「別に…」「ウザい…」娘の言葉に、心が凍り付く夜
あれほど「ママ、ママ!」とおしゃべりだった娘が、部屋にこもるようになった。
学校のことを聞いても、「別に…」と一言。
心配して声をかけても、「ウザい…」と、棘のある言葉が返ってくる。
食卓に、重い沈黙が流れる。
日に日に、娘との距離が、どんどん開いていくのを感じる。
「私、何か悪いことした…?」
「このまま、もう話してくれなくなったらどうしよう…」
寂しさと、焦りと、どうしようもない無力感。
3姉妹の母であり、うち上の二人がまさに高校生の思春期真っ只中である私も、この見えない壁に、何度も何度も、頭をぶつけてきました。
今日は、そんな、かつての私と同じように悩んでいるママたちに、心を閉ざした娘と、もう一度、心を通わせるためのコミュニケーションのヒントを、私のリアルな奮闘記と共にお話しさせてください。
なぜ娘は、急に話さなくなるのか?それは「嫌い」のサインじゃない
まず、ママに知っておいてほしい、一番大切なこと。
それは、娘があなたを避けるのは、決して「あなたのことが嫌いになった」わけではない、ということです。
思春期の女の子の心の中は、まるで嵐のよう。
- ホルモンバランスの急激な変化による、自分でもコントロールできないイライラ。
- 複雑化する友人関係の悩み。
- 「もう子ども扱いしないで!」という自立したい気持ちと、「でも、まだママに甘えたい」という矛盾した気持ちの葛藤。
これらの嵐が、彼女たちから言葉を奪い、「今は、そっとしておいて…!」というSOSサインとして、「無視」や「反抗的な態度」に現れるのです。
良かれと思ってやってない?親がやりがちな「NGコミュニケーション」
そんな嵐の中にいる娘に対して、私たち親が良かれと思ってやっていることが、かえって嵐を大きくし、娘の心のシャッターを固く閉ざさせてしまうことがあります。
NG①:心配のあまりの「質問攻め」
「学校どうだった?」「何かあったの?」「〇〇ちゃんとは、最近どうなの?」
心配だからこそ、矢継ぎ早に質問したくなる気持ちは、痛いほどわかります。でも、これは娘にとって「尋問」と同じ。心を閉ざす原因No.1です。
NG②:求められていない「先回りアドバイス」
「そんなの、こうすればいいじゃない!」
娘がポツリと漏らした悩みに、すぐさま解決策を提示していませんか?娘は、答えが欲しいのではなく、ただ「そっか、大変なんだね」と、気持ちを受け止めてほしいだけなのかもしれません。
NG③:自分の価値観での「感情の否定」
「え、そんなことで悩んでるの?」
「あなたの時より、ママの方が大変だったわよ」
娘の悩みを、親の価値観で軽視したり、否定したりするのは、最もやってはいけない最悪の対応です。娘は「どうせ、ママにはわかってもらえない」と、二度とあなたに悩みを打ち明けてはくれなくなるでしょう。
娘の心を再び開く「聞き役」に徹する、3つの極意
では、どうすればいいのか。
答えは、シンプルです。
親が「話し手」になるのをやめ、徹底的に**「聞き役」**に徹すること。
極意①:「共感」は短く、「質問」はしない
もし、娘が何かを話してくれたら、それは絶好のチャンス。
でも、ここで舞い上がってはいけません。
「うん」
「うん」
「そっか」
と、ただ、ひたすら相槌を打ちます。評価も、意見も、アドバイスも、ぐっと飲み込む。
もし何か言葉を添えるなら、「それは、大変だったね」「それは、腹が立つね」と、娘の感情に寄り添う一言だけ。質問は、一切しません。
極意②:「いつでも聞くよ」という“開店休業”の姿勢
親が聞きたいタイミングと、子どもが話したいタイミングは、必ずしも一致しません。
大切なのは、「ママは、いつでもあなたの話を聞く準備ができているよ」という、オープンな姿勢を見せ続けること。
「何かあったら、いつでも聞くからね」
「話したくなったら、夜中でも起こしていいからね」
そう日頃から伝えておき、あとは、過度に干渉せず、娘の方から話しかけてくるのを、ひたすら待つのです。
極意③:「言葉」ではなく「行動」で、愛情を伝え続ける
会話がなくても、愛情を伝える方法は、いくらでもあります。
- 娘の好きなご飯を、黙って作っておく。
- 洗濯物を、何も言わずに畳んで、部屋の前に置いておく。
- 試験勉強で夜更かししている時に、温かいココアをそっと差し出す。
「あなたのことを、いつも気にかけているよ」
「あなたの味方だよ」
そのメッセージを、言葉ではなく、行動で示し続けるのです。
その静かな愛情は、必ず、娘の心に届いています。
嵐が過ぎ去るのを、信じて待つ
思春期は、子どもが親という港から離れ、自分一人の力で、人生という大海原へ漕ぎ出していくための、大切な準備期間。
親としては、寂しく、不安で、つい、船のロープを固く結び直したくなってしまいます。
でも、そこをぐっとこらえ、一歩引いて、静かに「見守る」。
そして、娘が嵐に疲れて港に帰りたくなった時に、いつでも「おかえり」と迎え入れられる、「安全基地」であり続けること。
それが、思-春期の娘を持つ親にできる、最大で、最高の役割なのだと、私は思います。
大丈夫。
嵐は、必ず過ぎ去ります。
そして、嵐を乗り越えた娘は、以前よりももっと強く、優しくなって、また、あなたの元で、笑ってくれるはずですから。
