友達とケンカした子に「謝りなさい」は逆効果?社会性を育むナース式仲直り術

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「とにかく、謝りなさい!」その一言で、子どもの何を奪っていますか?

公園で、お友達とおもちゃの取り合い。
叩いた、叩かれた。
泣きながら、私の元へ走ってくる、我が子。

「〇〇ちゃんが、たたいーたー!」

その姿を見ると、親としては、周りの目も気になり、焦ってしまいますよね。
そして、つい、事情もろくに聞かずに、こう、言ってしまう。

「あなたが、何かしたんじゃないの!?いいから、先に謝りなさい!」

その場を丸く収めるための、魔法の言葉。
でも、3姉妹の母として、そして、ナースとして、子どもたちの心と向き合う中で、私は、この「即時謝罪の強要」こそが、子どもの健やかな成長にとって、いかに“逆効果”であるかを、痛感してきました。

今日は、親が良かれと思って言いがちな「謝りなさい」が、なぜ危険なのか。
そして、子どもの「気持ち」と「社会性」を、同時に育むことができる、本当の仲直りの方法について、お話しさせてください。

なぜ、すぐに「謝りなさい!」は、絶対NGなのか?

子ども同士のケンカには、必ず、双方に、それぞれの「言い分」と「正義」があります。
それを、親が、一方的に「あなたが悪い」と決めつけ、謝罪を強要することは、子どもに、こんなメッセージを与えてしまうことになります。

「僕(私)の気持ちは、どうでもいいんだ」
「ママは、僕(私)の話を聞いてくれない」
「悪いことをしていなくても、謝らなければいけない時があるんだ」

これは、子どもの自己肯定感を、根底から揺るがす、非常に危険な行為です。
自分の気持ちを大切にされない、という経験を繰り返した子どもは、やがて、自分の感情に蓋をし、本音を言えない子になってしまうかもしれません。

さらに、心からの反省が伴わない、「口先だけのごめんなさい」を覚えさせてしまうことにも繋がります。
それは、本当に「ごめんなさい」という言葉が持つ、大切な価値を、子どもから奪ってしまうことでもあるのです。

親の役目は「裁判官」ではなく「気持ちの通訳者」

ケンカの仲裁において、親がすべきなのは、どちらが正しくて、どちらが悪いかをジャッジする**「裁判官」**になることではありません。

子どもは、まだ、自分の気持ちを、うまく言葉にすることができません。
「貸して」と言えずに、手が出てしまったり、
「嫌だ」と言えずに、泣き出してしまったり。

そんな、言葉にならない、お互いの「本当は、こうしたかった」という気持ちを、親が、それぞれに分かりやすく**「通訳」**してあげること。
それこそが、親が果たすべき、唯一の役割なのです。

子どもの「気持ち」と「社会性」を同時に育てる、ナース式・仲直り4ステップ

では、具体的に、どうすればいいのでしょうか。
私が、いつも実践している、4つのステップをご紹介します。

ステップ1:まず、我が子の気持ちに、100%共感する(安全基地の確保)

どんな状況であれ、まずは、泣いて訴えてきた、我が子の気持ちを、全力で受け止めます。

「そうだったんだね。おもちゃ、取られちゃって、悔しかったね」
「叩かれて、痛かったし、悲しかったね。ママに言いに来てくれて、ありがとう」

と、まずは、我が子の気持ちの「安全基地」になってあげること。
親が、自分の絶対的な味方でいてくれる、という安心感が、子どもの心を落ち着かせ、次のステップに進むための、土台となります。

ステップ2:「あなた」は、本当は、どうしたかったの?

心が落ち着いたら、行動の裏にある「本当の願い」を、子ども自身の言葉で、引き出してあげます。

「そっか。じゃあ、あなたは、本当は、どうしたかったの?」

「本当は、あの赤い車で、〇〇くんと、一緒に遊びたかった」
「本当は、『やめて』って、言いたかった」

その、心の奥にある、本当の気持ちを、親が、一緒に見つけてあげるのです。

ステップ3:相手の気持ちを、少しだけ、想像させてみる

自分の気持ちが、親に受け止められて、初めて、子どもは、相手の気持ちを考える余裕が生まれます。

「〇〇くんも、あの車が、すごく大好きで、ずっと使いたかったのかもしれないね」
「いきなり、おもちゃを取られたら、誰だって、びっくりして、悲しい気持ちになるかもしれないね」

と、相手の立場に立つための、ほんの少しのヒントを、与えてあげます。

ステップ4:「どうすればよかったか」を、一緒に考える

そして、最後のステップ。
「じゃあ、次からは、どう言えば、一緒に遊べたかな?」
「『後で、貸してくれる?』って、聞いてみるのは、どうかな?」

と、具体的な、代替案(オルタナティブ)を、子どもと一緒に考えます。
このプロセスを経て、子どもが、自分の心の中から、「やっぱり、さっきは、叩いちゃって、ごめんね、って言いたいな」と感じた時。
その時こそが、本当の意味での「謝罪」が、生まれる瞬間です。

ケンカは、心が育つ、最高のチャンス

友達とのケンカは、子どもが、社会性を学ぶための、最高の、そして、避けられない、大切な機会です。
親が、焦って、「ごめんなさい」の一言で、その貴重な学びの機会を、奪ってしまっては、あまりにも、もったいない。

時間はかかります。根気もいります。
でも、子どもの気持ちに、丁寧に、丁寧に、寄り添い、
相手の気持ちを想像させ、
そして、どうすれば、より良い関係を築けるのかを、一緒に考える。

その、一見、遠回りに見えるプロセスこそが、本当に、人の気持ちがわかり、しなやかで、優しい心を育む、唯一の道なのだと、私は信じています。

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