「イヤーーーーッ!!」
スーパーの床に寝転がって、エビ反りになって泣き叫ぶ我が子。周りからの「あらあら…」という視線が、冷たい針のように突き刺さる。
「ごはん、イヤ!」「お着替え、イヤ!」「お風呂、イヤ!」
何を言っても「イヤ!」の嵐で、可愛い我が子が、まるで小さな怪獣に見えてしまう…。
「私の育て方が、いけないの…?」
「この地獄は、一体いつまで続くの…?」
夜、子どもの寝顔を見ながら、一人で涙を流していませんか?
こんにちは!3人の娘たち全員の、それはそれは壮絶なイヤイヤ期を、なんとか乗り越えてきた現役看護師の皐月です。
まず、これだけは断言させてください。イヤイヤ期は、あなたの育て方のせいでは、絶対に、絶対にありません。それは、子どもが「自分」という存在に目覚め、自立へと向かうロケットを、必死に飛ばそうとしている成長の証なのです。
そうは言っても、綺麗事だけでは乗り切れないのが現実ですよね。そこでこの記事では、親のイライラをスーッと軽くする考え方のコツと、具体的なシーン別の「魔法の言葉かけ」を、私の実体験と看護師としての知識を総動員して、あなたにお届けします。
この記事でわかること
- なぜ?イヤイヤ期の「本当の理由」を知って、ママの心を軽くする方法
- イライラが半減する!ママナースが実践した3つの思考転換術
- 【シーン別】困った「イヤ!」が「うん!」に変わる魔法の言葉かけ辞典
- イヤイヤ期の先に待っている、感動の成長とは
なぜ?イヤイヤ期の正体は「心の叫び」です
まず、敵の正体を知れば、少しだけ冷静になれます。子どもの「イヤ!」は、単なるワガママではありません。そこには、切実な3つの理由が隠されています。
- 「自分」の芽生え:「ママの言う通りじゃない!これは私がやりたいの!」という自我が芽生え、親の指示を拒否することで「自分」という存在を確かめています。
- やりたい vs できないの葛藤:「自分で靴を履きたい!」でも、手先がまだうまく使えない。そのもどかしさや悔しさが、「イヤ!」という癇癪になって爆発しているんです。
- 言葉にできない気持ち:「眠い」「お腹がすいた」「もっと遊びたい」。そんな自分の気持ちを、まだうまく言葉で表現できません。そのあらゆる不快感が、便利な「イヤ!」という一言に集約されています。
そう、子どもの「イヤ!」は、あなたを困らせるための言葉ではなく、「僕はここにいるよ!僕の気持ちを分かって!」という、必死の心の叫びなのです。
イライラが半減する!ママナース流・3つの思考転換術
子どもの気持ちは分かっても、こっちの身が持たない!…当然です。そこで、親の心をふっと軽くするための、思考の転換術を3つ、ご紹介します。
① 子どもの「イヤ!」を翻訳してみる
子どもが「イヤ!」と言った時、その言葉をそのまま受け止めず、「本当は何て言いたいのかな?」と、心の中で翻訳機にかけてみましょう。
- 「ごはん、イヤ!」 → (翻訳)「今は遊びに夢中なの!中断されたくない!」
- 「お風呂、イヤ!」 → (翻訳)「眠くて、もうヘトヘトだよ…」
こう考えるだけで、「またワガママを!」という怒りが、「そっか、遊びたかったんだね」という共感に変わりやすくなります。
② 「命令」を「質問」に変えて、本人に選ばせる
イヤイヤ期の子どもは、「自分で決めたい」欲求の塊。「〇〇しなさい!」という命令は、火に油を注ぐだけです。
-
(✕)「青い服を着なさい!」
-
(〇)「今日は、青いお洋服と赤いお洋服、どっちの気分?」
-
(✕)「早くお片付けして!」
-
(〇)「アンパンマンとバイキンマン、どっちからお家に帰してあげようか?」
「自分で選べた」という自己決定感が、子どもの心を満足させ、次の行動へスムーズに移るための鍵になります。
