看病

子どもの発熱、どうする?:慌てないための受診目安とホームケア

子どもの急な発熱!その時、あなたはどうしますか?

子どもの体温計が38℃を超えると、親としては一気に不安になりますよね。「すぐに病院へ行くべき?」「家でできることは何?」「解熱剤は使っていいの?」など、次から次へと疑問が浮かんでくるものです。

特に、夜間や休日に突然発熱すると、どう対応すれば良いか分からず、パニックになってしまうこともあるでしょう。しかし、慌てて行動する前に、まずは子どもの状態を冷静に観察することが大切です。

この記事では、看護師であり、二児の母でもある私が、子どもの発熱時に慌てないための「受診の目安」と、お家でできる「正しいホームケア」について、分かりやすく解説します。

熱の高さだけで判断しないで!本当に見るべきは「子どもの機嫌と全身状態」

熱が39℃、40℃と高くても、子どもが比較的元気に遊び、水分も取れているようなら、緊急性は低いことが多いです。逆に、熱はそれほど高くなくても、ぐったりして元気がない、顔色が悪い、水分を全く受け付けないといった場合は、注意が必要です。

すぐに受診すべき危険なサイン

以下の症状が見られる場合は、夜間や休日であっても、すぐに医療機関を受診してください。

  • 意識がおかしい(呼びかけに反応が鈍い、ぐったりしている)
  • けいれんを起こした(特に初めての場合)
  • 呼吸が苦しそう(肩で息をしている、顔色が悪い)
  • 水分が全く取れず、半日以上おしっこが出ていない
  • 嘔吐を繰り返し、ぐったりしている
  • 生後3ヶ月未満の赤ちゃんの38℃以上の発熱

診療時間内に受診を検討するケース

  • 熱が2〜3日以上続いている
  • 機嫌が悪く、ぐずり続ける
  • 咳や鼻水、下痢など、他の症状も伴う
  • 耳を頻繁に気にする(中耳炎の可能性)

ママナース直伝!発熱時のホームケア3つのポイント

1. 水分補給が最優先!

発熱時は、汗や呼吸によって体から水分が失われやすくなっています。脱水を防ぐために、こまめな水分補給を心がけましょう。麦茶、湯冷まし、子ども用のイオン飲料などを、少量ずつ頻繁に与えるのがポイントです。

2. 楽な体勢で、しっかり休ませる

無理に寝かせつける必要はありませんが、静かな環境でゆっくり休ませてあげましょう。衣類は、汗を吸いやすい綿素材のものを1枚薄めに着せ、汗をかいたらこまめに着替えさせてください。寒気がある場合は、布団を1枚足して温かくしてあげましょう。

3. 食事は無理強いしない

熱がある時は、食欲が落ちるのが普通です。無理に食べさせる必要はありません。子どもが食べたがるものを、消化の良いもの(おかゆ、うどん、ゼリー、果物など)を中心に与えましょう。

解熱剤、使う?使わない?

解熱剤は、病気を治す薬ではなく、一時的に熱を下げて体を楽にするためのものです。熱が高くても、子どもが元気そうであれば、必ずしも使う必要はありません。

使用を検討する目安は、38.5℃以上で、かつ**子どもが熱のせいでつらそうにしている(ぐったりしている、眠れないなど)**場合です。使用する際は、必ず子ども用の解熱剤を、用法・用量を守って使いましょう。

まとめ|正しい知識が、あなたと子どもを救う

子どもの発熱は、親にとって心配なものですが、正しい知識があれば、慌てず冷静に対応することができます。今回ご紹介した「受診の目安」と「ホームケア」を参考に、お子さんの看病にあたってください。

そして、何よりも大切なのは、看病するママやパパ自身が倒れないこと。一人で抱え込まず、パートナーや周りのサポートも得ながら、乗り切っていきましょう。

【疑問解消編】解熱剤を使っても熱が下がらない!そんな時の原因と対処法

はじめに:その「困った!」、みんな経験しています

前回の「基本編」では、子どもの解熱剤を使う上での基本的な考え方や、種類、使うタイミングについてお話しました。

▼前回の記事はこちら
【基本編】子どもの熱、何度から座薬を使う?種類、間隔、タイミングの全て

マニュアル通りに使ってみた。でも、いざ実践してみると、「あれ?なんだかうまくいかない…」ということ、ありますよね。

「解熱剤を使ったのに、30分経っても1時間経っても、一向に熱が下がらない…」
「座薬を入れた瞬間に、うんちと一緒に出てきちゃった!これって、どうすればいいの?」

こんな“あるある”なトラブルに直面した時、親としては「薬が効かないほど、重症なんじゃ…」と、不安が倍増してしまうものです。

こんにちは!3姉妹の母で、現役看護師の皐月です。

大丈夫。その「困った!」、あなただけが経験しているわけではありません。小児科の現場でも、親御さんから本当によく受ける質問ばかりです。

この記事では、「疑問解消編」として、解熱剤を使う上でよくあるトラブルや疑問について、Q&A形式で分かりやすくお答えしていきます。この記事を読めば、予期せぬ事態にも、もう慌てず冷静に対処できるようになりますよ。


解熱剤の“あるある”Q&A:こんな時、どうする?

