その一瞬の出来事が、親の心を凍らせる。あなたは、どうすればいいか迷っていませんか?
食事中に、急に顔を真っ赤にして咳き込み始めた我が子。
熱いお茶をひっくり返してしまい、泣き叫ぶ我が子。
「どうしよう…!」
「息ができないんじゃないか…」「やけどの跡が残ったらどうしよう…」
子どもの窒息や、やけどは、親にとって最もパニックに陥りやすく、そして最も冷静な判断が求められる瞬間ですよね。一刻を争う状況で、どうすればいいのか分からず、一人で抱え込んでいませんか?
こんにちは!救急外来での勤務経験もあり、数えきれないほどの窒息や、やけどの事例を見てきた、現役ママナースの皐月です。
まず、あなたにお伝えしたいのは、子どもの窒息や、やけどは、予防が何よりも大切であるということ。そして、万が一の時でも、正しい応急処置を知っていれば、命を守り、重症化を防ぐことができるということです。
この記事では、そんなあなたの不安を解消するために、窒息とやけどの緊急時の応急処置から、病院を受診すべき目安、そして予防策まで、専門家の視点と実体験を交えて、徹底的に解説します。
さあ、お子さんの大切な命を守るための一歩を、一緒に踏み出しましょう。
Part 1:窒息 ― 一刻を争う緊急事態
子どもは、口に物を入れることで世界を探索します。そのため、誤って小さなものを飲み込んでしまい、喉に詰まらせてしまうことがあります。窒息は、命に関わる緊急事態です。
窒息しやすいもの
- 食べ物: 豆類(ピーナッツ、枝豆など)、こんにゃくゼリー、ぶどう、ミニトマト、お餅、飴、パン、肉類(こんにゃく、イカなど弾力のあるもの)
- おもちゃ: 小さな部品、ボタン電池、ビー玉、スーパーボール
- その他: タバコ、薬、ビニール袋、風船
窒息のサイン
- 咳き込む、むせる
- 顔色が真っ青になる、唇が紫色になる
- 声が出ない、泣けない
- 呼吸が苦しそう、ゼーゼー、ヒューヒューという音がする
- 意識がなくなる、ぐったりする
【緊急時】窒息の応急処置
窒息のサインが見られたら、ためらわずに以下の応急処置を試みてください。
1歳未満の乳児の場合
- 背部叩打法(はいぶこうだほう):
- 片腕にうつ伏せに抱え、頭が体より低くなるようにします。
- もう一方の手のひらの付け根で、肩甲骨の間を強く5回叩きます。
- 胸部圧迫法(きょうぶあっぱくほう):
- 仰向けに抱え直し、頭が体より低くなるようにします。
- 乳首を結んだ線の少し下を、指2本で強く5回圧迫します。
- 背部叩打法と胸部圧迫法を交互に繰り返します。
1歳以上の幼児・小児の場合
- 背部叩打法:
- 子どもの後ろに回り、片腕で胸を支え、頭が体より低くなるように前かがみにさせます。
- もう一方の手のひらの付け根で、肩甲骨の間を強く5回叩きます。
- 腹部突き上げ法(ハイムリック法):
- 子どもの後ろに回り、両腕で抱きかかえるようにします。
- 片方の手を握りこぶしにし、おへその少し上に当て、もう一方の手でそのこぶしを握ります。
- 素早く、手前上方に向かって突き上げるように圧迫します。
- 背部叩打法と腹部突き上げ法を交互に繰り返します。
<ママナースの重要メモ>
- 意識がなくなったら、すぐに心肺蘇生法を開始し、救急車を呼んでください。
- 口の中に指を入れてかき出すのは、さらに奥に押し込んでしまう危険があるので、やめましょう。
- 応急処置を試みても異物が出ない場合や、意識が朦朧としている場合は、すぐに救急車を呼んでください。
窒息の予防策
- 食事中は目を離さない: 特に乳幼児は、食事中に目を離さないようにしましょう。
- 小さく切る: 食べ物は、子どもの口の大きさに合わせて小さく切りましょう。丸いものや弾力のあるものは特に注意が必要です。
- ながら食べをさせない: テレビを見ながら、遊びながらなど、「ながら食べ」は窒息のリスクを高めます。
- 危険なものは手の届かない場所に: 小さな部品のおもちゃや、ボタン電池など、誤飲の危険があるものは、子どもの手の届かない場所に保管しましょう。
Part 2:やけど ― 迅速な冷却が鍵
子どもは、好奇心旺盛で、危険を認識する能力がまだ未熟です。そのため、熱いものに触れてやけどを負ってしまうことがあります。やけどは、重症化すると跡が残ったり、命に関わることもあります。
やけどの原因
- 熱湯・熱い飲み物: カップラーメン、お茶、コーヒー、ポットのお湯など。
- 調理器具: ストーブ、アイロン、炊飯器の蒸気、オーブンなど。
- 電気製品: ドライヤー、ヘアアイロン、電気ケトルなど。
- 直射日光: 夏場のベビーカーのシート、車のチャイルドシートなど。
やけどの重症度
- I度熱傷: 皮膚が赤くなる程度。ヒリヒリとした痛みがある。
- II度熱傷: 水ぶくれができる。強い痛みがある。
- III度熱傷: 皮膚が白っぽくなったり、黒焦げになったりする。痛みを感じないこともある。
【緊急時】やけどの応急処置
やけどをしたら、すぐに以下の応急処置を試みてください。
- とにかく冷やす!:
- 流水で冷やす: やけどをした部分を、すぐに水道の流水で、最低でも10〜15分以上冷やし続けましょう。 服の上からでも構いません。冷やすことで、熱が体の奥に伝わるのを防ぎ、痛みを和らげ、重症化を防ぐことができます。
- 注意点: 氷や保冷剤を直接当てると、凍傷になる可能性があるので、タオルなどで包んで当てましょう。水ぶくれは、潰さないようにしましょう。
- 清潔なもので覆う:
- 冷やした後は、清潔なガーゼやラップなどでやけどの部分を覆い、細菌感染を防ぎましょう。絆創膏は、水ぶくれを潰してしまう可能性があるので、広範囲のやけどには適しません。
- 病院へ:
- 冷やしながら、すぐに医療機関を受診しましょう。
<ママナースの重要メモ>
- 民間療法は絶対にやめてください。 アロエや味噌などを塗ると、かえって症状を悪化させたり、感染症を引き起こしたりする危険があります。
- 広範囲のやけどや、III度熱傷が疑われる場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。
やけどの予防策
- 熱いものは手の届かない場所に: テーブルクロスは、赤ちゃんが引っ張って上のものを落とす危険があるので使用しない。
- 調理中は注意: キッチンにはベビーゲートを設置するなど、子どもが入れないようにしましょう。
- 電気製品の管理: ドライヤーやアイロンなどは、使用後すぐに片付け、コードも子どもの手の届かない場所に保管しましょう。
- お風呂の温度: お風呂のお湯は、必ず給湯温度を確かめ、混ぜてから入れるようにしましょう。
まとめ:正しい知識と準備が、命を守る
子どもの窒息や、やけどは、親にとって本当に恐ろしい出来事ですが、正しい知識と適切な応急処置を知っていれば、慌てずに対応することができます。
大切なのは、日頃からの予防を徹底すること。
そして、万が一の時でも、冷静に、迅速に、正しい応急処置を行い、迷わず専門家を頼ることです。
あなたのその冷静な判断と、温かいサポートが、お子さんの命を守る何よりの力になります。このガイドが、あなたの不安を少しでも和らげ、お子さんとご家族の安全を守る一助となれば幸いです。