「赤ちゃんが生まれたら、母乳で育てるのが夢だった」
「おっぱいを飲む我が子の顔を見るのが、幸せなひとときのはずだったのに…」
こんにちは!3人の娘を育ててきたママナースの皐月です。
産婦人科で働いていた頃、そしてもちろん、私自身の3度の育児経験を通して、母乳育児がママにとって、決して簡単な道のりではないことを痛いほど感じてきました。
「思うように母乳が出なくて、赤ちゃんに申し訳ない…」
「乳首が切れて、授乳の時間が来るのが怖い…」
そんな風に、一人で涙していませんか?
大丈夫。あなただけじゃありません。ほとんどのママが、同じような壁にぶつかっています。私も長女の時、おっぱいが岩のようにカチカチになる「乳腺炎」で高熱を出し、あまりの痛みに泣きながら授乳した経験があります。
今日は、そんな母乳育児の二大巨頭ともいえるお悩み、「出ない」「痛い」について、私の経験と看護師の知識を総動員して、Q&A形式でお答えしていきますね。
この記事でわかること
- 母乳の分泌を促すために、本当に効果があること
- 赤ちゃんがしっかり母乳を飲めているかのチェックポイント
- 授乳時の激痛をなくすための、正しい吸わせ方(ラッチオン)のコツ
- 乳首が切れてしまった時の、悪化させないセルフケア方法
【お悩み1】母乳が足りないかも…分泌不足に関するQ&A
Q1. とにかく母乳の量を増やしたい!スパルタ式に吸わせれば増えますか?
A1. 気持ちは痛いほど分かりますが、まずはママの心と体を休ませてあげて!その上で、この3つを試してみて。
母乳は、ママの血液から作られます。そして、その分泌にはホルモンが大きく関わっています。つまり、ママが心身ともに健康でリラックスしていることが、何より大切なんです。
- 赤ちゃんに吸ってもらう(頻回授乳)
これが最強の母乳産生スイッチなのは事実です。赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激で、「もっと作って!」という指令が脳に送られます。欲しがる時に欲しがるだけ、1日8〜12回を目安にあげてみましょう。 - 体を温め、水分をしっかりとる
血流が良くなると、母乳も作られやすくなります。温かい飲み物や食事を心がけ、授乳の前後にコップ1杯の水分(水、麦茶、ハーブティーなど)を飲む習慣をつけましょう。私は、保温ポットに白湯を常備していました。 - ママがしっかり食べる&寝る!
ママが食べたものが、母乳の栄養になります。特に、和食中心のバランスの良い食事を。そして何より、休息です!私が乳腺炎になった時、助産師さんに「家事なんて全部手抜きして!とにかく赤ちゃんが寝たら一緒に寝て!」と言われて、本当に心が救われました。ママの休息は、義務ですよ。
Q2. でも、本当に飲めているのか不安…。どうすれば分かりますか?
A2. 体重計の数字だけが答えじゃありません。赤ちゃんの「ご機嫌サイン」を見つけてあげて。
- おしっこの回数と色
1日に6回以上、レモン色のような薄い黄色のおしっこが出ていれば、水分は足りている証拠です。 - うんちの状態
生後1ヶ月くらいまでは、1日に何度も黄色っぽいゆるゆるのうんちが出ます。これも飲めているサイン。 - 授乳後の赤ちゃんの様子
おっぱいから口を離した後、満足そうにしていたり、すやすやと眠ってしまったり。ご機嫌な様子なら、お腹がいっぱいになった可能性が高いです。 - ママのおっぱいの状態
授乳前にカチカチに張っていたおっぱいが、授乳後にふにゃっと柔らかくなっていれば、赤ちゃんがしっかり飲んでくれた証拠です。
体重の増え方は本当に個人差が大きいもの。一喜一憂せず、心配なら1ヶ月健診などで気軽に相談してくださいね。
【お悩み2】授乳が苦痛…乳首の痛みに関するQ&A
Q3. 授乳のたびに激痛が走ります。根性で乗り切るしかない?
A3. いいえ、根性論は禁物です!痛みの9割は、赤ちゃんの吸い付き方が浅い「浅吸い」が原因です。
正しい吸い付かせ方(ラッチオン)をマスターすれば、痛みは嘘のように消えることもあります。
【ラッチオン成功の3ステップ】
- ママが楽な姿勢をとる
授乳クッションを使い、背筋を伸ばしてリラックス。赤ちゃんの体をママの体に密着させ、赤ちゃんの鼻とおへそがママの体と一直線になるように抱っこします。 - 赤ちゃんの口を「あーん」と大きく開けさせる
乳首で赤ちゃんの下唇あたりをツンツンと優しく刺激し、あくびをするように口が大きく開くのを待ちます。焦らないで! - 乳輪ごと、深く、素早く!
赤ちゃんが「あーん」と大きく口を開けた瞬間を逃さず、赤ちゃんの頭を支えて、素早く引き寄せます。この時、乳首だけを吸わせるのではなく、乳輪の下側まで深く含ませるのが最大のポイント!赤ちゃんの唇が、外側にくるんとカールした「アヒル口」になっていれば、上手に吸えているサインです。
Q4. もうすでに乳首が切れて血が…。どうすれば治りますか?
A4. 痛いですよね…本当によく頑張っています。授乳後のセルフケアで、悪化を防ぎましょう。
- 母乳パックで保湿
母乳には、傷の治りを助ける成分が含まれています。授乳後に数滴絞り出し、乳首と乳輪に優しく塗って、そのまましっかり乾かしましょう。ラップを小さく切ってパックするのも効果的です。 - 専用クリームを塗る
「ピュアレーン」などのラノリン100%のクリームは、拭き取らずにそのまま授乳できるので、一つ持っておくと安心です。 - 最終手段!乳頭保護器(ニップルシールド)
痛みがひどくて授乳が困難な場合は、一時的にシリコン製の保護器を使うのも手です。ただし、自己判断で使い続けると母乳分泌量が減る可能性もあるので、必ず母乳外来や助産師さんに相談してから使ってくださいね。
【ママナースの独り言】ミルクを足すのは「負け」じゃない
かつての私もそうでしたが、「母乳で育てなきゃ」という「母乳神話」に縛られて、苦しくなってしまうママが本当に多いです。でもね、ミルクを足すことは、決して愛情不足でも、ママの負けでもありません。
むしろ、パパが授乳できることでママが休息できたり、誰かに預けやすくなったりと、メリットもたくさんあるんです。私も三女の時は混合栄養にして、「まあ、いっか」と肩の力を抜いたら、すごく楽になりました。
まとめ:完璧な母乳育児より、ママが笑顔でいられる授乳タイムを
母乳育児の悩みは、本当にデリケートで、孤独を感じやすいもの。でも、決して一人で抱え込まないでください。
「こんなことで相談していいのかな…」なんて思わずに、産院の母乳外来や、地域の保健師さん、助産師さんをどんどん頼ってください。彼らは、あなたの味方です。
母乳でも、ミルクでも、混合でも、どんな形であれ、ママが笑顔で「大好きだよ」と思いながら赤ちゃんを抱きしめられる時間が、何よりも尊い栄養になります。
あなたの選択が、あなたと赤ちゃんにとってのベストな選択。自信を持って、あなたらしい育児を見つけていってくださいね。
