「地震だ!」
その瞬間、頭が真っ白になる。でも、次の瞬間、心臓をわしづかみにされるような、もう一つの恐怖が襲ってくる。
「あの子の薬は、どこ…?」
こんにちは。3人の娘を育てる、現役ママナースの皐月です。
看護師として、また防災に関わる者として、私が一番伝えたいこと。それは、持病のあるご家族がいる家庭の防災は、他の家庭とは全く違うレベルの「備え」が必要だということです。
ライフラインが絶たれ、病院も薬局も機能しないかもしれない。そんな極限状況で、どうやって家族の命を守るのか。
この記事は、ただの防災グッズリストではありません。持病を持つお子さんやご家族がいるあなたが、「その時」に後悔しないために、命の三本柱である「薬・情報・避難」の備えについて、具体的にお伝えする、命の守り方マニュアルです。
この記事でわかること
- 命綱である「薬」をどう確保し、どう管理するか
- スマホが使えない時に命を救う「お守り医療情報カード」の作り方
- 「普通の避難所」では危険?知っておくべき「福祉避難所」の存在
- 今日から始める、持病のある家族のための防災アクションリスト
命の柱①【薬の備え】最低1週間分。どう確保し、管理するか
災害時、薬は絶対になくなり、そしてすぐには手に入りません。そう肝に銘じて、備えましょう。
結論:薬は「日常備蓄(ローリングストック)」で、最低でも1週間分、できれば2週間分の予備を常に確保しましょう。
□ 「薬」の備えチェックリスト
- [ ] かかりつけ医に相談し、少し多めに薬を処方してもらう。「防災のために」と伝えれば、理解してくれる先生は多いです。
- [ ] 「いつも使う分」と「防災リュックに入れる分(3日~7日分)」に分けて保管する。
- [ ] **お薬手帳のコピー(またはスマホで写真)を、防災リュックとお財布に入れておく。**薬の名前と用量が分かれば、かかりつけ医以外でも薬を受け取れる可能性が高まります。
- [ ] **医療機器(吸入器、血糖測定器など)の「電源」を確保する。**予備の電池、手動の発電機、モバイルバッテリーの複数持ちは必須です。
命の柱②【情報の備え】あなたが倒れても、この子が守られるように
もし、災害の混乱で、あなたが意識を失ってしまったら?お子さんと、はぐれてしまったら?
その子の持病や必要なケアを、他の誰かが知るすべはあるでしょうか。「情報」の備えは、親であるあなたがいなくなった時にも、子どもの命を守るための、最も重要な備えです。
結論:スマホは使えない前提で、「紙」で情報を携帯しましょう。
□ 「お守り医療情報カード」を作ろう
名刺サイズのカードに、以下の情報を書き込み、防水ケースなどに入れて、お子さんのお守り袋や防災リュック、ランドセルなど、常に身につけるもの複数箇所に入れておきましょう。
【カード記載内容】
- 名前、生年月日、血液型
- 保護者の連絡先(複数)
- 病名・障害名(例:気管支喘息、1型糖尿病、食物アレルギー(卵・乳製品))
- 飲んでいる薬の名前・量・時間
- アレルギー情報(薬、食べ物)
- かかりつけ医・病院の連絡先
- 【最重要】緊急時のお願い(例:「発作が起きたら、この吸入薬を使ってください」「意識がなければ救急車を呼んでください」など、誰が見ても分かるように具体的に)
命の柱③【避難の備え】「どこに逃げるか」で、その後の運命が変わる
持病のある子にとって、誰もが利用する「一般の避難所」は、必ずしも安全な場所ではありません。
結論:一般の避難所での生活が難しい場合は、「福祉避難所」の存在を知り、事前に場所を確認しておくことが必須です。
□ 避難先の選択肢
- 在宅避難: 自宅が安全であれば、住み慣れた家が一番です。
- 親戚・知人宅: 病状を理解してくれている親戚や友人の家を、事前に「もしもの時の避難先」としてお願いしておく。
- 福祉避難所: 高齢者や障害者、医療的ケア児などを対象とした、特別な配慮がなされる避難所です。冷暖房や電源が確保されていたり、看護師が常駐していたりする場合があります。お住まいの自治体のホームページや防災マップで、どこが福祉避難所に指定されているか、受け入れの条件は何かを、必ず平時のうちに確認しておきましょう。
まとめ:あなたの「心配性」が、家族の未来を守る
「少し心配性なくらいが、ちょうどいい」
防災において、私はいつもそう考えています。特に、家族に持病がある場合は、その「心配性」こそが、何よりの強みになります。
薬の準備、情報の整理、避難先の確認…。平時の今だからこそ、落ち着いてできることがあります。
災害は、明日来るかもしれません。
この記事を読み終えた今日、ぜひ一つでも、行動に移してみてください。その小さな備えの積み重ねが、いざという時に、あなたとあなたの大切な家族を、必ず守ってくれますから。
