「嘘をつくなんて、悪い子!」その一言が、子どもの心を追い詰める
「宿題やったの?」
「うん、やったよ(本当は、やっていない)」
明らかに嘘だと分かる、子どもの拙いごまかし。その場しのぎの言い訳。
我が子の嘘に気づいた時、あなたは、どんな気持ちになりますか?
「どうして、そんな嘘をつくの!」
「嘘つきは、泥棒の始まりよ!」
裏切られたような気持ちになり、つい、強い言葉で問い詰めてしまう…という方も多いのではないでしょうか。
しかし、頭ごなしに嘘を責めることは、問題を解決するどころか、子どもをさらに巧妙な嘘へと追いやり、親子の信頼関係を壊してしまう、最悪の対応です。
この記事では、心理カウンセラーの視点から、子どもが「なぜ」嘘をつくのか、その背景にある心理を解き明かし、嘘と正直に、そして賢く向き合うための、親の関わり方をお伝えします。
子どもの「嘘」は、成長の証でもある
実は、子どもが嘘をつくためには、
- 現実と、そうでないことの区別がつく
- 相手の心を推測できる(これを言ったら、相手はどう思うか)
- 過去の出来事を記憶し、話を作ることができる
といった、高度な認知能力が必要です。つまり、子どもの嘘は、脳が順調に発達している証でもあるのです。
問題なのは、嘘そのものではなく、**「なぜ、その嘘をつかなければならなかったのか」**という、子どもの心の内にあります。
子どもの嘘の裏に隠された、5つの「本当の気持ち(SOS)」
子どもの嘘は、大きく5つのタイプに分類できます。
1. 怒られたくない(防御の嘘)
最も多いのが、このタイプです。失敗や、やるべきことをやらなかったことを、親に叱られるのが怖くて、とっさに嘘をついてしまいます。これは、親の顔色をうかがい、自分を守ろうとする、自己防衛本能です。
2. 褒められたい、すごいと思われたい(願望の嘘)
「逆上がりができた」「テストで100点を取った」など、自分の願望や理想を、まるで事実かのように話す嘘です。これは、「親に認められたい」「もっと自分を大きく見せたい」という、承認欲求の表れです。
3. 空想と現実の区別がついていない(空想の嘘)
幼児期の子どもによく見られる、「昨日、空を飛んだんだよ」といった、ファンタジーの世界の嘘です。これは、豊かな想像力の表れであり、悪意はありません。
4. 誰かをかばうための嘘(思いやりの嘘)
「自分がやった」と、友達や兄弟をかばうための嘘です。これは、相手を思いやる、優しい心の芽生えでもあります。
5. 親の気を引くための嘘(気を引くための嘘)
「お腹が痛い」「頭が痛い」など、体調不良を訴えることで、親の関心を自分に向けようとする嘘です。背景には、寂しさや、もっと構ってほしいという気持ちが隠されています。
嘘に気づいた時の、親の正しい対応法
STEP1:まずは、冷静になる
嘘に気づいても、すぐに「嘘でしょ!」と指摘するのは、ぐっとこらえましょう。親が感情的になると、子どもは心を閉ざしてしまいます。
STEP2:嘘の裏にある「気持ち」を想像し、共感する
「なぜ、この子はこの嘘をついたんだろう?」と、一歩立ち止まって、子どもの気持ちを想像してみましょう。
- (防御の嘘に対して)「宿題をやっていないって言ったら、ママに怒られると思ったんだね。怖かったんだね」
- (願望の嘘に対して)「逆上がりができるようになりたいんだね。その気持ち、よく分かるよ」
まずは、嘘をつかざるを得なかった、子どもの気持ちに寄り添い、共感を示すことが、信頼関係を築く第一歩です。
STEP3:「正直に話してくれて、ありがとう」と伝える
子どもが、本当のことを話してくれたら、内容を責める前に、まず「正直に話してくれた勇気」を褒めましょう。
「本当のことを言ってくれて、ありがとう。ママ、すごく嬉しいよ」
この一言で、子どもは「正直に話しても、受け止めてもらえるんだ」と安心し、次も正直に話そうと思えるようになります。
STEP4:嘘をつかなくても済む方法を、一緒に考える
最後に、どうすれば、次は嘘をつかずに済むかを、親子で一緒に考えます。
「宿題が難しいなら、どこが分からないか、一緒にやってみようか」
「失敗しても、正直に話してくれたら、ママは絶対に怒らないからね」
まとめ:嘘をつく必要のない「安心感」こそが、最高のしつけ
子どもが嘘をつくのは、多くの場合、**「正直に言ったら、損をする」**と学習してしまっているからです。
親がすべきことは、嘘を厳しく罰することではありません。
「この人には、何を話しても大丈夫だ」
子どもに、そう思ってもらえるような、絶対的な「安心感」と「信頼関係」を築くこと。それこそが、子どもを正直さへと導く、唯一にして、最高のしつけなのです。