信頼関係

「叱る」のをやめたら、子どもの「育つ力」が見えてきた話

「なんで、できないの!」毎日、そう叫んでは、後悔していませんか?

「早くしなさい!」
「また、こぼして!」
「何度言ったら、わかるの!」

毎日、毎日、同じことを、同じように、叱りつけてしまう。
そして、子どもの泣き顔を見て、ハッと我に返り、
「ああ、また、怒鳴ってしまった…」
と、眠る子どもの寝顔に「ごめんね」と謝る、自己嫌悪の夜。

かつての私は、まさに、この負のループの、ど真ん中にいました。
「子どものために」と信じて、必死に「正しいこと」を教え込もうとすればするほど、子どもの瞳から、輝きが失われていく。

そんな、出口の見えないトンネルの中で、私は、ある日、一つの決意をしました。
それは、「叱る」という、親にとって一番簡単な行為を、一度、手放してみよう、という、実験でした。

今日は、その実験の先に、私が見た、驚くべき子どもの変化と、私自身の心の変化について、お話しさせてください。

なぜ、私たちは、こんなにも「叱ってしまう」のか?

その実験を始めるにあたり、私はまず、自分が「なぜ、叱ってしまうのか」を、見つめ直しました。
その答えは、耳の痛いものでした。

私が叱る時。その根底にあったのは、
「ちゃんとした子に育てなければ」という、親としての“不安”
「私の言う通りに動いてほしい」という、親としての“焦り”
「母親とは、こうあるべきだ」という、世間体という名の“理想像”

そう。私が叱っていたのは、子どものため、ではありませんでした。
私自身の、都合のためだったのです。
この事実に気づいた時、私は、愕然としました。

「叱る」ことで、私たちが、子どもから奪っている、本当に大切なもの

では、「叱る」という行為は、子どもから、何を奪っていくのでしょうか。

1. 挑戦する「意欲」

「どうせ、うまくできなくても、また怒られる」
そう感じた子どもは、失敗を恐れ、新しいことに、挑戦しなくなります。
「言われたことだけ、やっていればいい」という、指示待ち人間に、親自身が、育ててしまっているのです。

2. 自分を信じる「自己肯定感」

「僕は、ダメな子だ」
「私は、ママを困らせる、悪い子だ」
叱られ続けた子どもは、そのネガティブなメッセージを、内面化し、自分に自信が持てなくなります。

3. 親への「信頼」

「ママは、僕の気持ちなんて、わかってくれない」
自分の気持ちや言い分を、聞いてもらえない経験を繰り返すことで、子どもは、親に、本音を話さなくなります。
親子の間に、冷たく、厚い壁が、作られていくのです。

「叱る」をやめたら、見えてきた、子どもの“すごい力”

「叱る」のをやめる、と決めた当初、私は、不安でいっぱいでした。
「子どもが、わがまま放題になるんじゃないか?」
「何も、できない子になってしまうんじゃないか?」

でも、現実は、全くの逆でした。
私が、叱る代わりに、子どもの行動を、ただ、じっと**「観察」し、そして「待つ」**ようにした結果、驚くべき光景が、目の前に、広がり始めたのです。

  • 自分で、考え、工夫し始めた
    →私が、答えを言わないから、子どもは、自分で、解決策を、見つけようとし始めました。おもちゃの片付け方、友達との仲直りの仕方…。その、小さな頭で、一生懸命に考える姿がありました。

  • 失敗を、恐れなくなった
    →失敗しても、怒られない、という安心感。それが、「もう一回、やってみよう!」という、次への挑戦に、繋がっていきました。失敗は「終わり」ではなく、「学び」のプロセスに、変わったのです。

  • 本音を、話してくれるようになった
    →「ママは、僕の味方だ」という、絶対的な信頼感。それが、子どもの心を、開かせました。「今日、こんな嫌なことがあったんだ」と、自分の弱さや、悔しさを、素直に、打ち明けてくれるようになったのです。

「叱らない」は「放任」じゃない。親が本当に、すべきこと

もちろん、「叱らない」ということは、「何をしてもいいよ」という「放任」とは、全く違います。
命の危険がある行為や、人を傷つける行為は、断固として、止めなければなりません。