Q1. 解熱剤を使ったのに、熱が全然下がりません。どうして?

A1. まずは、落ち着いて。薬が効いていないわけではないかもしれません。

解熱剤の目的は、熱を平熱まで下げることではありません。つらい症状を和らげるために、高すぎる熱を1℃〜1.5℃ほど下げてあげるのが、薬の役割です。

例えば、39.5℃あった熱が、薬を使った後に38.5℃になったとしたら、それは薬が十分に効いている証拠です。「まだ熱が高いじゃない!」と焦る必要はありません。少しでも熱が下がり、お子さんの表情が和らいだり、水分が摂れたりするようであれば、それでOKなのです。

また、熱の勢いが非常に強い時(ウイルスが体内で大暴れしている時など)は、薬の力よりも、熱を上げようとする体の働きが勝ってしまい、なかなか熱が下がらないこともあります。そんな時は、薬だけに頼らず、**クーリング(体を冷やすこと)**を併用してみましょう。

【クーリングのポイント】
首の付け根、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている場所を、保冷剤をタオルでくるんだものや、濡れタオルで冷やしてあげると効果的です。ただし、子どもが嫌がる場合は、無理強いしないでくださいね。

Q2. 座薬を入れたら、すぐウンチと一緒に出てしまいました!

A2. 出てしまった時間によって、対応が異なります。

これは、本当によくあるトラブルです。焦らず、何分くらいで出てしまったかを確認しましょう。

  • 入れてから10分以内に出てしまった場合:
    • 薬がほとんど吸収されていない可能性が高いです。もう一度、同じ量の座薬を入れ直してOKです。
  • 入れてから30分以上経ってから出てしまった場合:
    • 薬の大部分は、すでに体内に吸収されています。追加で使うと、薬の量が多すぎてしまう危険があるので、次に追加で使える時間(通常は6〜8時間後)まで、様子を見てください。
  • 10分〜30分の間で、微妙な時間の場合:
    • 判断に迷いますよね。ウンチの中に、溶け残った座薬が形として見えているかどうかも、一つの判断材料になります。もし、形がそのまま残っているようなら、もう一度使っても良いかもしれません。しかし、一番安全なのは、次の時間まで待つか、かかりつけの病院や、**小児救急電話相談(#8000)**に電話して、指示を仰ぐことです。

Q3. 飲み薬を飲ませたら、吐いてしまいました…。

A3. これも、吐いてしまった時間で判断します。

  • 飲んでから10分以内に吐いてしまった場合:
    • ほとんど吸収されていないので、もう一度、同じ量を飲ませてあげて大丈夫です。ただし、吐き気が続いている時に無理に飲ませても、また吐いてしまう可能性があります。少し時間をおいて、落ち着いてから再チャレンジしましょう。
  • 飲んでから30分以上経ってから吐いてしまった場合:
    • すでに吸収されていると考えて、追加では飲ませないでください。

吐き気が強い時は、無理に飲み薬を使おうとせず、座薬に切り替えるのが賢明です。

Q4. 熱が下がって元気になったので、保育園に行かせてもいい?

A4. いいえ、絶対にいけません!

解熱剤で一時的に熱が下がっても、病気が治ったわけではありません。体の中では、まだウイルスや細菌が残っています。この状態で集団生活に戻ると、他の子に病気をうつしてしまうだけでなく、お子さん自身の体力も落ちているため、別の病気をもらってきたり、症状がぶり返したりする原因になります。

保育園や学校の出席停止期間の基準は、病気の種類によって異なりますが、一般的な風邪であっても、解熱剤を使わずに平熱で24時間以上過ごせ、かつ、咳や鼻水などの症状が落ち着いて、食欲や元気が普段通りに戻っていることが、登園・登校を再開する一つの目安です。必ず、園や学校のルールを確認してくださいね。


まとめ:トラブルはつきもの。冷静な判断が、ママを強くする

子どもの看病に、マニュアル通りにいかないトラブルはつきものです。でも、一つ一つのトラブルに冷静に対処していく経験が、親としての自信と、的確な判断力を育ててくれます。

今回ご紹介したQ&Aが、あなたの「どうしよう…」を、「こうすれば大丈夫!」という自信に変える、手助けになれば嬉しいです。

さて、次回の記事では、このシリーズの最終回として、少し怖いけれど、知っておくべき「熱性けいれん」について、万が一の時にパニックにならないための正しい知識と対応をお伝えします。

【ホームケア編】咳で眠れない夜に。少しでも楽にするための家庭での対処法

はじめに:長い夜を、親子で乗り切るために

前回の「見分け方編」では、子どもの咳の音から、その裏に隠れた病気のサインを読み解く方法についてお話ししました。

▼前回の記事はこちら
【見分け方編】その咳、大丈夫?風邪、クループ、気管支炎…音で聞き分ける危険なサイン

幸い、緊急性の高い危険な咳ではなさそう。でも、コンコン、ゴホゴホ…と続く咳で、お子さんがなかなか寝付けなかったり、夜中に何度も起きてしまったりするのは、見ている親も本当につらいものですよね。

