はじめに:一つのアレルギーが、次々と呼ばれていく…
「うちの子、乳児期はアトピー性皮膚炎に悩まされ、少し大きくなったら食物アレルギーを発症し、今度は喘息の気があると言われた…」そんな風に、アレルギー疾患が、まるでマーチ(行進)のように、次から次へと形を変えて現れることがあります。これを**「アレルギーマーチ」**と呼びます。
こんにちは、ママナースのさとみです。アレルギーマーチは、アレルギー体質を持つお子さんによく見られる現象であり、多くの親御さんを悩ませています。
しかし、近年の研究で、乳児期の早い段階から適切なケアを行うことで、このアレルギーの連鎖を断ち切れる可能性があることが分かってきました。この記事では、アレルギーマーチのメカニズムと、その流れを食い止めるために、家庭でできることを解説します。
アレルギーマーチは、なぜ起こる?
アレルギーマーチの出発点は、多くの場合、乳児期のアトピー性皮膚炎です。
- 皮膚のバリア機能の低下: 乾燥や湿疹によって、皮膚のバリア機能が低下する。
- アレルゲンの侵入(経皮感作): バリア機能が壊れた皮膚から、ダニやホコリ、食べ物などのアレルゲン(アレルギーの原因物質)が体内に侵入し、免疫系がそれを「敵」として記憶してしまう(感作)。
- 食物アレルギーの発症: その後、感作された食べ物を口から摂取した際に、アレルギー反応として、じんましんなどの症状が現れる。
- 気管支喘息・アレルギー性鼻炎へ: アレルゲンへの感作が続くことで、アレルギー反応の舞台が、皮膚から気道や鼻の粘膜へと移り、喘息や鼻炎を発症する。
このように、**すべての始まりは「皮膚」**にある、という考え方が、現在のアレルギー治療の主流となっています。
マーチを止める鍵は「スキンケア」と「早期の食物摂取」
アレルギーマーチの連鎖を断ち切るために、最も重要なのが以下の2点です。
1.徹底したスキンケアで、皮膚のバリア機能を守る
アレルゲンの侵入ルートである「壊れた皮膚」を作らないことが、全ての予防の第一歩です。
- 優しく洗う: 泡立てた石鹸で、手で優しく洗い、しっかりすすぎます。
- すぐに保湿: お風呂上がりは、5分以内に、たっぷりの保湿剤を全身に塗り、皮膚のバリア機能を補強します。カサカサしている部分だけでなく、一見きれいに見える部分にも塗ることが大切です。
- 湿疹は、すぐに治療する: 赤みやかゆみのある湿疹は、ステロイド外用薬などを使って、早期にしっかりと治し、良い状態をキープすることが重要です。ステロイドを怖がり、中途半端な使い方をするのは、かえって症状を長引かせ、経皮感作のリスクを高めてしまいます。必ず、医師の指示に従って正しく使いましょう。
2.医師の指導のもと、適切な時期に離乳食を開始する
かつては「アレルギーが怖いから、離乳食は遅らせた方が良い」と考えられていた時期もありましたが、現在は、むしろ適切な時期(生後5〜6ヶ月頃)に様々な食材を与えた方が、食物アレルギーを予防できるという考え方が主流です(経口免疫寛容)。
もちろん、自己判断で進めるのは危険です。特に、アトピー性皮膚炎があるお子さんの場合は、必ず、かかりつけの小児科医やアレルギー専門医と相談しながら、指導に従って離乳食を進めていきましょう。
まとめ:最初の一歩が、未来を変える
アレルギーマーチの考え方は、親御さんにとって、少しショッキングな内容かもしれません。しかし、見方を変えれば、**「乳児期のスキンケアを徹底することで、将来の食物アレルギーや喘息のリスクを減らせる可能性がある」**という、希望のメッセージでもあります。
アレルギーの発症は、体質だから仕方ないと諦めるのではなく、家庭でできる予防に、積極的に取り組んでみませんか?
赤ちゃんのすべすべ肌を守ることが、その子の将来の健康を守ることに、直接繋がっているのです。