夜中の絶叫、話が通じない…それ、ただの悪夢じゃないかもしれません

眠っていたはずの子どもが、突然、目を見開いて起き上がり、何かにおびえるように、激しく泣き叫ぶ…。声をかけても、抱きしめても、パニック状態は収まらない。しかし、翌朝、本人に聞いても、全く覚えていない…。そんな、不可解で、恐ろしい経験はありませんか?それは、ただの「悪夢」ではなく、**「夜驚症(やきょうしょう)」**という、睡眠障害の一種かもしれません。

こんにちは、ママナースのさとみです。夜驚症は、親にとって、非常にショッキングな出来事ですが、その正体と、正しい対応を知っていれば、慌てずに対処することができます。

この記事では、「夜驚症」と「悪夢」の決定的な違いと、それぞれの原因、そして親が取るべき正しい対応について、解説します。


「夜驚症」と「悪夢」の、決定的な違い

夜中に泣き叫ぶ、という点では似ていますが、この二つは、全く異なるメカニズムで起こります。

夜驚症(睡眠時驚愕症)

  • 起こる時間帯: 眠り始めてから、最初の3時間以内。深いノンレム睡眠の時に起こる。
  • 症状: 突然起き上がり、叫び声をあげる。強い恐怖やパニック状態を示す。目は開いているが、意識は朦朧としており、親の呼びかけには、ほとんど反応しない。発汗や、頻脈を伴うことも。
  • 本人の記憶: 翌朝、本人は、その出来事を全く覚えていないのが、最大の特徴。
  • 好発年齢: 3歳〜8歳頃の、幼児期・学童期に多い。

悪夢(夢中体験)

  • 起こる時間帯: 明け方近く。浅いレム睡眠(夢を見る睡眠)の時に起こる。
  • 症状: 怖い夢を見て、うなされたり、泣きながら目を覚ましたりする。目を覚ました後は、意識ははっきりしている。
  • 本人の記憶: 夢の内容を、断片的に、あるいは、はっきりと覚えている。「鬼に追いかけられた」など、夢の内容を話すことができる。
  • 好発年齢: どの年齢でも起こりうる。

なぜ起こるの?それぞれの原因

  • 夜驚症: 睡眠と覚醒の切り替えが、まだ未熟なために起こると考えられています。脳の一部は深い眠りにあるのに、体だけが覚醒してしまう、脳の混乱状態です。日中の強い興奮や、ストレス、疲れ、発熱などが、引き金になることがあります。
  • 悪夢: その日に経験した、不安な出来事や、怖いテレビ番組、絵本などが、夢の内容に反映されることが多いです。心の成長過程で、不安や葛藤を、夢の中で処理している、とも言われています。

親が取るべき、正しい対応

夜驚症か、悪夢かによって、親の対応は異なります。

夜驚症の場合:「そっと見守る」が、基本

  • 無理に起こさない、話しかけない: 意識が朦朧としているため、無理に刺激すると、かえって興奮を高めてしまいます。怪我をしないように、危険なものだけを遠ざけ、静かに、そばで見守りましょう。症状は、数分から、長くても10分程度で、自然に収まり、子どもは再び眠りに戻ります。
  • 翌朝、その話はしない: 本人に記憶はないので、わざわざ「昨日の夜、すごかったんだよ」などと話して、不安にさせる必要はありません。

悪夢の場合:「大丈夫だよ」と、安心させる

  • 優しく抱きしめ、安心させる: 目を覚ましたら、「大丈夫だよ、ママ(パパ)がそばにいるよ」「怖い夢だったね」と、優しく声をかけ、抱きしめてあげましょう。
  • 夢の内容を、否定しない: 「そんなの、いるわけないでしょ」と、夢の内容を否定せず、「そっか、怖かったね」と、その気持ちを受け止めてあげることが大切です。
  • 安心できるまで、そばにいる: 子どもが、再び安心して眠りにつくまで、そばにいてあげたり、部屋を少し明るくしてあげたりしましょう。

まとめ:どちらも、成長過程の一コマです

夜驚症も、悪夢も、基本的には、子どもの脳が発達していく過程で見られる、一時的な現象です。ほとんどの場合、成長と共に、自然に頻度は減っていきます。

親として、最も大切なのは、慌てず、冷静に、その違いを見極め、適切な対応をしてあげることです。

ただし、頻度が非常に高い場合や、日中の生活に支障が出ている場合、子ども自身が、ひどく思い悩んでいるような場合は、小児科や、児童精神科などの専門機関に相談することも、選択肢の一つです。