はじめに:「言わなくても、わかってよ!」は、もうやめよう
前回の「原因編」では、産後に妻が夫へ抱くイライラの正体が、ホルモンバランスの変化や、身体的な疲労、そして、夫婦間の「当事者意識の差」にある、というお話をしました。
▼前回の記事はこちら
【原因編】なぜ夫にイライラする?産後に夫婦関係が冷え込む、すれ違いの正体
原因は、わかった。でも、一番の問題は、「このつらさを、どう伝えれば、相手に届くのか」ということですよね。
「なんで、私ばっかり!」と感情をぶつけても、返ってくるのは、「俺だって、仕事で疲れてるんだ!」という、望まない反撃だけ。そんな、不毛な夫婦喧嘩に、疲れ果てていませんか?
こんにちは!3姉妹の母で、現役看護師の皐月です。
産後のすれ違いを乗り越えるために、最も大切なこと。それは、夫を「育児ができない、使えない敵」だと見なすのを、やめることです。そして、**「何も知らない、新人の同僚」だと思って、一から、丁寧に、具体的に、やってほしいことを「指示出し」してあげること。つまり、妻が、夫の「育児指導担当」**になるのです。
この記事では、「会話術編」として、夫への不満を、喧嘩ではなく「協力」に変えるための、具体的なコミュニケーション術について、詳しくお伝えしていきます。もう、「察してちゃん」は、卒業です!
大原則:「感謝」と「尊敬」を、忘れない
まず、どんな会話術よりも、土台として大切な心構え。それは、夫への「感謝」と「尊敬」の気持ちを、意識的に思い出すことです。
産後の今は、憎らしく見えるかもしれないけれど、元はと言えば、愛して結婚したパートナーのはず。仕事で、家族のために戦ってきてくれていることへの感謝。その気持ちを、ほんの少しでも思い出すだけで、あなたの言葉のトーンは、自然と和らぐはずです。
「ありがとう」この一言が、夫の心を動かす、最強の魔法の言葉だということを、忘れないでください。
夫を“戦友”に変える、3つのコミュニケーション術
①「やってくれたこと」を、徹底的に褒めて、感謝する
夫が、何かをやってくれた時。たとえ、それが、あなたのやり方と違っていても、クオリティが低くても、絶対に、ダメ出しをしてはいけません。
- NG: 「ミルクの作り方、違う!なんで、哺乳瓶の消毒してないの!」
- OK: 「ミルク作ってくれたんだ!ありがとう、助かる!次からは、この消毒した哺乳瓶を使うと、もっと助かるな!」
まずは、「ありがとう」。そして、**「こうしてくれると、もっと嬉しいな」**という、ポジティブなリクエストの形で、修正点を伝えます。
男性は、プライドの生き物です。ダメ出しをされると、「もう、やらない!」と、すぐに心を閉ざしてしまいます。夫を、褒めて育てる、大きな長男だと思いましょう。妻の「ありがとう」が、夫の「次もやろう!」という意欲を育て、最強の戦友へと成長させてくれるのです。
②「してほしいこと」は、超・具体的に、指示を出す
「何か手伝おうか?」と聞かれて、「別に、何もない」と、不機嫌に答えてしまう。そして、後から、「なんで、あの時、ゴミ出ししてくれなかったの!」と怒る…。これは、最悪の悪循環です。
夫は、本当に、「何をすればいいか、わからない」のです。だから、やってほしいことは、小学生にでもわかるレベルで、具体的に、タスクとして伝えましょう。
- NG: 「ちょっと、何か手伝ってよ!」
- OK: 「今から、私が赤ちゃんをお風呂に入れるから、その間に、リビングに落ちてるおもちゃを、この箱の中に全部入れて、テーブルの上を、この布巾で拭いておいてくれる?」
ここまで具体的に言われれば、夫も、迷わず動くことができます。そして、完了したら、「ありがとう!すごくきれいになった!助かった!」と、感謝の言葉を忘れずに。
③「I(アイ)メッセージ」で、自分の状態を伝える
不満や要求を伝える時、主語を「あなた(You)」ではなく、「私(I)」にすることで、相手に与える印象は、全く変わります。
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NG(Youメッセージ): 「あなたは、なんで、いつも帰りが遅いの!」(相手を非難するメッセージ)
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OK(Iメッセージ): 「私は、あなたがいないと、一人でのお風呂が、すごく大変で、心細いんだ」
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NG(Youメッセージ): 「あなたは、私の話、全然聞いてないでしょ!」
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OK(Iメッセージ): 「私は、今、すごく孤独で、誰かに話を聞いてほしい、って思ってるの」
「あなたは〜」という非難ではなく、「私は〜」という、自分の気持ちや状況を、素直に伝える。そうすることで、夫も、「そうか、そんなに大変だったのか。じゃあ、どうすればいいだろう」と、相手を責めるのではなく、問題を解決する方向に、思考を切り替えやすくなります。
「夫婦の時間」を、意図的に作る
子どもが生まれると、夫婦の会話は、そのほとんどが「子どものこと」に関する、業務連絡になりがちです。でも、意識して、夫婦二人のための時間を持つことが、関係を良好に保つためには、不可欠です。
- 1日5分でもいい。 子どもが寝た後、「今日、会社でどんなことあった?」と、他愛のない話をする時間を作りましょう。
- 定期的に、子どもを預けて、二人で出かける。 ランチでも、映画でも、なんでもいい。一時的に「パパとママ」を休んで、「夫と妻」に戻る時間が、お互いの心の栄養になります。
まとめ:最高のチームを作るのは、妻(あなた)の采配次第
産後クライシスは、多くの夫婦が経験する、自然な現象です。でも、それを乗り越えられるかどうかは、妻の「伝え方」の工夫に、大きくかかっています。
夫を、ダメ出しばかりされる「やる気のない部下」にするのか。それとも、感謝と尊敬を伝えられ、生き生きと働く「最高の戦友」に育てるのか。その采配は、すべて、あなた(妻)の腕にかかっているのです。
もちろん、すぐにうまくいくわけではありません。でも、伝え方を変えれば、相手の反応は、必ず変わります。諦めずに、試行錯誤を続けてみてください。
次回の最終回では、「レス解消編」として、産後の夫婦関係で、最もデリケートで、深刻な問題の一つである「セックスレス」について、正面から向き合っていきたいと思います。