叱る代わりに、親がすべきなのは、「教える」のではなく、子どもが、自ら**「気づく」ための、サポート**です。

  • 「どうして、こうなったと思う?」と、原因を考えさせる“質問”をする。
  • 「悔しかったね」「難しかったね」と、子どもの気持ちに“共感”する。
  • 子どもが、自分でやりやすいように、仕組みや“環境を整える”。

「叱る」を手放す勇気

「叱る」という、親にとって、一番手っ取り早く、簡単な(でも、効果のない)方法を、手放すのには、勇気がいります。

でも、その勇気が、あなたのお子さんが、本来、生まれながらに持っている、「自分で育つ力」を、何倍にも、何十倍にも、引き出してくれるとしたら…?

子どもを、信じて、待つこと。
その先には、親が、想像する以上に、たくましく、そして、優しい、我が子の成長した姿が、待っているはずです。

【信頼構築編】思春期の子どもとの絆を深める。ママナースが実践する信頼関係の築き方

その壁、壊すんじゃなくて「扉」に変えませんか?

これまで2回にわたり、思春期の反抗期と向き合うための「親の心構え」と「具体的なコミュニケーション術」についてお話ししてきました。

心構えを学び、話の聞き方を変えてみる。それだけでも、子どもの態度は少しずつ軟化してきたかもしれません。でも、どこかまだ、親子の間に見えない壁があるように感じる…。そんな方もいるのではないでしょうか。

その壁、無理に壊そうとしなくていいんです。その壁に、子どもがいつでも開けられる**「信頼の扉」**をつけてあげる。そんなイメージを持ってみませんか?

こんにちは!高校生から小学1年生まで、3人の娘を育てる現役ママナースの皐月です。私自身、思春期の娘たちとの関わりの中で、何度も壁にぶつかり、試行錯誤を繰り返してきました。看護師として、患者さんとの信頼関係を築くことの重要性を日々感じているからこそ、子育てにおいても「信頼」が何よりも大切だと痛感しています。

最終回となる今回は、「信頼構築編」。親子のコミュニケーションの先にある、もっと深い「絆」を育むための具体的なヒントを、ママナースならではの視点も交えてお伝えします。子どもがいつかこの家を巣立つ日まで、そして巣立った後も続く、あたたかい親子関係の土台を一緒に作っていきましょう。

この記事でわかること

  • 「信頼」は積み重ね。日々の小さな習慣が絆を育む
  • ママナース直伝!心と体の変化に寄り添うサポート
  • まとめ:最高の「お守り」は、親子の信頼関係

<h2>1. 「信頼」は積み重ね。日々の小さな習慣が絆を育む</h2>

信頼関係は、何か特別な出来事によって一気に築かれるものではありません。毎日の何気ないやり取り、親の小さな行動の積み重ねによって、ゆっくりと育まれていくものです。

【結論】思春期の子どもとの信頼関係は、日々の小さな習慣の積み重ねによって育まれます。親が率先して「ありがとう」「ごめんね」を伝え、子どもの「好き」を否定せず尊重し、小さな約束でも必ず守ることが重要です。これらの行動は、子どもに「自分は尊重されている」「親は自分を信頼してくれている」という安心感を与え、親子の絆を深める土台となります。

<h3>①「ありがとう」と「ごめんね」を親から伝える</h3>
「ゴミ出ししてくれて、ありがとう。助かったよ」
「さっきは感情的に怒ってごめんね。ママも少し言い過ぎた」

当たり前のことですが、意外とできていない親御さんも多いのではないでしょうか。親がまず、感謝と謝罪を素直に言葉にすることで、子どもは「自分は尊重されている」と感じます。そして、子ども自身も、自分の非を認めて謝ることができるようになります。親は子どもの一番身近なロールモデルなのです。

<h3>② 子どもの「好き」を否定しない、バカにしない</h3>
親の世代からすると、理解できないような音楽、ゲーム、アニメ…。それが、今の子どもたちの「世界」です。

