スマホ片手に「うんうん」。その返事、子どもの心を傷つけてるかも

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「ママ、あのね…」その時、あなたの視線はどこにありますか?

夕飯の準備で、コンロの前に立っている時。
スマホで、仕事相手からの急なメールに返信している時。
ちょっと一息ついて、SNSを眺めている時。

「ママ、あのね、今日ね、学校でね…!」

キラキラした目で、今日あった出来事を一生懸命に伝えようとしてくれる、我が子。

「うん、うん、それで?」
「へぇー、そうなんだ」

口ではそう返事をしながらも、私の視線は、スマホの画面や、鍋の中身に釘付け…。

ある日、ふと顔を上げると、私の生返事を聞きながら、だんだんと表情が曇り、話すのをやめてどこかへ行ってしまう長女の姿がありました。

その寂しそうな後ろ姿に、私は、心臓を鷲掴みにされるような衝撃を受けました。

「あ…私、今、この子の何を傷つけてしまったんだろう…」

忙しい毎日の中で、私たち親が、つい、やってしまいがちな「ながら聞き」。
今日は、この「ながら聞き」が、子どもの心にどれだけ深い影を落とすのか、そして、後で後悔しないために、私がハッとして実践するようになった「聞く姿勢」について、お話しさせてください。

子どもは「話の内容」よりも「ママの態度」を見ている

私たち親は、子どもの話を「情報」として聞こうとしてしまいます。
でも、子どもが「ママ、あのね」と話しかけてくるとき、それは単なる「報告」ではありません。

「僕のことを見て!」
「私のこの気持ちに、気づいて!」
「すごいって、褒めて!」

その言葉の裏には、ママの関心を自分に向けたい、自分の存在を認めてほしいという、切実な承認欲求が隠されています。

それなのに、私たちがスマホやテレビに視線を向けたまま、上の空で返事をしてしまうと、子どもは、言葉にしなくても、敏感にこう感じ取ってしまいます。

「僕(私)の話は、ママにとって、スマホよりも価値がないんだ…」

この小さな、でも確実な絶望感の積み重ねが、子どもの自己肯定感を、静かに、でも確実に、削り取っていってしまうのです。

「ながら聞き」が子どもに与える、3つの深刻な影響

「ながら聞き」が習慣化すると、子どもの心に、大きく3つの影響を与える可能性があります。

1. 自己肯定感の低下

「どうせ、僕の話なんて、誰もちゃんと聞いてくれない」
そう感じた子どもは、自分に自信が持てなくなり、自分の意見を言ったり、人前で発表したりすることが苦手になってしまうことがあります。

2. コミュニケーション能力の欠如

親が「ながら聞き」をしていると、子どもは、人の話を真剣に聞くという、コミュニケーションの最も基本的な姿勢を学ぶ機会を失ってしまいます。その結果、将来、友達との関係をうまく築けなくなる可能性も。

3. 親への不信感、そして心のシャッター

これが、最も悲しい影響です。
「ママはどうせ、ちゃんと聞いてくれない」
そう感じた子どもは、やがて、本当に困ったことや、悩んでいること、助けてほしいことを、親に話してくれなくなります。
子どもの心のシャッターが、固く閉ざされてしまうのです。

私がハッとして実践する「聞く姿勢」3つの鉄則

長女の後ろ姿に深く反省した私が、どんなに忙しくても、これだけは守ろうと心に決めた「聞く姿勢」の3つの鉄則があります。

鉄則①:まず、全てを「止める」勇気を持つ

子どもに「ママ、あのね」と話しかけられたら、まず、今やっていることを、一度、全部止めます。

スマホを置き、火を弱め、パソコンの手を止める。
そして、体を子どもに向け、視線を合わせ、「どうしたの?」と、心からの関心を向ける。

たったこれだけです。
「あなたの話は、ママにとって、今やっているどんなことよりも大事だよ」
この無言のメッセージが、子どもの心を、何よりも満たします。

鉄則②:できない時は、誠実に「聞く予約」をする

とはいえ、どうしても手が離せない時もありますよね。
火を使っている時や、オンライン会議中など。

そんな時は、正直に、そして具体的に伝えます。

「ごめん!今、ママ、火を使ってるから、お返事すると危ないんだ。このお肉を焼き終わるまで、あと3分だけ待ってくれるかな?終わったら、ママからすぐ聞きに行くね!」

ポイントは、「なぜ今聞けないのか」という理由と、「いつなら聞けるのか」という具体的な見通しを伝えること。そして、必ず、その約束を守ること。
「後でね」と曖昧に先延ばしにするのは、NGです。

鉄則③:「要約」と「共感」で、理解したことを示す

ただ「うん、うん」と聞くだけでなく、「あなたの話を、ちゃんと理解したよ」というメッセージを、言葉で返してあげましょう。

「〇〇くんに、そんなこと言われたんだね。それは、すっごく悲しかったね」
「逆上がりができたんだ!すごい!毎日練習してたもんね。嬉しかったでしょう!」

このように、子どもの話を**「要約」し、その裏にある「感情」に共感**してあげることで、子どもは「ママは、私の気持ちをわかってくれた!」と、深く満たされるのです。

「ママ、あのね」の賞味期限は、あなたが思うより、ずっと短い

子どもが「ママ、あのね」と、無邪気に話しかけてくれる時間。
それは、永遠には続きません。

思春期になれば、パタリと話してくれなくなる日が、必ずやってきます。

忙しい毎日の中で、ほんの数分、いえ、数十秒でもいい。
手を止め、子どもの目を見て、心で話を聞く。

その小さな時間の積み重ねこそが、親子の揺るぎない信頼関係を築き、子どもの健やかな心を育む、何よりの「投資」になるのだと、私は信じています。

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