える:「お友達を叩くのはいけないことだよ」「嫌な時は言葉で伝えようね」と、具体的なルールを繰り返し伝えましょう。

【学童期(小学生以上)】背景に複雑な心理が隠れることも

  • 特徴:言葉で表現できるようになるため、攻撃行動は減りますが、ストレスや人間関係の悩みなど、より複雑な心理が背景にあることがあります。
  • 親の対応
    • じっくり話を聞く:子どもの話を遮らず、最後までじっくり聞きましょう。共感的な態度で接し、安心できる雰囲気を作ります。
    • 問題解決をサポート:子ども自身が問題解決できるよう、一緒に考え、サポートしましょう。必要であれば、学校の先生やスクールカウンセラーと連携します。
    • 親自身のセルフケア:子どもの攻撃行動に悩む親は、ストレスを抱えがちです。一人で抱え込まず、パートナーや信頼できる人に相談し、自分の心も大切にしましょう。

【皐月のひとこと】
我が家の次女は、小さい頃、よくお友達を噛んでしまうことがありました。その度に、私は「どうして噛んじゃうの!?」と感情的に叱ってしまい、後で自己嫌悪に陥っていました。でも、ある時、冷静に観察してみると、言葉でうまく伝えられないもどかしさから、手が出てしまっていることに気づきました。それからは、噛んでしまった時に「嫌だったんだね」と気持ちを代弁し、「噛む代わりに、こう言ってみようね」と、言葉で伝える練習を繰り返しました。すると、少しずつですが、噛む回数が減っていったんです。親の冷静な対応と、根気強い関わりが大切だと実感しました。

まとめ:攻撃行動は、子どもの「成長のサイン」

子どもの「噛む」「叩く」といった攻撃行動は、親にとって悩ましい問題ですが、それは子どもが成長する上で通る道であり、「SOS」のサインでもあります。

親がそのサインに気づき、感情的に叱らずに、子どもの心に寄り添い、適切な対応をすることで、子どもは自分の気持ちをコントロールする力や、コミュニケーション能力を育むことができます。

この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、お子さんの未来を明るく照らすヒントになれば嬉しいです。