小さな背中に、体よりも大きなランドセル。昨日まで手をつないで歩いていた我が子が、一人で「いってきます!」と歩き出す後ろ姿…。
「ちゃんと、一人で学校までたどり着けるかな…」
「車に轢かれたりしないかな…」
「不審者に声をかけられたらどうしよう…」
期待と同時に、胸が張り裂けそうなほどの不安に襲われる。それは、子を思う親として、ごく自然な感情です。
その心配、痛いほどわかります。私も長女の時は、最初の1週間、こっそり後をつけてしまったほどです。角を曲がるたびにヒヤヒヤし、無事に校門をくぐるのを見届けて、ようやく息をつく。そんな毎日でした。
でも、親が不安な顔をしていると、その気持ちは子どもに伝染してしまいます。子どもの「一人でできた!」という自信と成長の機会を、親の不安で奪ってはいけません。
この記事では、心配性だった私が、3人の子育てを通して確立した、
- 親の心を落ち着かせるための、事前の「安心材料」集め
- 子どもが自分で自分を守れるようになる「7つの約束」
- 過干渉にならない、絶妙な「見守り方」のコツ
を、具体的にお伝えします。
この記事を読めば、漠然とした不安が、具体的な対策に変わります。そして、子どもの背中を、自信と笑顔で送り出してあげられるようになりますよ。
不安の正体は「知らない」こと。まずは親が安心材料を集めよう
親の不安の多くは、「通学路にどんな危険があるか知らない」「子どもが危険を認識しているかわからない」という、未知への恐怖から来ています。
まずは、親である私たちが、安心するための材料を集めましょう。
1. 実際に、子どもと一緒に何度も歩いてみる
入学前の休日に、必ず子どもと一緒に、家から学校までの道を何度も歩いてみてください。その際、ただ歩くだけでなく、**「危険箇所」**を親子で確認するのが目的です。
- 「この交差点は、車が急に出てくるから、右・左・右をしっかり見てから渡ろうね」
- 「この駐車場は、見通しが悪いから、必ず止まって確認しよう」
- 「この道は狭いから、車が来たら壁際にピタッとくっつこうね」
このように、具体的に、何がどう危ないのかを教えます。
2. 「こども110番の家」をチェックする
通学路にある「こども110番の家」のプレートがどこにあるか、親子で確認しながら歩きましょう。「もし、怖い人に追いかけられたり、困ったことがあったりしたら、このマークのお家に駆け込むんだよ」と具体的に教えることで、子どもにとっての「いざという時の避難場所」をインプットできます。
子どもが自分を守る!命を守る「7つの約束」
親が24時間見守ることはできません。子ども自身が、危険を察知し、回避する力を身につけることが何よりも大切です。我が家で徹底していた「7つの約束」をご紹介します。
- 知らない人には、絶対についていかない。
- 「いかのおすし」を覚える。(いかない、のらない、おおごえをだす、すぐにげる、しらせる)
- こわいと思ったら、大声で叫んで、防犯ブザーを鳴らす。(ランドセルのすぐ手が届く場所につける)
- 「こども110番の家」に逃げ込む。
- 寄り道しないで、まっすぐお家に帰る。
- 「ただいま!」は、お家に入る前に言う。(一人暮らしだと思われないため)
- 何かあったら、どんな小さなことでも、お父さんお母さんに話す。
これらの約束は、一度言っただけでは忘れてしまいます。定期的に、クイズ形式にするなどして、親子で繰り返し確認することが重要です。
過干渉はNG!親の「見守り方」3つのコツ
心配のあまり、いつまでも付き添ったり、GPSで常に監視したり…。過干渉は、子どもの自立心を妨げてしまいます。上手に距離を置くためのコツは以下の通りです。
コツ1:最初の数日は、少し離れて見守る
どうしても心配な最初の数日は、物陰からこっそり見守るのもアリです。ただし、子どもに気づかれないように。そして、「大丈夫そうだ」と確信したら、少しずつ距離を伸ばし、最終的には家の前で「いってらっしゃい」と見送るようにしましょう。
コツ2:GPS端末は「お守り」と心得る
GPS端末を持たせる家庭も多いでしょう。これは、親の精神安定剤として非常に有効です。ただし、常に位置情報をチェックして「今どこにいるの!」と連絡するのはNG。あくまで、「万が一、帰りが遅い時に確認するためのお守り」と捉え、子どもを信頼する姿勢を忘れないようにしましょう。
コツ3:ご近所さんと「ゆるやかな見守りネットワーク」を築く
同じ登校班の保護者と顔見知りになったり、ご近所さんに「うちの子、一年生になったんです。よろしくお願いします」と挨拶しておいたりするだけで、地域全体での「ゆるやかな見守りの目」が生まれます。これが、何よりの防犯に繋がるのです。
まとめ:心配は、信頼に変えられる。子どもの力を信じて送り出そう
初めての登下校は、子どもが親の手を離れ、社会へ踏み出す、記念すべき第一歩です。
- 親の不安は「知らない」ことから。まずは親子で通学路を歩き、危険を学ぶ。
- 「いかのおすし」や防犯ブザーなど、子どもが自分を守るための具体的な方法を教える。
- 過干渉にならず、GPSやご近所の力を借りて、上手に距離を保ちながら見守る。
親にできるすべての準備をしたら、あとは子どもの力を信じるだけです。
あなたの心配は、愛情の裏返し。その愛情を、不安ではなく「信頼」という形で、子どもに伝えてあげてください。
「いってらっしゃい!」と笑顔で送り出したその背中は、あなたが思っているよりも、ずっとずっと、たくましいはずですよ。