その一口が、果てしなく遠い…。「食べない子」に悩むあなたへ
栄養バランスを考え、時間をかけて作ったごはん。
「わぁ、おいしそう!」と喜んでくれるはずが、一口も食べずに「いらない!」と首を横に振る我が子。
ベーコンだけ器用に取り出して、ピーマンは全部残す。
白いごはんしか、食べてくれない。
そんな毎日が続くと、子どもの健康が心配になるのはもちろん、ママやパパの心もポッキリ折れてしまいますよね。
「私の料理がおいしくないのかな…」
「このままずっと偏食だったらどうしよう…」
食卓が、笑顔の場所ではなく、親子の戦いの場になっていませんか?
こんにちは!3人の娘(うち2人は強烈な偏食でした!)を育て上げた、現役ママナースの皐月です。
お気持ち、痛いほど分かります。あの、作ったごはんを無言で下げるときの、虚しさと怒りと心配が入り混じった感情は、経験した人にしか分かりません。
だからこそ、今回はあなたの心を救うことを第一に、子どもの「食べない」には理由があること、そして食卓を戦場にしないための具体的なコミュニケーション術をお伝えします。
この記事を読めば、きっとあなたの食卓に、笑顔が戻ってくるはずです。
なぜ?うちの子だけ?「食べない」に隠された子どもの本音
まず知ってほしいのは、子どもの好き嫌いは、単なる「わがまま」ではないことが多い、ということです。そこには、子どもなりの理由があります。
- 理由1:味覚が超敏感
- 大人の約3倍も味を感じる細胞(味蕾)を持つと言われる子どもたち。特に野菜の「苦味」や「酸味」は、本能的に「毒」や「腐敗物」と認識してしまうため、受け付けないのはある意味、正常な防衛本能なのです。
- 理由2:見慣れないものへの警戒心(フードネオフォビア)
- 2〜5歳頃にピークを迎える、初めて見る食べ物への警戒心。「これ、本当に安全?」と、本能的に食べるのをためらいます。
- 理由3:食感や見た目が苦手
- 特定の食感(ドロドロ、パサパサなど)が苦手だったり、色が嫌だったり。感覚が過敏な子に多い理由です。
- 理由4:過去の嫌な経験
- 「無理やり食べさせられた」「食べたら気持ち悪くなった」などの経験が、トラウマになっていることもあります。
これらの理由を知るだけで、「仕方ない、そういう時期なんだ」と、少しだけ肩の力が抜けませんか?
イライラが消える!親の心を軽くする3つのマインドセット
子どもの理由が分かっても、親の悩みは尽きません。次に、あなたの心を軽くするための考え方のコツです。
1.「食べさせる」のを、やめる
衝撃的かもしれませんが、これが一番の近道です。「食べさせなきゃ!」というプレッシャーが、食卓の雰囲気を悪くし、子どもを頑なにさせます。
親の仕事は、栄養バランスの取れた食事を「用意する」ことまで。
そこから先、「何を」「どれだけ」食べるかを決めるのは、子ども自身です。
この「課題の分離」ができると、驚くほど心が楽になります。
2.1週間単位で栄養を考える
「今日の食事で、完璧な栄養を!」と考えると、苦しくなります。
今日は炭水化物しか食べなくても、昨日お肉を食べたならOK。明後日フルーツを食べてくれればOK。そんな風に、1週間くらいの長いスパンで、ざっくり栄養が摂れていれば良い、と考えましょう。
3.「食べないこと」を話題にしない
「なんで食べないの?」「一口だけでいいから!」
これらの言葉は、子どもへのプレッシャーになるだけです。食卓では、食べ物の話よりも、「今日、保育園で何したの?」といった楽しい会話を心がけましょう。親が美味しそうに食べている姿を見せるのが、何よりの食育です。
【実践編】「食べてみようかな?」を引き出す7つの仕掛け
考え方を変えた上で、子どもの「食べてみたい」気持ちを自然に引き出す、具体的な仕掛けをご紹介します。
- 一緒に作る・育てる
- レタスをちぎる、ミニトマトを洗うなど、簡単な調理に参加させるだけで、食材への親近感が湧きます。家庭菜園で一緒に野菜を育て、収穫する体験は、何よりの効果があります。
- 見た目を楽しくアレンジ
- 型抜きで野菜を星やハートの形にしたり、ごはんでキャラクターの顔を作ったり。「可愛い!」「面白い!」が、食べるきっかけになります。
- ”かくれんぼ”レシピ
- 苦手な野菜を細かく刻んで、ハンバーグやカレー、パンケーキなどに混ぜ込んでしまうのも一つの手。バレずに栄養が摂れます。
- 食卓をイベントにする
- 「今日はお子様ランチの日だよ!」と旗を立ててみたり、ベランダでピクニック気分で食べてみたり。非日常感が、食を進ませます。
- 少量だけ、お皿に乗せてみる
- 「食べなさい」とは言わず、苦手なものを少量だけ、お皿の隅に置いておきます。興味が出れば、触ったり、匂いを嗅いだりするかもしれません。その小さな進歩を見逃さず、「触れたね!」と褒めてあげましょう。
- 憧れの力を借りる
- 好きなキャラクターや、お兄さん・お姉さんが「これ、おいしい!」と食べている姿を見せるのも効果的です。
- 【栄養の置き換え辞典】を持つ
- ピーマン(ビタミンC)がダメなら、ブロッコリーやじゃがいもで。ほうれん草(鉄分)がダメなら、赤身肉やレバーで。一つの食材に固執せず、「この栄養素は、他のこれでも摂れるな」と、柔軟に考えましょう。
まとめ:食卓は、親子の絆を深める場所
子どもの好き嫌いは、一朝一夕にはなくなりません。
でも、食卓が「戦いの場」から「楽しいコミュニケーションの場」に変われば、親のストレスは大きく減り、その安心感が子どもにも伝わります。
「食べない」という事実だけを見るのではなく、その裏にある子どもの成長や気持ちに寄り添ってあげること。
完璧な食事よりも、親子の笑顔が、子どもの心と体の何よりの栄養になる。私は、そう信じています。