「朝、起きられない…」それは、ただの怠けじゃないかもしれません
「また朝だ…起きられない…」
「頭が痛い…」
「学校に行きたくない…」
思春期の子どもが、朝、なかなか起きられず、学校を休みがちになる。そんな時、「怠けているだけじゃないの?」「もっと頑張りなさい!」と、つい叱ってしまっていませんか?
何を隠そう、現役看護師として働きながら3人の娘を育ててきた私も、子どもの「朝起きられない」という訴えに、最初は戸惑い、どう対応すべきか悩んだ経験があります。
「もしかして、起立性調節障害(OD)…?」
そんな風に、子どもの体調不良の背景に、隠れた病気が潜んでいるのではないかと心配しているママ・パパも少なくないはずです。
この記事では、ママナースである私が、起立性調節障害(OD)とは何か、その主な症状と原因、そして、朝起きられない思春期の子どもの心と体に寄り添うための具体的なアプローチを、私の実体験を交えながら分かりやすく解説します。
もう、一人で抱え込まないで。この記事を読めば、お子さんの「朝起きられない」というサインの背景にある気持ちを理解し、適切なサポートができるようになるはずです。
起立性調節障害(OD)とは?思春期に多い自律神経の病気
起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)は、自律神経のバランスが崩れることで、立ち上がった時に脳への血流が一時的に低下し、様々な症状を引き起こす病気です。特に、思春期の子どもに多く見られます。
主な症状
- 朝起きられない: 最も特徴的な症状です。午前中に体調が悪く、午後になると回復することが多いです。
- 立ちくらみ・めまい: 立ち上がった時に、目の前が真っ暗になったり、ふらついたりします。
- 頭痛・腹痛: 慢性的な頭痛や腹痛を訴えることがあります。
- 倦怠感・疲労感: 体がだるく、疲れやすいと感じます。
- 動悸・息切れ: 少し体を動かしただけで、心臓がドキドキしたり、息が切れたりします。
- 食欲不振・吐き気: 朝食が食べられなかったり、吐き気を催したりすることがあります。
- 集中力低下: 授業中に集中できなかったり、忘れっぽくなったりします。
これらの症状は、個人差が大きく、日によっても変動します。また、精神的なストレスによって症状が悪化することもあります。
原因
ODの原因は、自律神経の乱れです。自律神経は、心臓の動きや血圧、消化、体温調節など、体の様々な機能をコントロールしています。思春期は、体の成長が著しく、ホルモンバランスが大きく変化する時期であるため、自律神経のバランスが崩れやすいと言われています。
また、精神的なストレス、睡眠不足、運動不足なども、ODの発症や悪化に関与すると考えられています。
「怠け」じゃない!子どもの心と体に寄り添うアプローチ
ODは、見た目には分かりにくい病気のため、「怠けている」と誤解されがちです。しかし、子どもたちは本当に辛い思いをしています。親が子どもの苦しみを理解し、寄り添うことが何よりも大切です。
1. まずは子どもの訴えを信じる
「朝起きられない」「頭が痛い」という子どもの訴えを、頭ごなしに否定せず、まずは信じてあげましょう。「辛いんだね」「しんどいんだね」と、子どもの気持ちに共感する言葉をかけてあげてください。
2. 専門医を受診する
ODの症状が疑われる場合は、小児科や心療内科、神経内科など、ODの診療経験がある専門医を受診しましょう。早期に診断を受け、適切な治療を開始することが大切です。
3. 生活習慣の改善
- 規則正しい生活: 早寝早起きを心がけ、規則正しい生活リズムを整えましょう。特に、朝は決まった時間に起こし、日光を浴びることで、体内時計をリセットできます。
- 適度な運動: 無理のない範囲で、適度な運動を取り入れましょう。ウォーキングやストレッチなど、軽い運動から始めるのがおすすめです。
- バランスの取れた食事: 栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。特に、鉄分やタンパク質、ビタミンB群などを積極的に摂取しましょう。
- 水分補給: 脱水はODの症状を悪化させる可能性があります。こまめに水分補給をしましょう。
4. 学校との連携
学校の先生にODについて説明し、理解と協力を求めましょう。遅刻や欠席への配慮、保健室の利用、授業中の休憩など、子どもが学校生活を送りやすくなるよう、学校と連携してサポート体制を整えましょう。
5. 精神的なサポート
ODの子どもたちは、体調不良だけでなく、学校に行けないことへの焦りや、周りからの理解が得られないことへの孤独感など、精神的な負担も抱えています。親が子どもの気持ちに寄り添い、安心できる居場所を作ってあげることが大切です。
- 子どもの話を聞く: 子どもの気持ちを否定せず、じっくりと話を聞いてあげましょう。無理に聞き出そうとせず、子どもが話したい時に話せる雰囲気を作ることが大切です。
- 自己肯定感を高める: 学校に行けなくても、家でできることや、得意なことを見つけて、たくさん褒めてあげましょう。子どもの自己肯定感を高めることが、回復への第一歩となります。
ママナースからのアドバイス:焦らず、ゆっくり、子どものペースで
起立性調節障害は、すぐに治る病気ではありません。焦らず、ゆっくりと、子どものペースに合わせて治療を進めることが大切です。
親が焦ったり、イライラしたりすると、子どもはさらにプレッシャーを感じてしまいます。まずは、親自身がODについて正しく理解し、子どもを信じて見守ってあげましょう。
あなたの愛情とサポートが、お子さんの回復への何よりの力になります。一人で抱え込まず、必要であれば専門家(小児科医、心理士など)に相談することも検討してくださいね。