「母乳育児、こんなはずじゃなかった…」その涙、一人で拭かないで
「赤ちゃんのために、絶対に母乳で育てたい!」
妊娠中、そう意気込んでいたママも多いのではないでしょうか。しかし、実際に始まってみると、「思うように母乳が出ない」「乳首が痛くて、授乳の時間が怖い」など、想像とは違う現実に直面し、涙している方も少なくありません。
母乳育児は、ママと赤ちゃんの二人三脚。最初から完璧にできる人なんて、どこにもいません。
この記事では、助産師として多くのママの悩みに寄り添ってきた経験から、特に多い「母乳が出ない」「授乳が痛い」という二大巨頭の悩みについて、具体的な解決策をQ&A形式で詳しく解説します。
【お悩み1】母乳が足りているか不安…思うように出ません
Q1. 母乳の分泌を増やすには、どうすればいいですか?
A1. まずは、この3つを試してみてください。
- 頻回授乳: とにかく赤ちゃんに頻繁におっぱいを吸ってもらうことが、最大の母乳産生スイッチです。欲しがるときに、欲しがるだけ吸わせてあげましょう。最低でも1日8〜12回が目安です。
- ママの水分補給と栄養: ママが飲む水分が、母乳になります。授乳の前後にコップ1杯の水分(水やお茶)を意識して飲みましょう。また、栄養バランスの良い食事、特にタンパク質と鉄分をしっかり摂ることが大切です。
- リラックスと休息: ストレスや疲れは、母乳の分泌を妨げる大敵です。赤ちゃんが寝ている時は、家事よりも休息を優先し、体を休めましょう。好きな音楽を聴いたり、アロマを焚いたりするのもおすすめです。
Q2. 赤ちゃんがしっかり飲めているか、どうすれば分かりますか?
A2. 体重の増え方だけでなく、以下のサインをチェックしましょう。
- おしっこの回数と色: 1日に6回以上、色の薄いおしっこが出ていれば、水分は足りているサインです。
- うんちの状態: 生後1ヶ月頃までは、1日に何回も黄色っぽいゆるめのうんちが出ます。
- 授乳後の赤ちゃんの様子: 授乳後に満足そうで、落ち着いている様子なら、しっかり飲めていることが多いです。
- ママのおっぱいの状態: 授乳前は張っていたおっぱいが、授乳後には柔らかくなっていれば、赤ちゃんが飲んでくれた証拠です。
体重の増え方は個人差が大きいので、一喜一憂しすぎず、1週間単位など長い目で見ていきましょう。心配な場合は、1ヶ月健診などで相談するのが一番です。
【お悩み2】授乳のたびに激痛が…乳首が切れてしまいました
Q3. 授乳が痛いのは、なぜですか?どうすれば痛くなくなりますか?
A3. 痛みの主な原因は、赤ちゃんの吸い付き方が浅い「浅吸い」です。
正しい吸い付かせ方(ラッチオン)のポイントは以下の通りです。
- ママはリラックスできる姿勢で: 授乳クッションなどを使い、ママの体が楽な姿勢をとります。
- 赤ちゃんの口を大きく開けさせる: 乳首で赤ちゃんの下唇をツンツンと刺激し、あくびのように大きく口を開けるのを待ちます。
- 乳輪まで深く含ませる: 赤ちゃんが大きく口を開けた瞬間に、素早く引き寄せ、乳首だけでなく、乳輪の下側まで深く含ませます。赤ちゃんの唇が「アヒル口」のように外側に開いているのが正しいサインです。
Q4. 乳首が切れてしまいました。どうすれば治りますか?
A4. 授乳後のセルフケアが大切です。
- 授乳後に母乳を塗る: 母乳には、傷を保護し、治りを助ける成分が含まれています。授乳後に数滴絞り出し、乳首と乳輪に塗って、よく乾かしましょう。
- 専用の保護クリームを使う: ラノリン軟膏など、授乳中でも拭き取らずに使える専用の保護クリームを塗るのも効果的です。
- 乳頭保護器(ニップルシールド)を一時的に使う: 痛みがひどく、授乳が困難な場合は、シリコン製の乳頭保護器を一時的に使うことで、痛みを和らげることができます。ただし、自己判断で使い続けると、母乳の分泌量が減ることもあるため、必ず助産師に相談してから使用しましょう。
まとめ:一人で悩まないで。専門家を頼る勇気を持って
母乳育児の悩みは、一人で抱え込んでいると、どんどん深刻になってしまいます。「こんなことで相談していいのかな…」なんて思わずに、地域の助産師や母乳外来、子育て支援センターなど、専門家を積極的に頼ってください。
あなたの心と体が健やかであることが、赤ちゃんにとって何よりの栄養です。ミルクとの混合も、完ミに切り替えることも、決して間違いではありません。あなたと赤ちゃんに合った、笑顔でいられる方法を見つけることが一番大切なのです。