「最近、うちの子、なんだかすごくワガママになった気がする…」
「夜中に急に泣き叫んだり、おねしょをしたり。どうしちゃったんだろう…」
災害という大きな出来事の後、子どもの「いつもと違う姿」に戸惑っていませんか?
大人でさえ、不安や恐怖で押しつぶされそうになる災害時。子どもたちは、その小さな心で、私たちには想像もできないほどの大きなストレスを抱えています。でも、そのストレスをうまく言葉で表現することができません。
だから、子どもたちは体や行動で「SOS」を発信するのです。おねしょ、かんしゃく、赤ちゃん返り…。それらは、決して「困った行動」ではなく、子どもからの「助けて」という必死のサインなのです。
看護師として、私は言葉を話せない患者さんの小さな変化から状態を読み取る訓練を重ねてきました。その観察眼は、子育てにおいても、言葉にできない子どもの心の声を聞くために、とても役立っています。
この記事では、あなたがお子さんの「最高の理解者」になるために、災害後に見られがちなストレスサインの具体的な見つけ方と、そのサインに気づいた時にできる、優しい寄り添い方をお伝えします。
これってストレスサイン?年齢別・子どものSOSの見つけ方
子どものストレスサインは、年齢によって現れ方が異なります。まずは、どんなサインがあるのかを知ることから始めましょう。
【乳幼児期(0〜3歳)】体に現れるサイン
言葉を話せない赤ちゃんは、体や行動で不快感を表現します。
- 泣き方がいつもと違う:些細なことで激しく泣き、なかなか泣き止まない。
- 親から離れない:後追いが激しくなったり、常に抱っこを求めたりする。
- 睡眠トラブル:寝つきが悪くなる、夜中に何度も起きる(夜泣き)。
- おねしょ・おもらし:一度できていたトイレが、またできなくなる(退行現象)。
【幼児期(4〜6歳)】行動に現れるサイン
少し言葉が話せるようになっても、感情をうまく表現できず、行動に出てしまう時期です。
- 赤ちゃん返り:急に指しゃぶりを始めたり、片言で話したりする。
- 攻撃的になる:お友達を叩いたり、物を投げたり、親に暴言を吐いたりする。
- 遊びの変化:地震ごっこなど、怖い体験を何度も繰り返して遊ぶ。
- 具体的な恐怖を訴える:「地震が怖い」「津波が来る」と、具体的な言葉で恐怖を口にする。
【学童期(小学生以上)】心と体に現れるサイン
我慢を覚え、自分の気持ちを押し殺してしまう子も出てきます。
- 頭痛・腹痛:精神的なストレスが、体の不調として現れる。
- 集中力の低下:勉強や好きなことに集中できなくなる。
- 無気力・無関心:好きだった遊びをしなくなったり、ボーッとしている時間が増えたりする。
- 過剰に「良い子」になる:親を困らせまいと、自分の気持ちを抑え込み、必要以上に聞き分けの良い子になる。
【皐月のひとこと】
特に注意して見てあげてほしいのが、一番下の「過剰に良い子になる」ケースです。手がかからないので見過ごされがちですが、実は一番ストレスを溜め込んでいる可能性があります。「大丈夫?」と優しく声をかけ、気持ちを話せる雰囲気を作ってあげることが大切です。
子どものSOSに気づいたら…親ができる3つの寄り添い方
サインに気づいたら、焦らず、子どもの心に寄り添ってあげましょう。
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「そのまんま」を受け止める
「なんでそんなことするの!」と叱るのではなく、「そっか、今はそういう気持ちなんだね」と、まずは子どものありのままの感情や行動を受け止めてあげましょう。親に受け止めてもらえる経験が、子どもの安心感に繋がります。 -
安心の「基地」になる
子どもがいつでも帰ってこられる「安全基地」であることを、態度で示してあげましょう。優しく抱きしめる、話を聞く、そばにいる。ただそれだけで、子どもは「自分は守られている」と感じることができます。 -
生活リズムを整える
不規則な生活は、心の不安定さに繋がります。決まった時間に起き、食事をし、寝る。避難生活の中でも、できるだけ「いつも通り」の生活リズムを保つことが、心の安定剤になります。
まとめ:あなたは、お子さんの一番の専門家
災害後の子どものケアで、一番大切なこと。それは、親が「うちの子、いつもと違うな」と、その小さな変化に気づいてあげることです。
毎日一緒にいるあなただからこそ、気づけるサインがあります。あなたは、誰よりもお子さんのことを知っている、「一番の専門家」なのです。
不安なのは、子どもも親も同じ。完璧な対応なんてできなくて当たり前です。ただ、子どもの心に寄り添おうとするその気持ちが、何よりの力になります。
この記事が、あなたが子どもの心の声に耳を澄ます、小さなきっかけになれば嬉しいです。