はじめに:その「困った!」、みんな経験しています
前回の「基本編」では、子どもの解熱剤を使う上での基本的な考え方や、種類、使うタイミングについてお話しました。
▼前回の記事はこちら
【基本編】子どもの熱、何度から座薬を使う?種類、間隔、タイミングの全て
マニュアル通りに使ってみた。でも、いざ実践してみると、「あれ?なんだかうまくいかない…」ということ、ありますよね。
「解熱剤を使ったのに、30分経っても1時間経っても、一向に熱が下がらない…」
「座薬を入れた瞬間に、うんちと一緒に出てきちゃった!これって、どうすればいいの?」
こんな“あるある”なトラブルに直面した時、親としては「薬が効かないほど、重症なんじゃ…」と、不安が倍増してしまうものです。
こんにちは!3姉妹の母で、現役看護師の皐月です。
大丈夫。その「困った!」、あなただけが経験しているわけではありません。小児科の現場でも、親御さんから本当によく受ける質問ばかりです。
この記事では、「疑問解消編」として、解熱剤を使う上でよくあるトラブルや疑問について、Q&A形式で分かりやすくお答えしていきます。この記事を読めば、予期せぬ事態にも、もう慌てず冷静に対処できるようになりますよ。
解熱剤の“あるある”Q&A:こんな時、どうする?
Q1. 解熱剤を使ったのに、熱が全然下がりません。どうして?
A1. まずは、落ち着いて。薬が効いていないわけではないかもしれません。
解熱剤の目的は、熱を平熱まで下げることではありません。つらい症状を和らげるために、高すぎる熱を1℃〜1.5℃ほど下げてあげるのが、薬の役割です。
例えば、39.5℃あった熱が、薬を使った後に38.5℃になったとしたら、それは薬が十分に効いている証拠です。「まだ熱が高いじゃない!」と焦る必要はありません。少しでも熱が下がり、お子さんの表情が和らいだり、水分が摂れたりするようであれば、それでOKなのです。
また、熱の勢いが非常に強い時(ウイルスが体内で大暴れしている時など)は、薬の力よりも、熱を上げようとする体の働きが勝ってしまい、なかなか熱が下がらないこともあります。そんな時は、薬だけに頼らず、**クーリング(体を冷やすこと)**を併用してみましょう。
【クーリングのポイント】
首の付け根、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている場所を、保冷剤をタオルでくるんだものや、濡れタオルで冷やしてあげると効果的です。ただし、子どもが嫌がる場合は、無理強いしないでくださいね。
Q2. 座薬を入れたら、すぐウンチと一緒に出てしまいました!
A2. 出てしまった時間によって、対応が異なります。
これは、本当によくあるトラブルです。焦らず、何分くらいで出てしまったかを確認しましょう。
- 入れてから10分以内に出てしまった場合:
- 薬がほとんど吸収されていない可能性が高いです。もう一度、同じ量の座薬を入れ直してOKです。
- 入れてから30分以上経ってから出てしまった場合:
- 薬の大部分は、すでに体内に吸収されています。追加で使うと、薬の量が多すぎてしまう危険があるので、次に追加で使える時間(通常は6〜8時間後)まで、様子を見てください。
- 10分〜30分の間で、微妙な時間の場合:
- 判断に迷いますよね。ウンチの中に、溶け残った座薬が形として見えているかどうかも、一つの判断材料になります。もし、形がそのまま残っているようなら、もう一度使っても良いかもしれません。しかし、一番安全なのは、次の時間まで待つか、かかりつけの病院や、**小児救急電話相談(#8000)**に電話して、指示を仰ぐことです。
Q3. 飲み薬を飲ませたら、吐いてしまいました…。
A3. これも、吐いてしまった時間で判断します。
- 飲んでから10分以内に吐いてしまった場合:
- ほとんど吸収されていないので、もう一度、同じ量を飲ませてあげて大丈夫です。ただし、吐き気が続いている時に無理に飲ませても、また吐いてしまう可能性があります。少し時間をおいて、落ち着いてから再チャレンジしましょう。
- 飲んでから30分以上経ってから吐いてしまった場合:
- すでに吸収されていると考えて、追加では飲ませないでください。
吐き気が強い時は、無理に飲み薬を使おうとせず、座薬に切り替えるのが賢明です。
Q4. 熱が下がって元気になったので、保育園に行かせてもいい?
A4. いいえ、絶対にいけません!
解熱剤で一時的に熱が下がっても、病気が治ったわけではありません。体の中では、まだウイルスや細菌が残っています。この状態で集団生活に戻ると、他の子に病気をうつしてしまうだけでなく、お子さん自身の体力も落ちているため、別の病気をもらってきたり、症状がぶり返したりする原因になります。
保育園や学校の出席停止期間の基準は、病気の種類によって異なりますが、一般的な風邪であっても、解熱剤を使わずに平熱で24時間以上過ごせ、かつ、咳や鼻水などの症状が落ち着いて、食欲や元気が普段通りに戻っていることが、登園・登校を再開する一つの目安です。必ず、園や学校のルールを確認してくださいね。
まとめ:トラブルはつきもの。冷静な判断が、ママを強くする
子どもの看病に、マニュアル通りにいかないトラブルはつきものです。でも、一つ一つのトラブルに冷静に対処していく経験が、親としての自信と、的確な判断力を育ててくれます。
今回ご紹介したQ&Aが、あなたの「どうしよう…」を、「こうすれば大丈夫!」という自信に変える、手助けになれば嬉しいです。
さて、次回の記事では、このシリーズの最終回として、少し怖いけれど、知っておくべき「熱性けいれん」について、万が一の時にパニックにならないための正しい知識と対応をお伝えします。