「そんなの、何が面白いの?」
「くだらないことばっかりやってないで、勉強しなさい」

この一言が、子どもの心をどれだけ深く傷つけるか、想像してみてください。自分の「好き」を否定されることは、自分自身の人格を否定されるのと同じくらいつらいことです。

まずは「へぇ、そういうのが流行ってるんだ。どんなところが面白いの?」と、興味を持って尋ねてみることから始めましょう。子どもの世界を共有することは、最高の信頼関係構築に繋がります。

<h3>③ 小さな約束でも、必ず守る</h3>
「今度、あの映画に連れて行ってあげる」
「週末、一緒に買い物に行こう」

親にとっては些細な約束でも、子どもは驚くほどよく覚えています。そして、それが守られなかった時、静かに、でも確実に、親への信頼を失っていきます。

もし守れない状況になったら、ごまかさずに、正直に謝って、代わりの案を提案すること。「どうせ無理だろう」と諦めさせるのではなく、「親はちゃんと向き合ってくれる」という安心感を与えることが大切です。

<h2>2. ママナース直伝!心と体の変化に寄り添うサポート</h2>

看護師として、そして母として、思春期の子どもの心と体のケアは、信頼関係を築く上で欠かせない要素だと感じています。少し専門的な視点になりますが、ぜひ知っておいてください。

【結論】思春期の子どもとの信頼関係を深めるには、心と体の変化に寄り添うサポートが不可欠です。体の変化(第二次性徴)については、親が「普通のこと」だと伝え、安心させることが重要です。心の変化に対しては、プライバシーを尊重しつつ、親以外にも相談できる「逃げ道」を用意することで、子どもは精神的に追い詰められずに済み、親への信頼感を高めます。

<h3>体の変化:「普通のこと」だと伝え、安心させる</h3>
女の子なら生理、男の子なら声変わりや精通。第二次性徴による体の変化は、子どもにとって大きな戸惑いや羞恥心を伴います。

特に、他の子と比べて自分の成長が早い、あるいは遅いと感じた時、深刻な悩みを抱えてしまうことも少なくありません。

そんな時、親、特に同性の親から**「それは大人になるために、みんなが通る道だよ」「お母さん(お父さん)の時もこうだったよ」**と、さらっと伝えてあげるだけで、子どもの不安は大きく和らぎます。医学的な知識を語るのではなく、あくまで「経験談」として伝えるのがポイントです。

<h3>心の変化:プライバシーを守りながら、逃げ道を用意する</h3>
思春期は、心が非常にデリケートになる時期。友人関係の悩み、恋愛、将来への不安…。親に言えない、でも誰かに聞いてほしい。そんな複雑な気持ちを抱えています。

  • プライバシーの尊重: 日記やスマホを盗み見るのは絶対にNGです。子ども部屋のドアは、必ずノックする。これを徹底するだけでも、「親は自分を信頼してくれている」というメッセージになります。
  • 相談先の選択肢を示す: 「もし、お父さんやお母さんに言いにくいことがあったら、学校の保健室の先生や、信頼できる〇〇さん(親戚など)に話してみるのもいいんだよ」と、逃げ道を用意してあげましょう。親だけが相談相手ではないと伝えることで、子どもは精神的に追い詰められにくくなります。

<h2>まとめ:最高の「お守り」は、親子の信頼関係</h2>

思春期という多感な時期を乗り越え、これから子どもたちは、もっと広い世界へと羽ばたいていきます。勉強やスキルも大切ですが、子どもが人生の困難に立ち向かう時、一番の力になるのは、「何があっても、自分の味方でいてくれる人がいる」という安心感です。

親子の間に築かれた確かな信頼関係は、子どもにとって一生のお守りになります。

今回で、「思春期の子どもとの向き合い方」シリーズは終わりです。3つの記事を通して、少しでも皆さんの心が軽くなっていたら、これほど嬉しいことはありません。

子育ては、本当に山あり谷あり。でも、その一つ一つの悩みが、親子の絆を深めるきっかけになるはずです。これからも、一緒に悩み、一緒に学んでいきましょうね!