「男の子だから泣かないの」は心を壊す呪文。感情を素直に出せる子に育つ親の声かけ

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「男の子でしょ、泣かないの!」…その言葉、善意という名の“呪い”です

公園で転んで、膝をすりむいて、わーんと泣き出した男の子。
駆け寄ってきたママが、優しいながらも、少しだけ強い口調でこう言いました。

「こら、〇〇!男の子でしょ、泣かないの!」

きっと、あなたも一度は聞いたり、あるいは、ご自身が口にしたりしたことがあるのではないでしょうか。
「男の子には、強くあってほしい」
その、親としての切なる願いが、その言葉には込められています。

でも、3姉妹の母であり、ナースとして多くの人の心と体に向き合ってきた私には、その言葉が、子どもの心を縛り付け、健やかな成長を歪めてしまう、強力な**「呪いの言葉」**に聞こえてしまうのです。

「男の子だから」という呪いが、心を静かに蝕んでいく

「男の子は、強くあるべきだ」
「涙は、弱さの証だ」
「メソメソするなんて、男らしくない」

私たち大人の中に、無意識に刷り込まれている、こうした「男らしさ」という名のジェンダーバイアス。
そのバイアスから生まれる「男の子なんだから泣かないの」という言葉は、子どもに、こう学習させてしまいます。

「泣きたい、という気持ちは、ダメな気持ちなんだ」
「悲しい、怖い、悔しい、と感じるのは、悪いことなんだ」

そうやって、子どもは、自分の中に自然に湧き上がってくる、素直な感情に、必死に蓋をするようになります。
泣きたい気持ちを、無理やり笑顔で隠したり、平気なフリをしたり…。

でも、行き場を失った感情は、決して消えてなくなるわけではありません。
心の中に溜め込まれたストレスは、ある日突然、原因不明の体調不良として体に現れたり、乱暴な行動や、無気力といった、別の形で現れたりすることがあるのです。

本当の「強さ」とは、感情を“感じない”ことじゃない

そもそも、本当の「強さ」とは、一体何でしょうか。
それは、痛みや悲しみを感じない「鋼の心」を持つことではありません。

むしろ逆です。

自分の中に湧き上がる、怒り、悲しみ、喜び、悔しさといった、様々な感情を、
「ああ、今、自分は、こう感じているんだな」
と、きちんと認識し、受け止めることができる。

そして、その感情に飲み込まれることなく、どう表現し、どう付き合っていくかを、自分でコントロールできること。

この「感情的知性(EQ)」こそが、変化の激しい社会を、しなやかに、たくましく生き抜くための、本当の強さの源泉となるのです。

ナースの私が実践する!感情豊かな子に育つ「魔法の声かけ」

では、男の子も女の子も関係なく、一人の人間として、感情豊かな、本当に強い心を育てるために、親として何ができるのでしょうか。

① 感情を「実況中継」して、名前をつけてあげる

子どもは、自分の中に渦巻くモヤモヤした気持ちが、何なのか、まだよくわかっていません。
そんな時、親がその気持ちを「実況中継」してあげましょう。

「おもちゃ、取られちゃったんだね。それは、悔しいよね」
「注射、怖かったね。よく頑張ったね」
「わー、一番になれて、嬉しいね!」

親が気持ちを代弁し、「感情に名前をつけてあげる」ことで、子どもは、「そっか、このモヤモヤは、悔しい、っていう気持ちなんだ」と、自分の感情を客観的に理解できるようになっていきます。

② どんな感情も、まずは「そのまんま」受け止める

たとえ、それがネガティブに見える感情でも、決して否定してはいけません。

「泣きたい時だって、あるよね」
「そんなの、怒って当たり前だよ。ママだって、そんなことされたら怒るもん」

と、まずは、その感情の存在そのものを、100%肯定してあげましょう。
「泣いてもいいんだ」「怒ってもいいんだ」という安心感が、子どもの感情の土台を、安定させてくれます。

③ 「どうしたい?」と、次への一歩を一緒に考える

感情を十分に受け止めてあげたら、次のステップです。

「そっか、悔しかったんだね。じゃあ、どうしたら、その悔しい気持ち、少しスッキリするかな?」
「ママに、どうしてほしい?」

と、子ども自身が、自分の気持ちをどう処理したいのか、考えるきっかけを与えてあげます。
親が「こうしなさい!」と指示するのではなく、子どもが自分で解決策を見つけるのを、サポートするのです。

「男の子だから」の前に、「あなただから」

男の子も、女の子も、その前に、たった一人の、かけがえのない「あなた」です。
嬉しい時には笑い、悲しい時には泣き、悔しい時には、声を上げて怒る。
それは、人間として、あまりにも自然で、尊い感情の働きです。

親の役目は、性別という、窮屈な鎧で、その自然な感情に蓋をさせることではありません。

どんな感情も、安心して表現できる「安全基地」となり、
その感情に、優しく寄り添い、名前をつけ、
そして、その感情という名の馬を、上手に乗りこなす方法を、一緒に学んであげること。

それこそが、本当に強く、そして、人の痛みがわかる、優しい心を育む、唯一の道なのだと、私は信じています。

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