はじめに:ゴールは見えているのに、たどり着けない…
これまでの2回の記事で、トイトレの「準備」と「実践」について、具体的なステップをお話してきました。
▼これまでの記事
- 【準備編】いつから始める?おむつ外しのサインを見極める方法と、最初に揃えるべきグッズ
- 【実践編】失敗しても怒らない!「できた!」を増やす、褒め方・誘い方のコツ
日中のおしっこは、トイレで上手にできるようになった。でも、なぜか…。
「ウンチだけは、どうしてもトイレでできない。わざわざ、おむつに履き替えてからするんです…」
「昼間はパンツで完璧なのに、夜のおむつは、毎朝びっしょり。一体、いつになったら外せるの?」
ゴールテープがすぐそこに見えているのに、なかなか切ることができない。そんな、もどかしい状況に、やきもきしていませんか?
こんにちは!3姉妹の母で、現役看護師の皐月です。
『親子で楽しむ「トイトレ」』シリーズの最終回。今回は、多くの親がぶつかるトイトレ終盤の「あるある」な悩みについて、その原因と具体的な解決策を、ママナースの視点から詳しく解説していきます。
お悩み1:なぜ?ウンチだけ、トイレでできない問題
おしっこは完璧なのに、ウンチだけは、物陰に隠れてこっそりパンツの中にしたり、わざわざ「うんち、出るから、おむつにして」と要求してきたり…。これは、「ウンチだけできない問題」として、本当に多くの親御さんを悩ませます。
なぜ、ウンチだけ難しいの?
子どもにとって、おしっことウンチは、全くの別物です。ウンチの方が、トイレで成功するのが難しいのには、ちゃんとした理由があります。
- 体の仕組みの問題: ウンチをするためには、おしっこよりも、リラックスして、しっかりと“いきむ”必要があります。足が宙に浮くトイレの便座では、腹圧をかけにくく、踏ん張りにくいのです。
- 心理的な問題: 自分の中から、固形の“何か”が出てきて、水の中に消えていく…。この感覚が、子どもにとっては、怖かったり、不安だったりすることがあります。「自分の体の一部が、なくなってしまう」ように感じる子もいるのです。
- 過去の失敗体験: 以前、トイレでウンチをしようとして、固くて痛かった、などのネガティブな経験があると、「トイレでの排便=痛い、怖い」というイメージが、強く残ってしまいます。
どうすれば、トイレでできるようになる?
焦りは禁物です。ウンチを我慢して、便秘になってしまうのが、一番避けたい事態。おむつでしたい、と言うなら、今はさせてあげましょう。その上で、以下のことを試してみてください。
- 踏み台を設置する: 補助便座を使っている場合は、必ず、足がブラブラしないように、しっかりと踏ん張れる高さの踏み台を置いてあげましょう。おまるが成功しやすいのは、このためです。
- 成功体験を、絵本や人形でシミュレーションする: 「うさぎさん、トイレでうんち、すっきりして気持ちいいね〜」と、人形遊びの中で、トイレでの排便が、ポジティブなことだと、繰り返しインプットしてあげましょう。
- 便秘を解消する: もし、便が固くて、排便時に痛がっているようなら、まずは便秘の解消が最優先です。食事内容(食物繊維や水分)を見直したり、必要であれば、かかりつけの小児科で、便を柔らかくする薬を処方してもらったりしましょう。
- 「いってらっしゃい!」と、声をかける: ウンチを「汚いもの」ではなく、「元気な、自分の分身」のように捉えられるよう、流す時に、「うんちさん、バイバイ!」「元気に、いってらっしゃい!」などと、明るく声をかけてあげるのも、効果的です。
お悩み2:いつ外せる?夜のおむつ(おねしょ)問題
日中のトイトレが完了しても、夜のおむつが外れるまでには、また少し時間が必要です。なぜなら、夜間のおしっこは、本人の“意志”では、コントロールできないからです。
夜のおむつが外れるメカニズム
夜、寝ている間におしっこをしないためには、2つの体の機能の発達が必要です。
- 抗利尿(こうりにょう)ホルモンの分泌: 夜になると、脳から「おしっこを作るのを、少しお休みさせるホルモン」が分泌されるようになります。このホルモンが十分に分泌されることで、夜間に作られるおしっこの量が減ります。
- 膀胱の容量: おしっこを、朝まで溜めておけるだけの、十分な大きさに膀胱が発達すること。
これらの体の発達には、個人差が非常に大きく、トレーニングでどうにかなるものではありません。 一般的には、5歳〜6歳頃までに、自然と機能が整ってくる子が多いと言われています。
夜のおむつを外す、タイミングとポイント
- タイミングの目安: 朝起きた時に、おむつが濡れていない日が、1週間〜2週間ほど続いたら、パンツで寝ることを試してみても良いかもしれません。
- 焦って外さない: 周りが外れているからといって、毎朝おむつが濡れているのに、無理にパンツにするのはやめましょう。子どもに「また、お漏らししちゃった…」という失敗体験を、毎日与えることになり、自信を失わせてしまいます。
- 寝る前の水分は、控えめに: 寝る直前に、ジュースや牛乳をがぶ飲みするのは、避けた方が無難です。ただし、喉が渇いているのを、我慢させる必要はありません。
- 寝る前に、必ずトイレに行く習慣をつける。
- 防水シーツを活用する: パンツで寝るチャレンジを始めたら、布団が濡れるのは、当たり前です。親のイライラと、洗濯の手間を減らすために、防水シーツは、必ず敷いておきましょう。
- 絶対に、怒らない: おねしょは、本人のせいでは、決してありません。「わざとじゃないもんね。大丈夫だよ」と、優しく声をかけてあげてください。
まとめ:トイトレの卒業は、子どもの成長の証。でも、焦らないで
トイレトレーニングは、子どもの自立への、大きな大きな一歩です。だからこそ、親は、つい力が入りすぎてしまいます。
でも、思い出してください。寝返りができるようになった日、初めてハイハイした日、最初の一歩を歩いた日。私たちは、ただ、その成長を喜び、見守っていたはずです。
トイトレも、同じです。親がやるべきことは、環境を整え、やり方を教え、そして、お子さん自身の「体の準備」が整うのを、信頼して待ってあげること。
いつか必ず、笑顔で「おむつ、卒業だね!」と言える日が来ます。その日まで、親子で、この貴重な成長の過程を、楽しんでくださいね。
これで、『親子で楽しむ「トイトレ」』シリーズは終わりです。この3つの記事が、あなたのトイトレの道のりを、少しでも明るく照らすものであれば、幸いです。