【ホームケア編】咳で眠れない夜に。少しでも楽にするための家庭での対処法

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はじめに:長い夜を、親子で乗り切るために

前回の「見分け方編」では、子どもの咳の音から、その裏に隠れた病気のサインを読み解く方法についてお話ししました。

▼前回の記事はこちら
【見分け方編】その咳、大丈夫?風邪、クループ、気管支炎…音で聞き分ける危険なサイン

幸い、緊急性の高い危険な咳ではなさそう。でも、コンコン、ゴホゴホ…と続く咳で、お子さんがなかなか寝付けなかったり、夜中に何度も起きてしまったりするのは、見ている親も本当につらいものですよね。

「このまま朝まで、咳がやまなかったらどうしよう…」
「何か、少しでも楽にしてあげられることはないの?」

そんな風に、無力感を感じてしまう夜もあるかもしれません。

こんにちは!現役看護師で、3姉妹の母でもある皐月です。

薬に頼るだけでなく、家庭でできるちょっとした工夫で、子どもの咳は、思った以上に和らぐことがあります。それは、ただ症状を緩和するだけでなく、「ママが自分のために、何かをしてくれている」という安心感を子どもに与える、何よりの“心の処方箋”にもなります。

この記事では、「ホームケア編」として、咳でつらそうなお子さんを、お家で少しでも楽にしてあげるための具体的なケア方法を、ママナースの視点からご紹介します。特別な道具がなくても、今日からすぐに実践できることばかりですよ。


咳を和らげるホームケア4つの基本

家庭での咳ケアの基本は、**「加湿」「水分補給」「安静」「換気」**です。この4つを意識するだけで、子どもの体はぐっと楽になります。

①【加湿】喉の乾燥は、咳の大敵!

乾燥した空気は、喉の粘膜を刺激し、咳を悪化させる最大の原因です。特に、エアコンを使う夏や冬は、部屋の湿度が下がりがちなので注意が必要です。

  • 加湿器を使う: 最も効果的な方法です。湿度の目安は50%〜60%。加湿器がない場合は、濡れたバスタオルを部屋に干しておくだけでも効果があります。
  • お風呂の湯気を吸わせる: 咳がひどくて寝付けない夜には、お風呂場にお湯を張って湯気を充満させ、その中でしばらく抱っこして過ごすのもおすすめです。クループ症候群の「ケンケン」という咳には、特に効果的です。
  • マスクをつける: マスクの内側が自分の呼気で潤うため、喉の保湿に繋がります。ただし、乳幼児や、嫌がる子に無理強いはしないでください。

②【水分補給】痰を出しやすくする、天然の去痰薬

体内の水分が足りないと、痰がネバネバと硬くなり、気管支に張り付いて、ますます咳がひどくなる…という悪循環に陥ります。

  • 何を飲ませる?: 子どもが欲しがるものでOKです。麦茶、湯冷まし、イオン飲料、薄めたりんごジュースなど。一度にたくさん飲ませるのではなく、スプーン1杯でもいいので、こまめに与えましょう。
  • 食事からの水分も意識: 食欲があれば、スープや味噌汁、ゼリー、果物など、水分の多い食べ物を与えるのも良い方法です。

③【体勢】少しの工夫で、呼吸が楽になる

横になると、鼻水が喉に流れ込んだり、気管が圧迫されたりして、咳が出やすくなります。

  • 上半身を少し高くして寝かせる: 背中にたたんだバスタオルやクッションを入れ、頭から肩にかけて、緩やかな傾斜をつけてあげましょう。呼吸が楽になり、咳込みが減ることがあります。
  • 縦抱きで背中をトントン: 痰が絡んだ咳をしている時は、縦に抱っこして、背中を優しくタッピングしてあげると、痰が移動して楽になることがあります。手を丸めて、リズミカルに、下から上へと行いましょう。

④【換気】新鮮な空気を取り入れる

咳の原因となるウイルスやハウスダストを、部屋の外に追い出すことも大切です。寒い日でも、1〜2時間に1回、5分程度で良いので、窓を開けて空気を入れ替えましょう。その際は、お子さんが湯冷めしないように、別の部屋に移動させるなどの配慮を忘れずに。


これはNG!咳を悪化させる可能性のあるケア

良かれと思ってやったことが、逆効果になることもあります。以下の点には注意してください。

  • 市販の咳止め薬を自己判断で使う: 子どもの咳は、痰などの異物を体の外に出そうとする防御反応です。無理に咳を止めると、かえってウイルスや細菌が体内に留まり、症状を長引かせる可能性があります。特に2歳未満の子どもへの市販薬の使用は、副作用のリスクも指摘されています。必ず、医師の指示に従いましょう。
  • 柑橘系のジュース: オレンジジュースなどは、喉を刺激して咳を誘発することがあります。咳がひどい時は、避けた方が無難です。
  • はちみつ: 1歳未満の赤ちゃんには、絶対に与えないでください。「乳児ボツリヌス症」という、命に関わる病気を引き起こす危険があります。

まとめ:ママの手は、何よりの“おくすり”

加湿、水分補給、楽な姿勢…。今回ご紹介したケアは、どれもシンプルなものばかりです。でも、その一つひとつに、「早く良くなってね」というママの想いが込められています。

つらそうな子どもを前に、不安になるのは当然です。でも、そんな時こそ、ママが優しく背中をさすってくれる手、抱きしめてくれる腕が、子どもにとってはどんな薬よりも効果のある“おくすり”になるはずです。

さて、次回の記事では、このシリーズの最終回として、「受診目安編」をお届けします。家庭でのケアを続けても、どんな状態になったら病院へ行くべきか、その具体的な判断基準について、詳しく解説していきます。

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