保育園からの着信に、心臓が凍りつく。
デスクで集中して仕事をしている時に限って、ブルっと震えるスマートフォン。画面に表示された「保育園」の三文字に、思わず息を飲んでしまう…。
ワーキングマザーなら、誰もが一度は経験したことのある、あの心臓がキュッとなる瞬間ではないでしょうか。
「〇〇ちゃん、38.5℃のお熱で…」
その一言で、頭の中は真っ白。今日の会議、締め切り間近のあの資料、引き継ぎはどうしよう…。様々なタスクが頭を駆け巡ると同時に、胸に突き刺さるのは、職場への「申し訳ない」という、重たい重たい罪悪感。
「また私か…」
「きっと、迷惑だって思われてる…」
私自身も、看護師として働きながら三姉妹を育ててきた中で、この罪悪感には何度も押しつぶされそうになりました。休んだ日の夜、高熱でうなされる我が子の寝顔を見ながら、「仕事も育児も中途半端だ…」と、一人で涙を流したことも一度や二度ではありません。
でも、ある時、考え方を変えてみたんです。「休む罪悪感」を、**「次に繋がる信頼関係を築くチャンス」**に変えられないだろうか、と。
この記事では、子どもの急な発熱で仕事を休まなければならないワーママたちが、罪悪感から解放され、むしろ休み明けに同僚から「ありがとう!」と感謝されるための、具体的な「段取り術」と「コミュニケーションのコツ」を、ママナースとしての経験を交えてお話しします。
「休む前の15分」が、あなたの評価を決める
お迎え要請の電話を受けたら、パニックにならず、まずは深呼吸。そして、退勤前の15分間で、以下の3つを徹底しましょう。この15分が、あなたの信頼を大きく左右します。
1. 仕事の「見える化」と「共有」
「あの件、どうなってる?」をなくすのが目標です。誰が見ても分かるように、仕事の進捗状況を簡潔に共有しましょう。
- タスクリストの作成: 今日やるべきだったこと、明日以降のタスクを、優先順位をつけて書き出します。(例:A案件の企画書作成(本日中)、B社へのメール返信(明日午前中)など)
- 共有フォルダの徹底: 関連資料は、すべて共有フォルダの決まった場所に保存する癖をつけましょう。「私のPCにしかありません」は、チームで仕事をする上で最大のNGです。
- 引き継ぎメモのテンプレート化: 「案件名」「現状」「次にやること」「関係者連絡先」などを盛り込んだシンプルなテンプレートを事前に作っておくと、急な時でも慌てずに引き継ぎができます。
2. 魔法の言葉「何か手伝えることはありますか?」
同僚に仕事をお願いする時、ただ「すみません、お願いします」で終わっていませんか?
大切なのは、**「お願いする姿勢」**です。
「本当に申し訳ないのですが、この件、もし可能であれば、〇〇さんにお願いできませんでしょうか。何か不明点があれば、夕方以降であれば少し電話に出られますので、いつでも連絡してください。何かこちらで手伝えること(家でできること)はありますか?」
この一言があるだけで、相手に「丸投げされた」という印象ではなく、「協力したい」という気持ちを持ってもらえます。
3. 「感謝」と「進捗報告」の先回り連絡
仕事を休んでいる間も、放置は禁物。ただし、頻繁な連絡は逆に迷惑になります。タイミングを見計らった、スマートな連絡を心がけましょう。
- 夕方の「感謝」連絡: 「今日は本当にありがとうございました。〇〇の件、進めてくださり、心から感謝しています。子どもの熱はまだ高いですが、落ち着いています」など、感謝と簡単な状況報告をメールやチャットで入れておきましょう。
- 翌朝の「見通し」連絡: 翌日も休む必要がある場合は、朝一番に「本日もお休みをいただきます。昨日お願いした件、もし何かあれば、遠慮なくご連絡ください」と連絡を。これにより、チームも1日の仕事の見通しが立てやすくなります。
平時こそが勝負!「あの人がいなくても、大丈夫」な体制を作る
急な休みで慌てないためには、普段からの準備が何よりも重要です。これは、ママナースが働く病棟で、常に意識されている「チームでリスクを分散する」という考え方と同じです。
- 仕事の「属人化」をなくす: 「この仕事は、あなたにしかできない」という状況を、意識的になくしていきましょう。マニュアルを作成したり、ペアで仕事を進めたり、普段から積極的に情報共有を行うことが、結果的にあなた自身を助けることになります。
- 「お互い様」の精神で、普段からギブ&ギブ: 同僚が困っている時は、率先して「何か手伝おうか?」と声をかける。普段から、小さな「ありがとう」をたくさん貯金しておくことで、あなたが困った時、周りは快く手を差し伸べてくれるはずです。
子どもの病気は、誰のせいでもありません。ワーママが、罪悪感なく「母親」という大切な役割を果たせる社会であるべきだと、私は心から思います。
「すみません」を「ありがとう」に変える、ほんの少しの工夫と意識。ぜひ、明日からの仕事で、試してみてくださいね。