「このまま朝まで、咳がやまなかったらどうしよう…」
「何か、少しでも楽にしてあげられることはないの?」

そんな風に、無力感を感じてしまう夜もあるかもしれません。

こんにちは!現役看護師で、3姉妹の母でもある皐月です。

薬に頼るだけでなく、家庭でできるちょっとした工夫で、子どもの咳は、思った以上に和らぐことがあります。それは、ただ症状を緩和するだけでなく、「ママが自分のために、何かをしてくれている」という安心感を子どもに与える、何よりの“心の処方箋”にもなります。

この記事では、「ホームケア編」として、咳でつらそうなお子さんを、お家で少しでも楽にしてあげるための具体的なケア方法を、ママナースの視点からご紹介します。特別な道具がなくても、今日からすぐに実践できることばかりですよ。


咳を和らげるホームケア4つの基本

家庭での咳ケアの基本は、**「加湿」「水分補給」「安静」「換気」**です。この4つを意識するだけで、子どもの体はぐっと楽になります。

①【加湿】喉の乾燥は、咳の大敵!

乾燥した空気は、喉の粘膜を刺激し、咳を悪化させる最大の原因です。特に、エアコンを使う夏や冬は、部屋の湿度が下がりがちなので注意が必要です。

  • 加湿器を使う: 最も効果的な方法です。湿度の目安は50%〜60%。加湿器がない場合は、濡れたバスタオルを部屋に干しておくだけでも効果があります。
  • お風呂の湯気を吸わせる: 咳がひどくて寝付けない夜には、お風呂場にお湯を張って湯気を充満させ、その中でしばらく抱っこして過ごすのもおすすめです。クループ症候群の「ケンケン」という咳には、特に効果的です。
  • マスクをつける: マスクの内側が自分の呼気で潤うため、喉の保湿に繋がります。ただし、乳幼児や、嫌がる子に無理強いはしないでください。

②【水分補給】痰を出しやすくする、天然の去痰薬

体内の水分が足りないと、痰がネバネバと硬くなり、気管支に張り付いて、ますます咳がひどくなる…という悪循環に陥ります。

  • 何を飲ませる?: 子どもが欲しがるものでOKです。麦茶、湯冷まし、イオン飲料、薄めたりんごジュースなど。一度にたくさん飲ませるのではなく、スプーン1杯でもいいので、こまめに与えましょう。
  • 食事からの水分も意識: 食欲があれば、スープや味噌汁、ゼリー、果物など、水分の多い食べ物を与えるのも良い方法です。

③【体勢】少しの工夫で、呼吸が楽になる

横になると、鼻水が喉に流れ込んだり、気管が圧迫されたりして、咳が出やすくなります。

  • 上半身を少し高くして寝かせる: 背中にたたんだバスタオルやクッションを入れ、頭から肩にかけて、緩やかな傾斜をつけてあげましょう。呼吸が楽になり、咳込みが減ることがあります。
  • 縦抱きで背中をトントン: 痰が絡んだ咳をしている時は、縦に抱っこして、背中を優しくタッピングしてあげると、痰が移動して楽になることがあります。手を丸めて、リズミカルに、下から上へと行いましょう。

④【換気】新鮮な空気を取り入れる

咳の原因となるウイルスやハウスダストを、部屋の外に追い出すことも大切です。寒い日でも、1〜2時間に1回、5分程度で良いので、窓を開けて空気を入れ替えましょう。その際は、お子さんが湯冷めしないように、別の部屋に移動させるなどの配慮を忘れずに。


これはNG!咳を悪化させる可能性のあるケア

良かれと思ってやったことが、逆効果になることもあります。以下の点には注意してください。

  • 市販の咳止め薬を自己判断で使う: 子どもの咳は、痰などの異物を体の外に出そうとする防御反応です。無理に咳を止めると、かえってウイルスや細菌が体内に留まり、症状を長引かせる可能性があります。特に2歳未満の子どもへの市販薬の使用は、副作用のリスクも指摘されています。必ず、医師の指示に従いましょう。
  • 柑橘系のジュース: オレンジジュースなどは、喉を刺激して咳を誘発することがあります。咳がひどい時は、避けた方が無難です。
  • はちみつ: 1歳未満の赤ちゃんには、絶対に与えないでください。「乳児ボツリヌス症」という、命に関わる病気を引き起こす危険があります。

まとめ:ママの手は、何よりの“おくすり”

加湿、水分補給、楽な姿勢…。今回ご紹介したケアは、どれもシンプルなものばかりです。でも、その一つひとつに、「早く良くなってね」というママの想いが込められています。

つらそうな子どもを前に、不安になるのは当然です。でも、そんな時こそ、ママが優しく背中をさすってくれる手、抱きしめてくれる腕が、子どもにとってはどんな薬よりも効果のある“おくすり”になるはずです。

さて、次回の記事では、このシリーズの最終回として、「受診目安編」をお届けします。家庭でのケアを続けても、どんな状態になったら病院へ行くべきか、その具体的な判断基準について、詳しく解説していきます。