はじめに:「コンコン」「ケンケン」…その咳、ただの風邪じゃないかも
ゴホゴホッ!
夜中、子どもの苦しそうな咳で目が覚める。熱はないみたいだけど、なんだかいつもと咳の音が違う…。
「ただの風邪かな?」「でも、もしかしたらもっと悪い病気…?」
子どもの咳は、親にとって最も身近で、そして最も不安になる症状の一つですよね。特に、言葉でうまく症状を伝えられない小さな子どもの場合、親がその「音」から危険なサインを察知してあげる必要があります。
こんにちは!3姉妹の母で、現役看護師の皐月です。
病院の小児科では、毎日のように咳で苦しむ子どもたちと、心配そうな顔のお父さん、お母さんに会います。そして、たくさんの咳の音を聞く中で、「この咳は少し様子を見ても大丈夫」「この咳は、すぐに先生に診せないと」という判断を常にしています。
この記事では、そんなママナースの耳になったつもりで、咳の「音」や「特徴」から、その裏に隠れているかもしれない病気を見分ける方法と、家庭で様子を見ても良いか、すぐに病院へ行くべきかの判断基準を、分かりやすく解説します。
あなたは聞き分けられる?咳の音でわかる、病気のサイン
子どもの咳は、大きく分けていくつかの種類があります。それぞれの音の特徴と、考えられる病気を知っておきましょう。
①「コンコン、コホンコホン」乾いた咳
- どんな音?: 痰が絡んでいない、乾いた感じの咳。
- 考えられる病気:
- 風邪のひき始め: 最も多い原因です。熱や鼻水など、他の症状も一緒に出ることが多いです。
- 気管支炎の初期: 風邪から移行し、気管支に炎症が広がると、だんだん咳がひどくなります。
- アレルギー: 特定の季節や場所で咳が出る場合、ハウスダストや花粉などのアレルギーも考えられます。
- ホームケアのポイント: 部屋を加湿し、水分補給をこまめに行いましょう。基本的には、元気で食欲があれば、お家で様子を見て大丈夫です。
②「ケンケン!ケンケン!」犬の遠吠えのような咳
- どんな音?: まるで犬やオットセイが鳴いているような、甲高い、かすれた咳。
- 考えられる病気: クループ症候群
- ウイルスの感染によって、喉頭(のど仏のあたり)が腫れて、空気の通り道が狭くなる病気です。特に、夜間に症状が悪化する傾向があります。
- ホームケアのポイント:
- 加湿が重要: 加湿器を使ったり、お風呂場に湯気を充満させて吸わせたりすると、楽になることがあります。
- 縦抱きにする: 横になると気道が狭くなりやすいので、縦に抱っこしてあげると呼吸がしやすいです。
- 危険なサイン: 咳がひどくて眠れない、呼吸をする時に「ヒューヒュー」という音(喘鳴)が聞こえる、顔色が悪い、息苦しそうにしている場合は、夜間でもためらわずに救急外来を受診してください。
③「ゴホゴホ、ゼロゼロ」痰が絡んだ湿った咳
- どんな音?: 胸の奥の方で、痰がゴロゴロ、ゼロゼロと鳴っているような湿った咳。
- 考えられる病気:
- 気管支炎: 気管支の炎症が進み、分泌物(痰)が増えている状態です。
- 肺炎: ウイルスや細菌が肺にまで達し、炎症を起こしている状態。高熱を伴うことが多いです。
- RSウイルス感染症: 特に乳児(特に生後6ヶ月未満)がかかると、細気管支炎を引き起こし、重症化しやすいので注意が必要です。
- ホームケアのポイント: 水分をしっかり摂って、痰を出しやすくしてあげましょう。背中を優しくトントンとタッピングしてあげるのも効果的です。
- 危険なサイン: 呼吸が速い(1分間に50回以上など)、肩で息をしている、ミルクの飲みが悪い、ぐったりしている場合は、すぐに受診が必要です。
④「ヒューヒュー、ゼーゼー」喘息のような咳
- どんな音?: 息を吐くときに、笛のような「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音が混じる咳。
- 考えられる病気: 気管支喘息
- アレルギーなどが原因で、気道が慢性的に炎症を起こし、狭くなっている状態。ホコリやダニ、気温の変化などで発作が起こります。
- ホームケアのポイント: 医師から処方されている吸入薬や内服薬を、指示通りに使いましょう。部屋を清潔に保ち、アレルゲンを減らすことも重要です。
- 危険なサイン: 横になれないほど苦しそう、会話が途切れ途切れになる、爪や唇の色が紫色っぽい(チアノーゼ)場合は、救急車を呼ぶこともためらわないでください。
まとめ:迷った時は、かかりつけ医へ。親の「勘」も大切に
咳の音による見分け方をお伝えしましたが、これはあくまで一般的な目安です。複数の咳が混じっていたり、判断に迷ったりすることも多いと思います。
そんな時は、ためらわずに、かかりつけの小児科を受診してください。 そして、もう一つ信じてほしいのが、親自身の「なんだか、いつもと違う」という勘です。毎日お子さんを見ている親の直感は、どんなマニュアルよりも鋭いことがあります。
「このくらいで病院にかかるのは、大げさかな?」なんて、思う必要は全くありません。安心して、育児をするためにも、専門家を頼ってくださいね。
次回の記事では、「ホームケア編」として、病院に行くほどではないけれど、つらそうな咳をしているお子さんを、少しでも楽にしてあげるための具体的なお家でのケア方法について、詳しくお伝えします。