血液検査で陽性=食べてはいけない、は間違い?

子どものアレルギーが疑われる時、多くの親がまず考えるのが「血液検査」ではないでしょうか。しかし、血液検査の結果だけで「〇〇アレルギーだから、除去しなければならない」と判断するのは、実は早計かもしれません。

血液検査(特異的IgE抗体検査)は、あくまで「アレルギーの原因となりうる物質(アレルゲン)に感作されているかどうか」を調べるものであり、「検査で陽性=食べたら必ず症状が出る」というわけではないのです。

不必要な食物除去は、子どもの成長に必要な栄養を妨げるだけでなく、食の楽しみを奪い、QOL(生活の質)を低下させてしまう可能性もあります。

この記事では、看護師であり、二児の母でもある私が、食物アレルギーの正しい診断に不可欠な「食物経口負荷試験」の重要性と、検査を受ける際の注意点について、専門的な視点から分かりやすく解説します。

なぜ血液検査だけでは不十分なのか?

血液検査は、特定のアレルゲンに対するIgE抗体の量を測定するもので、数値が高いほどアレルギー反応を起こす可能性が高いことを示唆します。しかし、これには限界があります。

  • 偽陽性の可能性: 実際に食べても症状が出ないのに、検査で陽性(偽陽性)となることがあります。
  • 症状の程度は予測できない: 検査の数値と、実際に食べた時に現れる症状の重症度は、必ずしも相関しません。
  • 耐性獲得の判断ができない: アレルギーは成長とともに改善(耐性獲得)することがありますが、血液検査の数値だけでは、安全に食べられるようになったかどうかを判断できません。

食物アレルギー診断のゴールドスタンダード「食物経口負荷試験」

そこで重要になるのが、「食物経口負荷試験」です。これは、アレルギーが疑われる食物を、医師の厳密な管理のもとで、ごく少量から段階的に摂取し、症状の有無を確認する検査です。

食物経口負荷試験の目的

  1. 確定診断: 本当にその食物がアレルギー症状の原因となっているのかを確定します。
  2. 安全な摂取量の決定: 症状が出ずに安全に食べられる量を明らかにします。
  3. 耐性獲得の確認: アレルギーが治ったかどうかを判断し、不必要な除去食を解除するきっかけになります。

この検査によって、漠然とした不安から解放され、「この量までなら食べられる」という具体的な目標を持つことができるのです。

検査を受ける前に知っておきたいこと

食物経口負荷試験は、アナフィラキシーなどの重篤な症状を誘発するリスクも伴うため、必ずアレルギー専門医のいる、緊急時対応が可能な医療機関で受ける必要があります。

また、子どもの体調が良い時に行うのが原則です。風邪をひいていたり、湿疹が悪化していたりする時は、正確な判断ができないため、検査を延期することもあります。

まとめ|正しい診断が、子どもの食の世界を広げる

食物アレルギーの診断と管理において、血液検査は有用なツールの一つですが、それだけで全てを判断することはできません。食物経口負荷試験は、リスクを伴う検査ではありますが、不必要な食物除去を避け、子どもの健やかな成長と豊かな食生活を守るために、非常に重要な役割を果たします。

もし、お子さんの食物アレルギーについて悩んでいるなら、自己判断で除去食を始める前に、まずはアレルギー専門医に相談し、食物経口負荷試験を含めた適切な診断を受けることを強くお勧めします。

正しい診断と指導のもと、親子で安心して食事を楽しめる日が来ることを、心から願っています。