なんとか、安全な場所まで避難できた…。
激しい揺れや、不安な避難経路を乗り越え、ひとまずホッと胸をなでおろしているかもしれません。本当に、お疲れ様です。
でも、親の正念場は、実はここから始まります。大勢の人が密集し、衛生環境が悪化しやすい避難所では、「感染症」や「持病の悪化」という、**“静かなる第二の災害”**が、子どもたちの体を脅かします。
こんにちは!3姉妹の母で、現役看護師の皐月です。
災害関連死の多くは、この避難生活での健康問題が原因です。この記事は、防災シリーズの【衛生・医療編】。看護師としての知識を総動員し、避難所で子どもの命と健康を守り抜くための、具体的で実践的な医療・衛生マニュアルをお届けします。
この記事でわかること
- 避難所で最も恐ろしい「感染症」から子どもを守る3つの鉄則
- 限られた物資でできる!ママナース流「ミニ救急セット」活用術
- 【持病のある子】避難所で絶対にやるべきこと
- 見逃さないで!子どもの「心のSOSサイン」とそのケア方法
鉄則1:感染症から子どもを守る!避難所の衛生管理術
結論:避難所での健康管理は、「菌を体内に入れない、増やさない、排出する」が基本です。
体力も免疫力も低い子どもは、感染症の最大のリスクに晒されています。以下の3つを徹底しましょう。
1. こまめな「手指衛生」
水が貴重な状況では、アルコール消毒が基本になります。食事の前、トイレの後、外から戻った時には、必ず親子で手指を消毒する習慣を。アルコールがない場合は、除菌ウェットティッシュでも代用できます。
2. 口腔ケアは「命のケア」
前の記事でもお伝えしましたが、口の中が不潔になると、細菌が肺に入り「誤嚥性肺炎」を引き起こすリスクが激増します。水がなくても、歯磨きシートで拭ったり、少量の水でうがいをしたりするだけでも効果は絶大です。
3. 「トイレ」は最大の感染源と心得る
避難所のトイレは、ノロウイルスなどの感染源になりやすい場所。用を足した後は、石鹸がなくても、流水でしっかり手を洗うか、アルコール消毒を徹底しましょう。
鉄則2:限られた物資で乗り切る!応急処置の基本
病院にすぐ行けない状況に備え、基本的な応急処置を知っておくだけで、親の安心感は全く違います。
【ケース①】すり傷・切り傷
旧常識:「まず消毒液!」は間違い!
新常識:「まず洗浄!」が正解です。
- 洗浄: ペットボトルの水(ミネラルウォーターなど)で、傷口の泥や砂をしっかり洗い流します。
- 止血: 清潔なガーゼやハンカチで、傷口を5分ほど強く押さえます。
- 保護: 絆創膏などで傷を覆い、乾燥させないようにします(湿潤療法)。
消毒液は、傷を治そうとする良い細胞まで殺してしまうため、今は推奨されていません。まず「きれいに洗う」ことを覚えておいてください。
【ケース②】やけど
とにかく「冷やす」!これに尽きます。
服の上から熱湯をかぶった場合は、無理に脱がさず、服の上から水道水やペットボトルの水で、最低でも15分は冷やし続けてください。水ぶくれは、絶対に潰してはダメ!そこから細菌が入り込みます。
【ケース③】発熱
水分補給が最優先。 ぐったりして水分も摂れないようなら、持参した子ども用の解熱剤を使いましょう。冷やすなら、首の付け根、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている場所を冷やすと効果的です。
鉄則3:持病のある子・薬が必要な子のために親がすべきこと
結論:避難したら、まず一番に、医療救護所にいる看護師や保健師に「この子には持病があります」と伝えること。
普段飲んでいる薬は、絶対に切らしてはいけません。
- 喘息: 吸入器や薬は、肌身離さず持ち歩く。ホコリっぽい避難所では発作が起きやすいことを念頭に。
- アトピー: 汗や汚れで悪化しやすい。濡れタオルで体をこまめに拭き、保湿剤を欠かさない。
- 食物アレルギー: 炊き出しなどでは、アレルギー物質が混入する危険性が高いです。「この子は〇〇アレルギーです」という札を見える場所につけておくのも有効。予備のエピペンは必ず携帯しましょう。
「迷惑かも…」なんて遠慮は無用です。子どもの命に関わる情報は、ためらわずに伝える。それが親の責任です。
鉄則4:見逃さないで!子どもの「心のSOSサイン」
災害は、子どもの心にも大きな傷を残します。以下のような変化は、子どもがストレスを抱えているサインかもしれません。
- □ 赤ちゃん返りをする(おねしょ、指しゃぶりなど)
- □ ささいなことでかんしゃくを起こす
- □ 一人になるのを怖がり、親にべったりになる
- □ 夜、悪夢にうなされる
- □ 災害の絵ばかり描く、またはその話を全くしなくなる
こんな時、親ができるのは**「徹底的に安心させてあげること」**です。「大丈夫だよ」と何度も抱きしめ、話をじっくり聞いてあげる。「怖い夢見たんだね。でも、ママがずっとそばにいるからね」と、子どもの気持ちを言葉にして、共感してあげましょう。
まとめ:避難所では、あなたが子どもの「主治医」であり「心の安全基地」
災害時、医療スタッフは限られた人数で、多くの重症者に対応しなければなりません。そんな時、我が子の小さな変化に気づき、基本的なケアができるのは、親であるあなただけです。
今回お伝えした知識は、あなたと子どもを守るための「お守り」です。どうか、このマニュアルを頭の片隅に置いて、いざという時に、冷静で力強い「ママナース」になってあげてくださいね。
