「もし今、大きな地震が来たら…この子の薬、どうしよう?」
持病を持つお子さんを育てるママ・パパなら、一度はこんな不安に胸が締め付けられる思いをしたことがあるのではないでしょうか。喘息の吸入器、アレルギーのエピペン、糖尿病のインスリン…。普段は当たり前のように使っている薬や医療機器も、災害時には命を繋ぐ一本の綱になります。
私自身、3人の娘を育てる母であり、現役の看護師です。医療現場で、そして母親として、災害時の医療の脆弱さ、特に子どものケアがいかに大変になるかを痛感してきました。「普段通り」が通用しない極限の状況で、どうすれば我が子の健康と命を守れるのか。その不安、痛いほどよく分かります。
でも、大丈夫。正しい知識と少しの備えがあれば、その不安は「安心」に変えることができます。
この記事では、単なる防災グッズのリストアップではありません。現役ママナースだからこそ伝えられる、災害時における持病っ子のための「薬・医療品」の具体的な備蓄・管理方法から、いざという時のための実践的なアクションまで、私の経験も交えながら徹底的に解説します。
この記事を読み終える頃には、「これなら、私にもできる!」と、確かな自信が湧いてくるはずです。一緒に、大切な我が子の未来を守る準備、始めませんか?
なぜ、持病っ子の防災は「特別」なの?災害時に本当に困ること
災害時、誰もが大変な思いをします。でも、持病を持つ子どもがいる家庭では、他の家庭とは比べ物にならないほど深刻な問題に直面するリスクがあるんです。まずは、その「なぜ?」を一緒に考えてみましょう。
薬が手に入らない!医療機関の麻痺
一番の恐怖は、薬がなくなることですよね。
- 薬局・病院がストップ:地震で建物が壊れたり、停電したり。薬剤師さんや先生自身が被災して、病院や薬局が開けられないケースは本当に多いんです。
- 道が通れない:交通網が寸断されれば、かかりつけ医の元へたどり着けません。薬を運ぶ物流も完全に止まってしまいます。
- 特定の薬の不足:災害後は、特定の薬を求める人が薬局に殺到します。特に、専門的な治療薬は普段から在庫が少ないため、あっという間になくなってしまうんです。
医療機器が使えない!停電という大きな壁
次に深刻なのが、電源の問題。
- 停電でただの箱に:喘息の吸入器(ネブライザー)や痰の吸引器など、コンセントが必要な医療機器は、停電した瞬間にその役目を果たせなくなります。
- バッテリーの限界:充電式の機器も、充電が切れたら同じこと。「あと1回しか使えない…」なんて、考えるだけでも恐ろしいですよね。
- 衛生環境の悪化:断水で清潔な水が手に入らないと、注射やケアに必要な衛生状態を保つのがとても難しくなります。
周囲に理解されにくい「見えない辛さ」
避難所などでの共同生活も、持病っ子にとっては大きなハードルです。
- 「わがまま」との誤解:アレルギーや内部疾患など、外見からは分かりにくい持病は、「わがまま」「神経質」と誤解されがちです。本当は辛いのに、我慢してしまう子も少なくありません。
- 必要な配慮が得られない:周りの人に病気のことを理解してもらえず、食事や環境の配行を得られないことは、子どもの心と体に大きな負担をかけてしまいます。
こうした困難は、決して大げさな話ではありません。だからこそ、「うちの子は特別なんだ」という意識を持って、万全の備えをしておくことが、何よりも大切なんです。
【ママナース実践】命を守る!3つの「お守り」準備リスト
では、具体的に何を、どのように備えれば良いのでしょうか?ここからは、私が実際に家庭で実践している「薬・医療機器・情報」の3つの備えを、具体的にお話ししますね。
お守り1:【薬】最低でも7日分、できれば14日分
災害発生から支援体制が整うまで、最低でも3日~7日はかかると言われています。だから、薬の備えは最優先事項です。
- 定期薬(毎日飲む薬):最低でも7日分。心配な方は14日分以上あると、心の余裕に繋がります。
- 頓服薬(症状が出た時に使う薬):発作時の吸入薬、アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬、解熱剤など、「いざ!」という時の薬も、少し多めにストックしておきましょう。
【皐月のひとこと】
かかりつけの先生に「災害用に少し多めに薬を処方していただけませんか?」と正直に相談してみてください。「もしものために」という親の気持ちを、きっと理解してくれるはずです。我が家では、処方された薬の一部を防災リュックに入れ、残りを日常で使う「ローリングストック法」を実践しています。これなら、使用期限切れも防げて安心ですよ。
お守り2:【医療機器】電源問題はポータブル電源で解決!
