ピピピッ!体温計が示した「38.5℃」の数字に、ドキッとする。
ぐったりと赤い顔で眠る我が子を前に、多くのママ・パパが頭をよぎるのは、「解熱剤、使わなきゃ!」という焦りではないでしょうか。
「熱が高いと、頭がおかしくなるって聞くし…」
「座薬と飲み薬、どっちがいいの?」
「一度使ったら、何時間あければいい?」
子どもの急な発熱は、親にとって一大事ですよね。解熱剤は、そんな時の心強い味方ですが、使い方を間違えると、かえって子どもの回復を邪魔してしまうこともある、いわば“諸刃の剣”なのです。
こんにちは!3人の娘を育てながら、小児科の現場でたくさんの発熱と向き合ってきた、現役看護師の皐月です。
その気持ち、痛いほどわかります。でも、ちょっと待って!
そもそも「熱」は、子どもが体の中のウイルスや細菌と戦っている、大切な証拠。解熱剤は、その戦いを応援するための「サポート役」なんです。
この記事では、解熱剤を使う本当の目的と、いつ、どの薬を、どう使えばいいのかという「基本のキ」を、徹底的に解説していきます。もう、熱の数字に振り回されるのは、今日で終わりにしましょう!
この記事でわかること
- 【大原則】解熱剤は「熱を下げる」ためではなく「楽にする」ために使う
- 「38.5℃」は絶対じゃない!本当に解熱剤が必要な3つのサイン
- 座薬?飲み薬?子どもの状況に合わせた選び方
- 効果を最大にする!解熱剤を使うべき「タイミング」と「間隔」
大原則:解熱剤は「熱を下げる」ためではなく「楽にする」ために使う
結論:熱の高さではなく、「子どもが辛そうか」で判断する!
まず、最も大切なことをお伝えします。解熱剤は、病気そのものを治す薬ではありません。 あくまで、高熱によるつらい症状(頭痛、体の痛み、だるさなど)を一時的に和らげ、子どもが少しでも楽に過ごせるように手助けするための薬です。
熱が高いこと自体で、脳に障害が残るようなことは、基本的にはありません。
無理に熱を下げると、体がウイルスと戦う力を弱めてしまい、かえって回復が遅れることもあるのです。
解熱剤を使うかどうかの判断基準は、**「熱の高さ」ではなく、「子どもの機嫌や全身の状態」**です。
- 39℃あっても、ケロッとしていて水分も摂れている → 使う必要なし!
- 38.2℃だけど、ぐったりして水分も摂れず、眠れない → 使うことを検討!
熱の数字に一喜一憂せず、「わが子は今、つらい思いをしていないかな?」という視点で見てあげてくださいね。
「38.5℃」は目安。本当に解熱剤が必要な3つのサイン
一般的に「38.5℃」が解熱剤を使い始める目安とされていますが、これは絶対ではありません。
本当に必要なのは、子どもがこんなSOSを出している時です。
- つらくて眠れない
熱のせいで寝付けなかったり、夜中に何度も起きてしまったりする時。睡眠は、回復のための何よりの薬です。 - 水分や食事がとれない
喉の痛みやだるさで、水分補給すら嫌がる時。脱水は発熱時の一番の敵です。 - 機嫌がとても悪く、ぐずり続ける
明らかに体のどこかが痛かったり、だるかったりして、ずっと泣いている時。
これらのサインが見られたら、それは「助けて!」の合図。解熱剤を使って、一時的にでも楽にしてあげましょう。
座薬?飲み薬?わが子に合った選び方
小児科で処方される解熱剤は、主に「アセトアミノフェン」という成分のものです。状況に合わせて使い分けられるよう、それぞれの特徴を知っておきましょう。
| 種類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 座薬 | ・吐き気がある時も使える<br>・効果が比較的早い | ・うんちと一緒に出ることがある<br>・子どもが嫌がることがある |
| 飲み薬 | ・持ち運びが楽<br>・量を細かく調整しやすい | ・味が苦手で吐き出すことがある<br>・嘔吐時は使えない |
| シロップ | ・甘くて飲みやすい | ・嘔吐時は使えない<br>・開封後の保存期間が短い |
【ママナースのPro-Tip】
どれが良い・悪い、ということはありません。個人的には、吐いてしまうことも想定して、「座薬」と「飲み薬」の両方を処方してもらい、お守りとして持っておくと、いざという時に本当に安心ですよ。
効果を最大に!解熱剤を使うべき「タイミング」と「間隔」
解熱剤を使うと決めたら、次は正しい使い方です。ここを間違えると、効果がなかったり、危険な状態を招いたりすることもあります。
- 使うタイミングは?
熱が**「上がりきった時」**に使いましょう。
手足が冷たく、ガタガタ震えている時は、まだ熱が上がっている真っ最中。この時に使うと、体に余計な負担をかけます。手足がポカポカと温かくなってきたら、それが熱がピークに達したサインです。 - 使う間隔は?
アセトアミノフェン製剤の場合、最低でも6〜8時間はあけてください。熱が下がりきらないからといって、時間をあけずに追加で使うのは絶対にNGです。1日に使う回数の上限も、必ず守りましょう。 - 使う量は?
必ず、医師から指示された**「体重あたり」の量**を守ってください。「早く効かせたいから」と多く使うのは非常に危険です。余ったからといって、兄弟で使い回すのも絶対にやめましょう。
まとめ:解熱剤は「お守り」。主役は子どもの“治る力”です
解熱剤は、あくまで子どものつらさを和らげるための「サポーター」。病気を治す主役は、**子ども自身が持つ「免疫力」**という名のヒーローです。
親である私たちの役目は、熱の数字に一喜一憂することではなく、子どもがヒーローの力を最大限に発揮できるよう、環境を整えて応援すること。
ぐったりしていないか、水分は摂れているか、よく眠れているか。
子どもの全身の状態をしっかりと観察し、本当に必要な時に、正しくサポートしてあげましょう。
それが、子どもの“治る力”を最大限に引き出す、一番の愛情表現ですよ。