③ 時には「真正面から戦わない」という賢さも
すべてに100%丁寧に対応しようとすると、心が疲弊してしまいます。危険がない限りは、「今はそういう時期」と割り切って、ユーモアで返したり、全く違う話題で気をそらしたりするのも、立派なスキルです。
- 子:「イヤ!」
- 親:「えー、イヤイヤ星人が出たー!ママ、食べられちゃうー!助けてー!」(と、ふざけてみる)
- 親:「あ、見て!ワンワンがいるよ!」(と、気をそらす)
ママの心の健康を守ることが、結果的に子どもへの優しい関わりに繋がります。時には上手にスルーしましょう。
【シーン別】困った「イヤ!」が「うん!」に変わる魔法の言葉かけ辞典
ここからは、我が家で効果絶大だった言葉かけをご紹介します。ポイントは、子どもの気持ちを一度受け止めてから、別の提案をすることです。
SCENE 1:ごはん・食事
- イヤ!:「ごはん、いらない!」
- 魔法の言葉:「そっか、今は気分じゃないんだね。じゃあ、このお野菜さんだけ、ウサギさんみたいにもぐもぐできるかな?」
(なぜ効くの?:「全部食べる」という高いハードルを、「これだけなら」と低くしてあげることで、挑戦しやすくなります。)
SCENE 2:着替え
- イヤ!:「この服、着たくない!」
- 魔法の言葉:「分かった!じゃあ、ママとどっちが早くお着替えできるか競争だ!よーい、ドン!」
(なぜ効くの?:「やらされること」を「楽しいゲーム」に変換することで、子どものやる気スイッチを入れます。)
SCENE 3:歯磨き
- イヤ!:「歯磨き、しない!」
- 魔法の言葉:「歯のバイキンマン、ママがやっつけるから応援してて!エイエイオー!」
(なぜ効くの?:子どもはヒーローが大好き。「歯磨き=悪者をやっつける」というストーリーで、気分を盛り上げます。)
SCENE 4:お風呂
- イヤ!:「お風呂、入らない!」
- 魔法の言葉:「お風呂にアヒルさん浮かべて競争させようよ!どっちが勝つかな?ママ、負けないぞー!」
(なぜ効くの?:お風呂そのものではなく、「お風呂でできる楽しいこと」に意識を向けさせます。)
SCENE 5:お片付け
- イヤ!:「お片付け、できない!」
- 魔法の言葉:「じゃあ、ママが赤いブロックを集めるから、〇〇ちゃんは青いのをお願いできるかな?一緒にやろう!」
(なぜ効くの?:「一人で全部」ではなく、「一緒に」「少しだけ」と役割分担することで、参加しやすくなります。)
SCENE 6:お出かけ・帰宅
- イヤ!:「公園から帰りたくない!」
- 魔法の言葉:「そうだよね、もっと遊びたいよね。ママもだよ。じゃあ、あの滑り台をあと3回滑ったら、お家に帰って、美味しいおやつを食べようか」
(なぜ効くの?:気持ちに共感した上で、「終わりの見通し」と「次の楽しみ」を具体的に示すことで、子どもは納得しやすくなります。)
まとめ:嵐の先には、必ず「成長」という虹がかかる
イヤイヤ期の対応に、100点満点の正解はありません。今日うまくいった方法が、明日には全く通用しないことの連続です。
でも、どうか自分を責めないでください。
あなたが子どもの「イヤ!」と真剣に向き合い、悩み、この記事を読んでくださっていること自体が、何より素晴らしい愛情の証です。
「イヤ!」は、子どもがあなたに寄せる「絶対的な信頼」の裏返し。「このママなら、僕の気持ちを受け止めてくれるはずだ」と信じているからこそ、安心して感情を爆発させられるのです。
嵐のような毎日は、必ず終わりが来ます。そして、その先には、言葉で自分の気持ちを伝えられるようになった、一回りも二回りも大きく成長した、愛しい我が子の姿が待っていますよ。一緒に、この嵐を乗り越えていきましょうね。