電源が必要な医療機器をお使いなら、停電対策は必須です。
- ポータブル電源:今は、スマホの充電にも使える小型で軽量なものがたくさんあります。ネブライザーを数回使う程度なら、小型のものでも十分対応可能です。
- 手動の代替品:例えば、電動の鼻水吸引器を使っているなら、手動の吸引器も一つ用意しておく。電池式の吸入器があれば、それも立派な「お守り」になります。
- 車のシガーソケット:車を持っているなら、シガーソケットから電源を取れるインバーターも忘れずに。
お守り3:【情報】スマホが使えない前提で動く
災害時は、スマホの充電切れや通信障害は当たり前に起こります。大切な情報は、アナログ(紙)で備えるのが鉄則です。
- お薬手帳のコピー:最新のページを複数枚コピー!防災リュック、車の中、実家など、複数の場所に分散して保管するのがポイントです。
- 「災害時のお願い」カード:診断名、飲んでいる薬、アレルギー、緊急連絡先、かかりつけ医などを1枚にまとめたカードを手作りしておきましょう。避難所で周りの人に協力をお願いする時に、これがあると本当にスムーズです。
- 連絡先リスト:かかりつけ医、相談できる支援機関、同じ病気を持つママ友など、頼れる人の連絡先を紙に書き出しておきましょう。
災害発生!その時、ママ・パパが取るべき行動とは?
実際に災害が起きてしまったら…。パニックにならず、落ち着いて行動するために、今のうちから流れをイメージしておきましょう。
STEP1:安全確保と情報収集
まずは、あなたと子どもの安全確保が最優先。揺れが収まったら、テレビやラジオ、自治体の防災無線で正確な情報をキャッチしましょう。デマに惑わされないで!
STEP2:避難?それとも在宅?
自宅が安全で、ライフライン(特に水と電気)が確保できているなら、無理に避難所へ行く必要はありません。医療ケアが必要なお子さんにとっては、住み慣れた家が一番安心できる場所です。これを「在宅避難」と言います。
STEP3:避難所で「お願い」する勇気
もし避難所で生活することになったら、どうか一人で抱え込まないでください。
- 運営スタッフに相談:まずは避難所の運営スタッフに、「持病があって、医療機器の電源が必要です」など、具体的に必要な配慮を伝えましょう。
- 「ヘルプマーク」を見せる:見た目では分かりにくい病気の場合、「ヘルプマーク」は「助けてください」のサインになります。
- 周りの人にも一言:「うちの子、アレルギーがあって…」「夜中に機械の音がうるさかったらごめんなさい」と周りの人に伝えておくだけで、無用なトラブルを避け、思いがけない協力を得られることもあります。
まとめ:完璧じゃなくていい。今日できる一歩が、未来を守る
持病を持つお子さんのための災害への備えは、本当にやることが多くて、考えるだけで疲れてしまうかもしれません。
でも、一番大切なのは、「完璧な備え」を目指すことよりも、「今日、何か一つでも行動してみる」ことです。
まずはお薬手帳をコピーしてみる。防災リュックの中の薬の使用期限をチェックしてみる。そんな小さな一歩の積み重ねが、いざという時に、あなたと、そして何より大切なお子さんの命と未来を守ることに繋がります。
この記事が、あなたの「はじめの一歩」を、そっと後押しできたら、ママナースとして、これほど嬉しいことはありません。