突然の絶叫、怯えた表情…これってただの夜泣き?
深夜、すやすやと眠っていたはずの子どもが、突然、火がついたように泣き叫び出す。
目を見開いて、何かにひどく怯えている様子。
「大丈夫だよ」と抱きしめようとしても、親を認識しているのか分からず、パニック状態は収まらない…。
そして、翌朝になると、本人はケロッとして何も覚えていない。
もし、あなたのお子さんにこんな症状が見られたら、それは単なる「夜泣き」や「怖い夢」ではなく、**「夜驚症(やきょうしょう)」**かもしれません。
この記事では、多くの親を悩ませる「夜驚症」と「悪夢」の決定的な違いと、その原因、そして家庭でできる適切な対処法について、専門家の視点から詳しく解説します。
一目でわかる!「夜驚症」と「悪夢」の違い
この二つは、似ているようで、実は全く異なるメカニズムで起こります。
特徴 | 夜驚症(睡眠時驚愕症) | 悪夢(怖い夢) |
---|---|---|
起こる時間帯 | 眠り始めの深いノンレム睡眠時(就寝後1〜3時間) | 明け方の浅いレム睡眠時 |
脳の状態 | 脳の一部は深く眠り、一部は覚醒している状態 | 脳は覚醒に近い状態で、夢を見ている |
子どもの様子 | ・突然、激しく泣き叫ぶ<br>・ひどく怯え、興奮している<br>・親を認識できず、なだめられない<br>・目は見開いていることが多い | ・シクシクと泣いたり、うなされたりする<br>・起こすと目を覚まし、夢の内容を話せる<br>・慰めると落ち着く |
翌朝の記憶 | 本人は全く覚えていない | 怖い夢だったことを覚えている |
一番の大きな違いは、「翌朝、本人が覚えているかどうか」です。 夜驚症は、脳が深く眠っている時に起こるため、本人の記憶には残りません。親にとっては衝撃的な光景ですが、子ども自身は苦しんでいないのです。
なぜ、夜驚症は起こるの?
夜驚症は、脳の睡眠中枢がまだ未熟なために起こると考えられています。深い眠りから浅い眠りへ移行する際に、うまく切り替えができず、脳が混乱してしまうのです。
そのため、脳の発達が著しい3歳〜7歳頃の幼児期に最も多く見られます。 病気ではなく、基本的には成長と共に自然に治まっていく、一過性の生理現象です。
【夜驚症の引き金になりやすい要因】
- 日中の強い興奮やストレス(運動会、旅行、叱られた経験など)
- 生活リズムの乱れ、睡眠不足
- 発熱や体調不良
夜驚症が起きた時の「正しい対応」と「NG対応」
パニック状態の子どもを目の当たりにすると、親も動揺してしまいますが、冷静な対応が大切です。
【正しい対応】
- とにかく「見守る」に徹する: 夜驚症は、数分から長くても10分程度で自然に収まります。無理に起こしたり、なだめたりしようとせず、静かに見守りましょう。
- 安全を確保する: 興奮してベッドから落ちたり、壁にぶつかったりしないように、周囲の危険なものを取り除き、怪我をしないようにだけ注意してあげてください。
- 翌朝は、普段通りに接する: 本人は何も覚えていないので、わざわざ「昨日の夜、大変だったんだよ」などと伝える必要はありません。不安にさせるだけなので、何もなかったかのように接しましょう。
【NG対応】
- 無理やり起こそうとする: 脳が混乱しているため、無理に起こそうとすると、かえって興奮が強まり、パニックが長引くことがあります。
- 体を強く揺さぶる: 危険ですし、効果はありません。
- 大声で叱る: 子どもの不安を煽るだけで、何の解決にもなりません。
まとめ:夜驚症は「成長の証」。焦らず、どっしりと見守ろう
夜驚症は、親にとっては非常に心配で、衝撃的な出来事です。しかし、それは病気ではなく、子どもの脳が一生懸命成長している証拠なのです。
「これは、脳の成長過程で起こる自然なことなんだ」
そう理解するだけで、親の心は少し軽くなるはずです。症状が頻繁であったり、あまりに激しくて日常生活に支障が出たりする場合は、小児科や児童精神科に相談することも一つの選択肢です。
しかし、ほとんどの場合は、成長と共に自然と消えていきます。焦らず、慌てず、どっしりとした気持ちで、お子さんの成長を見守ってあげてください。