ある日の夜勤中、救急車で運ばれてきた、一人のママ。意識は朦朧とし、付き添ってきたパパは、ただただ動揺するばかり。「お子さんのアレルギーは?」「かかりつけの病院はどこですか?」私たちの問いかけに、彼は首を横に振ることしかできませんでした。
こんにちは!3人の娘を育てながら、看護師として働く皐月です。
「もしも、私が入院したら…」
「私が倒れたら、この子たちのことは誰が?」
持病がある方はもちろん、元気なママだって、交通事故や急な病気など、「もしも」は誰にでも起こり得ます。その時、一番心配なのは、何よりも子どものことですよね。
残されたパパや祖父母が、子どもの日常をスムーズに回せるだろうか。そして何より、ママと離れて不安な子どもの心を、どう守ってあげられるだろうか。
この不安の正体は、「何が分からないか、分からないこと」。そこで私は、看護師の知識を総動員し、もしもの時に必要な情報をすべて書き出した**「おうち引継ぎノート」**を作ることにしました。漠然とした不安を「見える化」することで、驚くほど心が軽くなり、「これさえあれば、大丈夫」というお守りになったのです。
この記事では、すべてのママに作っておいてほしい、この「おうち引継ぎノート」の作り方を、具体的にお伝えします。
この記事でわかること
- なぜ「引継ぎノート」が、ママと家族の心を救うのか
- 命に関わる最重要情報「赤のファイル」の中身
- 日常を守るための「黄色のファイル」の中身
- 子どもの心をケアする「ピンクのファイル」の中身
命と日常を守る「おうち引継ぎノート」を作ろう
すぐに取りかかれるよう、3色のクリアファイルを用意して、3つのカテゴリーに分けて作るのがおすすめです。
【赤のファイル】命と健康を守る最重要情報
これは、何よりも先に、誰が見ても分かる場所に保管すべき「命のファイル」です。
- ✅ 緊急連絡先リスト
- かかりつけ小児科(病院名、電話番号、診察時間)
- 夜間・休日救急相談窓口(#8000など)
- 保育園・幼稚園・学校の連絡先
- 信頼できるママ友や近所の方の連絡先
- ✅ 子どもの医療情報
- 健康保険証、医療証、母子手帳の保管場所
- アレルギーの有無(食べ物、薬)と、症状が出た時の具体的な対処法
- 持病や定期的に飲んでいる薬の情報(薬の名前、飲む量、タイミング、保管場所)
- 平熱、体質(熱が出やすい、鼻血が出やすい等)
- ✅ あなた自身の医療情報
- あなたのかかりつけ医、持病、内服中の薬の情報
- 緊急時に連絡してほしい人の名前と連絡先
【黄色のファイル】子どもの日常を守る情報
世話をしてくれる人が「あれどこ?」「いつもどうしてる?」と困らないための、日常のルールブックです。
- ✅ 1日のタイムスケジュール
- 起床時間、食事の時間、お昼寝の時間、就寝時間など、普段の生活リズムが分かると、子どもは安心して過ごせます。
- ✅ 食事について
- 好きな食べ物、嫌いな食べ物
- 食事の時のこだわり(「ふりかけは自分でかけたい」など)
- ✅ 遊び・寝かしつけのこだわり
- 好きなテレビ番組、キャラクター、絵本
- 寝る時の癖(「このタオルがないと眠れない」など)、寝かしつけのコツ
- ✅ 送り迎え・習い事情報
- 保育園の送迎ルート、習い事の曜日や時間、持ち物など
《皐月のワンポイント・アドバイス》
「パパでも分かるように」が鉄則です!「アレどこ?」で通じないパパのために、「保湿剤は、洗面所の棚の上から2段目、青いキャップの容器」というように、具体的に書きましょう。
【ピンクのファイル】子どもの心をケアする情報
ママがいない夜は、子どもにとって想像以上に不安なもの。そんな子どもの心を少しでも和らげるための、愛情のこもった準備です。
- ✅ ママからの手紙やビデオメッセージ
「大好きだよ」「すぐに帰ってくるからね」という短いメッセージがあるだけで、子どもは絶大な安心感を得られます。スマホにビデオを撮っておくだけでもOK。 - ✅ パパ(預ける人)への「大好きリスト」
- 子どもが言われて嬉しい言葉(「かっこいいね」「すごいね」など)
- くすぐると喜ぶ場所、好きな遊び
- 泣き止むきっかけになる歌や言葉
- ✅ 子どもへの伝え方メモ
「ママは、お腹の虫さんをやっつけに、病院というところに行くんだよ。お医者さんと一緒に戦って、強くなって帰ってくるからね」など、子どもが不安にならないような伝え方を、事前に考えてメモしておきましょう。
まとめ:不安を「備え」に変える、ほんの少しの行動力
このリストを見て、「準備することがたくさん…」と感じたかもしれません。でも、完璧を目指さなくて大丈夫。まずは、一番大切な「赤のファイル」から、一つずつ手をつけてみてください。
この「おうち引継ぎノート」を作るという行為そのものが、あなた自身の心を整理し、漠然とした不安を具体的な「備え」へと変えてくれます。
それは、万が一の時に、残された家族と、そして何より愛する我が子を守るための、母親にしかできない、最高の愛情表現だと私は思います。
この記事が、あなたの不安を少しでも軽くし、「よし、やってみよう!」と一歩踏み出すきっかけになれたら、心から嬉しく思います。
