「ごはん食べる?」→「イヤ!」
「お風呂入る?」→「イヤ!」
「じゃあ、もう寝る?」→「イヤ!」
何を言っても「イヤ!」の無限ループ。昨日まであんなに大好きだったはずのアンパンマンの服を、今日はいらないと泣き叫ぶ…。
こんにちは!3人の娘たちと、三者三様の壮絶なイヤイヤ期を戦い抜いてきた、現役看護師の皐月です。
今、まさにその渦中にいるあなたは、「私の育て方が、何か間違っているんだろうか…」と、自分を責めてしまっているかもしれません。その孤独感と疲労感、痛いほどよく分かります。
でも、もし、あの子の「イヤ!」が、あなたを困らせるためではなく、脳が急成長している証拠だとしたら?
この記事では、小児科での勤務経験もある私が、イヤイヤ期の本当の正体を「脳の発達」という視点から、世界一やさしく解き明かします。敵の正体がわかれば、戦い方も見えてくるはず。少しだけ、肩の力を抜いて読んでみてくださいね。
この記事でわかること
- イヤイヤ期が「喜ばしい成長の証」である、科学的な理由
- あなたの子育ては間違っていない!と言い切れるワケ
- 子どもの脳内で起きている「すごいこと」の正体
- 「イヤ!」の裏に隠された、子どもの本当の気持ち
イヤイヤ期の正体は、脳の「アンバランス」な成長にあった!
イヤイヤ期は、専門的には「第一次反抗期」と呼ばれます。そう、反抗期は思春期だけじゃないんです。この時期、子どもの脳の中では、人生で最も劇的な変化が起きています。
理由①:「自分」の発見!自我のロケット、発射準備中!
1歳頃まで、子どもは「ママと自分は一心同体」だと思っています。それが、歩き始め、言葉を覚え、「あれはワンワン」「ブーブー、きた」と、自分と他のものを区別できるようになると、「ママとは違う、一人の人間としての“自分”」という意識が、ロケットのように急加速で芽生え始めます。
「これは、わたしの!」「じぶんで、やりたい!」
この**「自我の芽生え」**こそが、イヤイヤ期のすべての始まり。親の言うことを素直に聞いていた子が、「自分で考えて、自分で決めたい!」と主張し始める。これって、ものすごい成長ですよね!
理由②:脳のアクセルはF1級!でもブレーキはまだ自転車レベル
子どもの脳は、感情や本能を司る部分(大脳辺縁系)が、まず先に急成長します。これが、いわば感情の**「アクセル」**。「やりたい!」「こうしたい!」という気持ちを、パワフルに生み出します。
一方で、その感情をコントロールしたり、我慢したり、理性的に考えたりする部分(前頭前野)、つまり感情の**「ブレーキ」**が発達するのは、まだまだ先。4歳、5歳と、ゆっくり時間をかけて完成していきます。
つまり、イヤイヤ期の子どもは、**「F1カーのエンジンと、自転車のブレーキを積んだ車」**のような状態。一度「やりたい!」とアクセルを踏み込んだら、自分でも止められないんです。そのもどかしさや、「うまくできない!」という悔しさが、「イヤ!」という万能な言葉になって爆発しているだけなんですね。
理由③:「イヤ!」は、たった一つのSOSサイン
「自分でやりたい」という強い意志はあるのに、それを表現するための言葉を、まだほとんど持っていません。
- 「本当は、赤い服じゃなくて、青い服が着たいのに、うまく言えない!」
- 「今は、ご飯じゃなくて、もう少しだけ遊びたい気分なの!」
- 「なんだか眠くて、体がだるくて、不快な感じがする…」
そんな複雑な気持ちを、どう表現すればいいかわからない。そんな時に、子どもが使える、**最も簡単で、最も強い自己表現の言葉が、「イヤ!」**なのです。
子どもの「イヤ!」は、あなたへの単純な拒絶ではありません。その裏には、**「本当はこうしたいんだ!」「私のこの気持ちを分かって!」**という、切実な心の叫びが隠されています。
ママナースの視点:「脳の工事中につき、ご協力ください」
私がイヤイヤ期に悩むママやパパにいつもお伝えするのは、「お子さんの脳は今、『世界遺産』を建てるための大規模な工事中なんです」ということです。
立派な建物を建てる時って、大きな音が出たり、道が通行止めになったり、ちょっと不便になりますよね。それと同じで、子どもの脳の中でも、新しい回路がものすごい勢いで作られ、古い回路が整理されている、まさに“工事の真っ最中”。だから、一時的に情緒が不安定になったり、癇癪を起こしたりするのは、当たり前のことなんです。
「うちの子、何か問題があるんじゃ…」なんて、心配する必要は全くありません。むしろ、「おぉ、今日も順調に工事が進んでるな!未来の大聖堂、楽しみだ!」くらい、どっしりと構えてあげてくださいね。
まとめ:理由がわかれば、きっと「イヤ!」が愛おしくなる
毎日、嵐の中心にいると、そんな風に思うのは難しいかもしれません。
でも、ふとした瞬間に思い出してみてください。我が子の「イヤ!」は、
- 「自分」という存在に気づいた、成長の証であり、
- 脳のアンバランスさから来る、生理現象であり、
- 言葉にできない想いを伝える、不器用な自己表現である
ということを。
理由がわかったからといって、明日からイライラがゼロになるわけではありません。それでも、「ああ、今、自我のロケットが発射準備中なのね」「脳の工事、お疲れ様!」と、ほんの少しだけ温かい目で見守ってあげられる瞬間が、1日に1回でも増えたなら、あなたの心は、確実に軽くなるはずです。
あなたのその苦労は、お子さんが立派に自立するための、大切な土台作り。あなたは、今日も、素晴らしいお仕事をしていますよ。
