「お姉ちゃんだから」その一言で、長女の笑顔が消えた日
「ちょっと待ってて、今妹ちゃんのオムツ替えてるから」
「お姉ちゃんなんだから、これくらい我慢しなさい」
「さすがお姉ちゃん!しっかりしててえらいね!」
下の子が生まれてから、気づけば私は、長女に対してこんな言葉ばかりかけていました。
3姉妹の母であり、ナースでもある私。
自分では、平等に愛情を注いでいる「つもり」でした。
でもある日、長女がポツリとこう言ったんです。
「…〇〇(自分の名前)は、もうママの子どもじゃないの?」
その言葉に、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。
良かれと思って使っていた「お姉ちゃん」という言葉が、いつの間にか長女を追い詰め、その心を縛る「呪いの言葉」になっていたことに、その時初めて気づかされたのです。
今日は、きょうだいを育てるすべてのママに知ってほしい、「お姉ちゃんだから」という言葉の危険性と、上の子の自己肯定感をしっかりと守り育てるための「魔法の声かけ」について、私の失敗談と共にお話しさせてください。
「お姉ちゃん」という名の、重すぎる鎧
私たち親は、何の気なしに「お姉ちゃんだから」「お兄ちゃんだから」という言葉を使ってしまいます。
それは、「上の子には、下の子のお手本になってほしい」「しっかりしてほしい」という、親としての期待の表れ。
でも、子どもにとって、その言葉は「重すぎる鎧」になります。
言われ続けるうちに、子どもは無意識にこう思うようになります。
「しっかりしなきゃ、ママに褒めてもらえない」
「甘えたいけど、我慢しなきゃいけないんだ」
「弱音を吐いたら、”お姉ちゃん失格”だ」
こうして、子どもは「ありのままの自分」を押し殺し、「親に期待される”良いお姉ちゃん”」を演じるようになってしまうのです。
でも、忘れないでください。
お姉ちゃんになったからといって、その子が急に大人になるわけではありません。
上の子だって、まだほんの「子ども」なんです
下の子が生まれるまで、パパとママの愛情を一身に受けてきた、上の子。
それが突然、自分よりも小さくて、手のかかる存在に、パパとママの関心を奪われてしまう。
その心の中は、不安と、寂しさと、ちょっぴりの嫉妬で、渦巻いています。
下の子のお世話で手一杯になってしまうのは、仕方のないことです。
でも、そんな時だからこそ、私たちは意識して、上の子もまだまだママに甘えたい、パパに注目されたい、ただの「子ども」なんだということを、思い出さなくてはいけません。
私が実践した、上の子の自己肯定感を守る「魔法の声かけ」3選
長女の一言に深く反省した私が、意識して実践した3つの声かけがあります。
① 「あなたが一番」という特別感を、言葉と態度で示す
きょうだいがいると、どうしても時間は平等に分けられません。だからこそ、「愛情」は平等以上に、上の子に「特別」を意識して注ぎました。
「妹ちゃんが寝たら、〇〇(長女の名前)とママだけの秘密の時間ね!」
「ママは、世界で一番〇〇のことが大好きだよ」
言葉で伝えるのはもちろん、下の子が寝た後の5分間だけは、何を差し置いても長女と二人きりで話す時間にする、など「あなただけの特別」を用意することが効果的でした。
交換日記などもおすすめです。
② 「我慢させてごめんね」ではなく「ありがとう」を伝える
下の子のお世話で、上の子を待たせてしまう場面は、どうしても出てきます。
そんな時、以前の私は「待たせてごめんね」「我慢させてごめんね」と謝っていました。
でも、これをやめました。
代わりに、こう言うようにしたのです。
「待っててくれて、ありがとう!ママ、すっごく助かったよ!」
「ごめんね」は、子どもに「自分は我慢させられている」というネガティブな感情を抱かせます。
一方、「ありがとう」は、「自分はママを助けることができた」というポジティブな自己肯定感に繋がります。
同じ状況でも、言葉一つで、子どもの心の受け取り方は180度変わるのです。
③ 「お姉ちゃん」ではなく「名前」で呼び、一人の個人として接する
一番意識したのは、これかもしれません。
私は、意識的に「お姉ちゃん」と呼ぶのをやめました。
そして、必ず「〇〇(名前)」と呼び、一人の個人として接するようにしたのです。
「お姉ちゃんなんだから、こうしなさい」ではなく、「〇〇ちゃんは、どう思う?」と意見を聞く。
「お姉ちゃんだから、手伝って」ではなく、「〇〇ちゃん、ママを助けてくれると嬉しいな」とお願いする。
「お姉ちゃん」という役割(Role)で縛るのではなく、その子の名前を呼び、一人の人間(Person)として尊重する。
たったそれだけで、子どもは「自分は一人の人間として認められている」と感じ、心が安定していきます。
「呪いの言葉」を「魔法の言葉」に
「お姉ちゃんだから」という言葉は、時に子どもの心を縛る「呪いの言葉」になります。
上の子も、下の子も、一人ひとりが、あなたにとってかけがえのない、たった一人の大切な存在。
その子のありのままを受け入れ、その子の名前をたくさん呼んで、「大好きだよ」「ありがとう」と伝え続けること。
それが、きょうだいみんなの自己肯定感を健やかに育む、一番の近道なのだと、私は信じています。
