「その時」は、必ずやってくる。でも、いつ?どうやって?
臨月を迎え、大きなお腹を抱えながら、赤ちゃんと会える日を心待ちにする毎日。
その一方で、日に日に大きくなるのが、「出産への不安」ではないでしょうか。
「陣痛って、どれくらい痛いの?」
「おしるしが来たら、すぐ病院に行くべき?」
「破水したら、パニックにならずに、何をすればいいの?」
初めての出産は、誰にとっても、未知の体験。不安になるのは、当然のことです。
ご安心ください。この記事では、助産師として、数多くの出産に立ち会ってきた経験から、お産が始まる3つのサインと、陣痛が始まってから、赤ちゃんが誕生するまでの流れを、時系列で、分かりやすくシミュレーションします。
出産の流れを事前に知っておくことは、漠然とした不安を、**「乗り越えるための覚悟」**に変える、最高のお守りになります。
お産が始まる、3つのサイン
お産は、この3つのいずれかのサインから始まることがほとんどです。慌てず、冷静に見極めましょう。
サイン1:おしるし
- どんなもの?: 少量の血液が混じった、おりもの。色は、ピンク色や茶褐色など、様々です。
- なぜ起こる?: 子宮の収縮が始まり、子宮口が少しずつ開くことで、卵膜が子宮壁から剥がれるために起こる出血です。
- どうすればいい?: おしるしが来ても、すぐにお産が始まるとは限りません。数日後、あるいは1週間以上経ってから、陣痛が始まることも。慌てずに、通常の生活を送って大丈夫ですが、「いよいよだな」と、心の準備を始めましょう。
サイン2:陣痛
- どんなもの?: 赤ちゃんを押し出そうとする、子宮の収縮による痛み。「生理痛の、ものすごく重い感じ」「お腹を、内側からギューッと握りつぶされるような痛み」などと表現されます。
- 本物の陣痛の見分け方:
- 痛みが、規則的にやってくる(例:10分おき)
- 休んでも、姿勢を変えても、痛みがおさまらない
- 痛みの間隔が、だんだん短くなってくる
- 痛みの強さが、だんだん強くなってくる
- どうすればいい?: 陣痛の間隔を、時計やアプリで測り始めましょう。産院から指示された間隔(例:初産婦なら10分間隔、経産婦なら15分間隔)になったら、産院に電話して、指示を仰ぎます。
サイン3:破水
- どんなもの?: 赤ちゃんを包んでいる卵膜が破れ、羊水が流れ出てくること。「パシャッ」と、まとまった量の温かい液体が出ることもあれば、「チョロチョロ」と、尿漏れのように、少しずつ流れ続けることもあります。
- なぜ危険?: 破水をすると、子宮と外の世界が繋がり、赤ちゃんへの細菌感染のリスクが高まります。
- どうすればいい?: 陣痛が来ていなくても、すぐに産院に連絡してください。 シャワーや入浴は絶対にNGです。清潔なナプキンや、大きめのタオルを当て、車で移動する際は、シートが濡れないように、バスタオルやレジャーシートを敷いて、すぐに産院に向かいましょう。
【完全シミュレーション】陣痛開始から、出産までの流れ
分娩第1期:開口期(陣痛開始〜子宮口が全開大10cmになるまで)
- 所要時間(目安): 初産婦で10〜12時間、経産婦で5〜6時間
- ママの様子: 陣痛の波が、だんだん強く、長くなっていきます。最初は、話す余裕もありますが、次第に、痛みのない間(間欠期)に、うとうとするようになります。
- パパができること:
- 腰や、お尻のあたりを、テニスボールなどで、強く押してあげる(いきみ逃し)
- 水分補給のサポート、汗を拭く、うちわで扇ぐ
- 「上手だよ」「赤ちゃんと一緒に、頑張ろうね」と、ポジティブな声かけを続ける
分娩第2期:娩出期(子宮口全開大〜赤ちゃん誕生まで)
- 所要時間(目安): 初産婦で1〜2時間、経産婦で30分〜1時間
- ママの様子: 赤ちゃんが、骨盤の中を少しずつ下りてくるため、自然と強くいきみたくなります。助産師の「いきんでいいよ!」の合図に合わせて、陣痛の波と共に、いきみます。
- パパができること:
- ママの頭を支え、呼吸をリードしてあげる
- 手を握り、励まし続ける
- 「頭が見えてきたよ!」など、実況中継をして、ママを勇気づける
分娩第3期:後産期(赤ちゃん誕生〜胎盤が出るまで)
- 所要時間(目安): 15〜30分
- ママの様子: 赤ちゃんが生まれた安堵感と、感動に包まれます。軽い陣痛と共に、胎盤が自然に出てきます。
まとめ:出産は、赤ちゃんとママの、最初の共同作業
出産は、ゴールが見えない、長いマラソンのようです。しかし、あなたは、決して一人ではありません。
お腹の赤ちゃんも、狭い産道を通るために、必死に頑張っています。そして、パパや、助産師、医師が、チームとなって、あなたと赤ちゃんを、全力でサポートします。
大丈夫。あなたなら、必ず、乗り越えられます。
元気な産声と、温かい赤ちゃんの重みを感じる、あの感動の瞬間まで、あともう少しです。