はじめに:怒鳴った後の自己嫌悪、もう終わりにしませんか?
これまでの2回の記事で、イヤイヤ期の「メカニズム」と「具体的な対処法」についてお話してきました。
▼これまでの記事
- 【メカニズム編】なぜ「イヤ」しか言わないの?子どもの脳の発達から読み解く正体
- 【シーン別対処法編】食事、着替え、歯磨き…魔法の対応フレーズ集
頭では、わかっている。子どもの成長の証だってことも、上手な対応フレーズも、全部わかっている。でも、時間がない朝、疲れて帰ってきた夕方、公共の場で大声で泣き叫ばれた時…。どうしても、カッとなって、感情的に怒鳴りつけてしまう。
そして、寝静まった子どもの天使のような寝顔を見て、「どうして、あんなにひどいことを言ってしまったんだろう…」と、涙を流しながら自己嫌悪に陥る。
そんな毎日を、繰り返していませんか?
こんにちは!3姉妹の母で、現役看護師の皐月です。
何を隠そう、私自身がそうでした。イヤイヤ期の長女を前に、何度も感情を爆発させ、その度に「母親失格だ」と自分を責め続けました。でも、今ならわかります。親だって、人間です。聖人君子じゃありません。イライラするのは、当たり前なんです。
この最終回では、『魔の2歳児・悪魔の3歳児「イヤイヤ期」』シリーズの締めくくりとして、子どもではなく、親自身に焦点を当てます。日々、すり減っていくあなたの心を、どうすれば守れるのか。イライラと上手に付き合い、穏やかな心を取り戻すための、具体的な感情コントロール術をお伝えします。
なぜ、私たちはイライラしてしまうのか?
まず、知っておいてほしいのは、イヤイヤ期の対応でイライラするのは、あなたの心が狭いからでも、愛情が足りないからでもない、ということです。そこには、ちゃんとした理由があります。
- 睡眠不足と疲労: 24時間体制の育児で、心身ともに常にギリギリの状態。
- 思い通りに進まない焦り: 「早くしなきゃ」と思えば思うほど、子どもの「イヤ!」が、行く手を阻む壁のように感じてしまう。
- 孤独感と社会からのプレッシャー: 「ちゃんとした親でいなきゃ」という見えない圧力が、自分を追い詰める。
こんな状況で、イライラするな、という方が無理な話だと思いませんか?だから、まずは**「ああ、私、今イライラしてるな。疲れてるんだな」と、自分の感情を認めてあげる**ことから始めましょう。
イライラ爆発を防ぐ!アンガーマネジメント3つのステップ
怒りの感情のピークは、長くて6秒と言われています。この6秒を、どう乗り切るか。それが、爆発を防ぐための鍵になります。
ステップ1:とにかく、その場を離れる
カッとなったら、まずやるべきこと。それは、物理的に、子どもと距離をとることです。
- トイレに駆け込む、ベランダに出る、別の部屋に行く。
- 子どもが安全な場所にいることを確認した上で、「ママ、ちょっと頭を冷やしてくるね」と、一言伝えて、その場を離れましょう。
これは、子どもにとっても、「ママは、怒るといなくなっちゃう」という学習ではなく、「感情的になった時は、一度クールダウンすればいいんだ」という、大切な感情コントロールの見本になります。
ステップ2:クールダウンするための「お守り」を持つ
その場で6秒やり過ごすための、自分なりのクールダウン方法を、いくつか持っておくと安心です。
- 深呼吸をする: 怒りを感じたら、ゆっくりと息を吐き切ることに集中します。
- 冷たい水で、手を洗う、顔を洗う: 冷たい刺激で、我に返ることができます。
- 心の中で、魔法の言葉を唱える: 「これは成長の証」「まあ、いっか」「大丈夫、大したことじゃない」など、自分を落ち着かせるための呪文を決めておきましょう。
- 好きなものの香りをかぐ: アロマオイルや、ハンドクリームなど、瞬時にリラックスできる香りを持ち歩くのもおすすめです。
ステップ3:自分の感情を「実況中継」する
クールダウンしたら、自分の感情を、客観的に言葉にしてみましょう。これは、パートナーに聞いてもらってもいいし、一人でブツブツ呟くだけでも効果があります。
「さっき、牛乳をわざとこぼされて、本当に腹が立った。なんでかって言うと、こっちは急いでるのに、また仕事を増やされた気がして、悲しくなったんだと思う」
こうして、自分の感情を分析することで、「ああ、私は牛乳をこぼされたこと自体より、自分の時間を奪われたことに腹が立ったんだな」と、怒りの根本原因に気づくことができます。原因がわかれば、次からの対策も立てやすくなります。
頑張る自分を、徹底的に甘やかす許可を出そう
イヤイヤ期の長いトンネルを抜けるために、何より大切なのは、親が、自分自身に優しくなることです。
- ハードルを、極限まで下げる: 食事は、週の半分がベビーフードやレトルトだっていい。掃除が行き届いていなくたって、死にはしない。家事の完璧主義は、今すぐ捨てましょう。
- 一人時間を、意地でも確保する: 1週間に1時間でもいい。パートナーや、一時保育、ファミリーサポートなどを活用して、意識的に子どもと離れる時間を作ってください。「子どもが可哀想」ではありません。ママが笑顔でいるために、必要な時間なのです。
- 同じ立場の仲間と、愚痴を言い合う: ママ友や、SNSのコミュニティなど、同じようにイヤイヤ期と戦う仲間と、「わかる!うちもだよ!」と愚痴を言い合う時間は、最高のカウンセリングになります。
まとめ:嵐は、必ず過ぎ去る。そして、あなたはもっと強くなる
イヤイヤ期は、嵐のようなものです。でも、どんな嵐も、必ずいつかは過ぎ去ります。そして、嵐が去った後には、驚くほどおしゃべりが上手になり、自分でできることが増えた、頼もしい我が子の姿と、数々の戦いを乗り越えて、親として、人として、一回りも二回りも大きく成長した、あなた自身がいるはずです。
今、この瞬間は、本当につらくて、永遠に続くように感じるかもしれません。でも、大丈夫。あなたは、一人じゃありません。完璧な母親なんて、どこにもいないのですから。
これで、『魔の2歳児・悪魔の3歳児「イヤイヤ期」』シリーズは終わりです。この3つの記事が、あなたの心を少しでも軽くする、お守りのような存在になれたなら、心から嬉しく思います。