はじめに:「様子見」と「すぐ受診」の境界線、わかりますか?
これまでの2回の記事で、子どもの咳の「音」で見分ける病気のサインと、家庭でできる「ホームケア」についてお話してきました。
▼これまでの記事
- 【見分け方編】その咳、大丈夫?風邪、クループ、気管支炎…音で聞き分ける危険なサイン
- 【ホームケア編】咳で眠れない夜に。少しでも楽にするための家庭での対処法
ホームケアを試してみたけれど、咳がなかなか良くならない。むしろ、だんだんひどくなっているような…。
「このまま家で見ていて、手遅れになったらどうしよう」
「でも、ただの風邪で病院に行くのは、他の病気をもらうリスクもあるし…」
その迷い、痛いほどよくわかります。特に、初めてのお子さんだったり、夜間や休日だったりすると、その不安は一層大きくなりますよね。
こんにちは!3姉妹の母で、現役看護師の皐月です。
この記事は、『子どもの「咳」完全ガイド』シリーズの最終回です。今回は「受診目安編」として、どんな状態になったら病院へ行くべきか、その具体的な判断基準を、フローチャートのように分かりやすく解説します。もう、「どうしよう…」と一人で悩まなくて大丈夫。この記事を、あなたのお家の“お守り”にしてください。
【日中の受診目安】まずは、かかりつけの小児科へ
基本的には、「いつもと違う」「なんだか心配」と感じたら、ためらわずに日中のうちにかかりつけの小児科を受診するのが一番です。その上で、以下のような症状が見られる場合は、早めに受診を検討しましょう。
チェックリスト:こんな症状があったら、小児科へGo!
- □ 咳が3〜4日以上、続いている
- □ だんだん咳の回数が増えたり、音がひどくなったりしている
- □ 咳のせいで、夜中に何度も起きてしまい、よく眠れていない
- □ 38度以上の熱が2日以上、続いている
- □ 痰の色が、黄色や緑色になってきた(細菌感染の可能性があります)
- □ 食欲がなく、いつもの半分も食べたり飲んだりできない
- □ なんとなく元気がない、機嫌が悪く、ぐずぐずしている
これらの項目に一つでも当てはまるなら、それは体からのSOSサインです。自己判断で様子を見続けず、専門家の診察を受けましょう。
何科に行けばいい?
子どもの咳で、まずかかるべきは**「小児科」**です。小児科医は、子どもの病気の専門家。咳だけでなく、全身の状態を総合的に診て、的確な診断をしてくれます。
もし、咳が長引く(2週間以上)、特定の季節に悪化するなど、アレルギーが疑われる場合は、小児科から「アレルギー科」を紹介されることもあります。まずは、信頼できるかかりつけの小児科医に相談することが、適切な治療への近道です。
【夜間・休日の救急外来】ためらわずに、すぐ病院へ!
夜間や休日は、親の不安が最も高まる時間帯です。しかし、救急外来は、緊急性の高い患者さんのための場所。以下の「緊急性が高いサイン」が見られるかどうかを、冷静に観察してください。
緊急度【高】:すぐに救急外来へ!場合によっては救急車も
- 呼吸の異常
- 顔色・唇の色が悪い: 白っぽい、または紫色(チアノーゼ)になっている。これは、体内に酸素が足りていない、非常に危険なサインです。
- 息が苦しそう: 肩を上下させて、必死に息をしている。小鼻がヒクヒクしている。息を吸う時に、胸やお腹がペコペコとへこむ(陥没呼吸)。
- 呼吸が速い、または不規則: 安静にしている時の呼吸数を1分間測ってみましょう。(目安:新生児 40-50回、乳児 30-40回、幼児 20-30回)これより明らかに速い、または時々息が止まるような場合は危険です。
- 息をするときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音が聞こえる(喘鳴)
- 犬の遠吠えのような「ケンケン」という咳がひどく、眠れない
- 意識の異常
- ぐったりしている: 呼びかけへの反応が鈍い、視線が合わない。
- けいれんを起こした
- 水分が摂れない
- 半日以上、全く水分を摂れていない。おしっこが出ていない。
これらの症状が一つでも見られたら、迷わず夜間・休日救急外来を受診してください。特に、呼吸困難や意識障害がある場合は、**救急車(#119)**を呼ぶことをためらわないでください。
救急車を呼ぶか迷ったら?「#8000」に電話
「救急車を呼ぶべきか、自家用車で病院に行くべきか…」
そんな風に判断に迷った時は、**「小児救急電話相談(#8000)」**に電話してください。全国どこからでも、お住まいの都道府県の相談窓口に繋がり、小児科医や看護師から、受診の必要性や対処法についてアドバイスをもらえます。
受付時間:(自治体により異なりますが、多くの地域で)
- 平日:19:00~翌朝8:00
- 土日祝・年末年始:24時間対応
スマホに「#8000」を登録しておくと、いざという時に慌てずに行動できますよ。
まとめ:的確な判断が、子どもの命を救う
子どもの病状は、急に変化することがあります。だからこそ、親が「これは、おかしい」というサインを見逃さず、適切なタイミングで医療に繋げることが、何よりも大切です。
「心配しすぎかな?」というあなたの不安は、決して大げさではありません。それは、お子さんへの愛情の証です。自信を持って、そして、いざという時にはためらわずに、専門家を頼ってくださいね。
これで、『子どもの「咳」完全ガイド』シリーズは終わりです。この3つの記事が、咳で悩む親子にとって、少しでもお役に立てたなら、これほど嬉しいことはありません。