「転んで擦りむいちゃった!」「包丁で指を切っちゃった!」
子どもがけがをすると、ママ・パパは慌てて消毒液を塗ったり、絆創膏を貼ったりしていませんか?私も3姉妹の母として、子どもがけがをするたびに、昔ながらの「消毒して、乾かして、かさぶたにする」という方法で手当てをしていました。しかし、現役看護師として最新の医療知識を学ぶ中で、けがの応急手当には「新常識」があることを知りました。「消毒しない、乾かさない」という「湿潤療法」です。「え、消毒しないの!?」と驚かれる方もいるかもしれませんね。
今回は、現役ママナースの私が、けがの応急手当の新常識である「湿潤療法」について、なぜ消毒液より早くきれいに治るのか、その理由と正しいやり方、そして家庭でできるケアについて、私の経験も交えながら分かりやすく解説します。いざという時に、お子さんのけがを早くきれいに治してあげるために、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
けがの応急手当、昔と今で何が違う?
昔のけがの手当の常識は、「消毒して、乾かして、かさぶたにする」でした。しかし、今は「消毒しない、乾かさない」という「湿潤療法」が主流になっています。
昔の常識
- 消毒: 傷口を消毒液で消毒する。
- 乾燥: 傷口を乾燥させ、かさぶたを作る。
- 絆創膏: 絆創膏やガーゼで保護する。
新常識「湿潤療法」
- 洗浄: 傷口を水道水でよく洗い流す。
- 保護: 傷口を「湿潤環境」に保つ被覆材(絆創膏やガーゼ)で保護する。
なぜ「消毒しない、乾かさない」湿潤療法が早くきれいに治るの?
湿潤療法は、傷口から出る体液(滲出液)を閉じ込めることで、傷の治りを早め、きれいに治す方法です。この体液には、傷を治すための成分(成長因子など)が豊富に含まれています。
1. 消毒液が傷を治す細胞を傷つける
- 消毒液の作用: 消毒液は、細菌を殺すだけでなく、傷を治すために必要な細胞(線維芽細胞など)も傷つけてしまいます。これにより、傷の治りが遅くなったり、かえって悪化したりすることがあります。
- 痛みの原因: 消毒液は、傷口に刺激を与え、痛みを引き起こします。子どもが痛がって、手当てを嫌がる原因にもなります。
2. 乾燥がかさぶたを作り、治りを遅らせる
- かさぶたの役割: かさぶたは、傷口を保護する役割がありますが、同時に傷を治す細胞の動きを妨げ、治りを遅らせてしまいます。また、かさぶたの下で細菌が繁殖しやすくなることもあります。
- 傷跡の原因: 乾燥した環境では、傷跡が残りやすくなります。湿潤環境を保つことで、傷跡が目立ちにくくなります。
3. 湿潤環境が傷を治す最適な環境
- 体液の活用: 傷口から出る体液(滲出液)には、傷を治すための成分が豊富に含まれています。この体液を傷口に閉じ込めることで、傷を治す細胞が活発に働き、治りが早まります。
- 痛みの軽減: 傷口が乾燥しないため、神経が刺激されにくく、痛みが軽減されます。
- 傷跡が目立ちにくい: 湿潤環境を保つことで、皮膚の再生がスムーズに行われ、傷跡が目立ちにくくなります。
家庭でできる湿潤療法:正しい応急手当とケア
家庭でできる湿潤療法は、以下の手順で行いましょう。
1. 傷口を水道水でよく洗い流す
- 流水で十分に: 傷口についた砂や泥、細菌などを、清潔な水道水で十分に洗い流しましょう。石鹸を使っても構いませんが、泡が残らないようにしっかりと洗い流してください。
- 消毒液は使わない: 消毒液は使わないでください。
2. 傷口を湿潤環境に保つ被覆材で保護する
- ハイドロコロイド素材の絆創膏: キズパワーパッドなどのハイドロコロイド素材の絆創膏がおすすめです。傷口から出る体液を吸収し、湿潤環境を保ってくれます。
- ワセリンとラップ: ハイドロコロイド素材の絆創膏がない場合は、傷口にワセリンを厚めに塗り、その上から食品用ラップで覆い、テープで固定する方法もあります。ただし、ラップは密閉性が高いため、こまめに交換し、傷口の様子を確認しましょう。
- ガーゼは使わない: ガーゼは傷口を乾燥させてしまうため、湿潤療法には向きません。
3. 被覆材を交換する
- 体液が漏れてきたら交換: 被覆材から体液が漏れてきたり、剥がれてきたりしたら交換しましょう。交換の目安は、1日1回程度ですが、傷口の様子を見て判断してください。
- 交換時も洗浄: 交換する際も、傷口を水道水で洗い流してから、新しい被覆材を貼りましょう。
こんな時は医療機関を受診!
ほとんどのけがは家庭で対処できますが、以下のような場合は、医療機関を受診しましょう。
- 出血が止まらない場合: 圧迫しても出血が止まらない場合。
- 傷が深い、大きい場合: 傷口が大きく開いている、骨が見える、筋肉や腱が露出しているなど。
- 異物が刺さっている場合: 砂利やガラス片などが深く刺さっている場合。
- 動物に噛まれた、虫に刺された場合: 感染症のリスクがあります。
- 顔や関節など、傷跡が残りやすい場所のけが: 形成外科を受診しましょう。
- 感染の兆候がある場合: 傷口が赤く腫れている、熱を持っている、膿が出ている、強い痛みがあるなど。
- 破傷風の心配がある場合: 釘を踏んだ、土のついた傷など。
まとめ:正しい知識で、お子さんのけがを早くきれいに治そう
子どものけがは、親にとっては心配の種ですが、正しい知識と適切な応急手当を知っておくことで、慌てずに対応し、お子さんのけがを早くきれいに治してあげることができます。
今回ご紹介した「湿潤療法」は、まさに「傷は消毒しない、乾かさない」が新常識です。ぜひ、ご家庭の救急箱の中身を見直して、ハイドロコロイド素材の絆創膏などを常備しておきましょう。もし、もっと詳しく知りたいことや、不安なことがあれば、いつでもコメントで教えてくださいね。私たちママナースも、皆さんの子育てを心から応援しています!