はじめに:わかっているけど、どう話せば…それが本音ですよね
前回の記事では、思春期の反抗期に悩む親御さんに向けて、まずは親自身が持つべき「心構え」についてお話ししました。
▼前回の記事はこちら
【基本編】思春期の反抗期、まずは親の心構えから。ママナースが教える冷静な向き合い方
「子どものイライラを真正面から受け止めない」「完璧な親じゃなくていい」
頭ではわかっていても、「じゃあ、実際にどんな言葉をかければいいの?」「どう話しかけたら、あの固く閉ざした心を開いてくれるの?」と、具体的な方法がわからず、ため息をついている方も多いのではないでしょうか。
わかります。私もそうでした。良かれと思ってかけた言葉が、逆に火に油を注ぐ結果になってしまったことも一度や二度ではありません。
でも、大丈夫。ちょっとしたコツを知るだけで、親の言葉は子どもの心に届きやすくなります。
こんにちは!現役看護師で、3姉妹の母でもある皐月です。
今回は、いよいよ実践編。思春期の子どもとのコミュニケーションで、特に効果的な3つのスキル「傾聴」「共感」「I(アイ)メッセージ」について、具体的な会話例をたっぷり交えながら、誰でも今日から実践できるように分かりやすく解説していきます!
スキル1:ただ聞くだけじゃない「傾聴」の魔法
「子どもの話、ちゃんと聞いてますよ!」という親御さん、素晴らしいです。でも、その「聞き方」、もしかしたら「尋問」や「説教」になっていませんか? 思春期の子どもに必要なのは、親の意見やアドバイスではなく、「ただ、黙って最後まで聞いてくれる」安心感なのです。
やってはいけない!NGな聞き方3パターン
まずは、やりがちなNGパターンから見ていきましょう。ドキッとした方もいるかもしれません。
- 結論を急かす・遮る
- 子ども:「今日、部活でさ…」
- 親:「はいはい、で?何があったの?早く結論から言ってくれる?」
- すぐに評価・ジャッジする
- 子ども:「友達とちょっとケンカして…」
- 親:「またあなたが何か言ったんじゃないの?いつもそうなのよ」
- 自分の話にすり替える
- 子ども:「勉強が全然わからなくて…」
- 親:「お母さんの頃はもっと大変だったわよ。それに比べれば…」
これでは、子どもは「もう話すもんか」と心を閉ざしてしまいますよね。
OKな聞き方:「へぇ」「そうなんだ」で心を開く
では、どうすればいいのか?答えはシンプルです。
①相づちを打ちながら、黙って聞く
「うんうん」「へぇ」「そうなんだ」と、ただただ相づちを打ちます。大切なのは、**子どもの言葉を繰り返す「オウム返し」**です。
- 子ども:「今日、部活でマジむかつくことがあって」
- 親:「そっか、むかつくことがあったんだ」
これだけで、子どもは「ちゃんと聞いてくれてる」と感じます。
②質問は「開かれた質問」で
「はい/いいえ」で終わってしまう「閉じた質問」(例:「宿題やったの?」)ではなく、相手が自由に話せる「開かれた質問」を心がけましょう。
- (NG):「先生に怒られたの?」
- (OK):「そっか。それで、どんな気持ちになったの?」
無理に聞き出そうとせず、子どもが話したくなるまで待つ姿勢が大切です。
スキル2:気持ちに寄り添う「共感」の力
子どもが話してくれた内容に対して、親がすべきなのは「正論」をぶつけることではありません。その奥にある**「感情」に寄り添う**ことです。
「わかるよ」は禁句?安易な同感との違い
つい「わかるよー、その気持ち」と言ってしまいがちですが、これは時に「わかったつもりにならないでよ!」と反発を招くことも。
共感とは、「あなたの気持ちを、私はこう感じ取ったよ」と伝えることです。
- 子ども:「もう部活やめたい…」
- (NGな同感):「わかるわかる!お母さんも昔、やめたいって思ったことあるわー」
- (OKな共感):「そっか。『もうやめたい』って思うほど、今つらいんだね」
親の経験談は、子どもが求めてきた時にだけ話すのがベターです。
スキル3:主語を「私」にする「I(アイ)メッセージ」
何かを注意したり、親の気持ちを伝えたりする時に、絶大な効果を発揮するのが「I(アイ)メッセージ」です。主語を「あなた(You)」ではなく、「私(I)」にして伝える方法です。
「Youメッセージ」は相手を責める言葉
私たちは無意識に「Youメッセージ」を使いがちです。
- 「あなたは、なんでいつも部屋を片付けないの!」
- 「あなたは、何度言ったらわかるの!」
これは相手を非難するメッセージになり、反発しか生みません。
「Iメッセージ」で、素直な気持ちを伝える
これを「Iメッセージ」に変えてみましょう。
- 「私は、部屋が散らかっていると、悲しい気持ちになるな」
- 「私は、あなたが夜遅くまで起きていると、体のことが心配だよ」
どうでしょうか?不思議と、スッと心に入ってきませんか?
これは、自分の「感情」を伝えることで、相手に判断を委ねる言い方だからです。命令されると反発したくなる子どもも、親の素直な気持ちを聞くと、「じゃあ、やるか」と考えてくれる可能性が高まります。
まとめ:コミュニケーションはキャッチボール。焦らず、ゆっくりと
今回ご紹介した3つのスキルは、思春期の子どもだけでなく、夫婦関係や職場など、あらゆる人間関係に応用できる強力なツールです。
もちろん、今日から急に完璧にできるわけではありません。失敗したっていいんです。大切なのは、「あなたと、もっと良い関係を築きたい」という親の想いです。
焦らず、ゆっくりと。まずは「聞く」ことから始めてみませんか?
子どもの心の扉が、少しだけ開く音が聞こえるかもしれません。
さて、次回は「信頼構築編」。
親子の絆をさらに深めるための具体的なヒントや、ママナースだからこそ伝えられる心と体の変化へのサポート方法についてお話しします。お楽しみに!