「うちの子、肌がカサカサで痒そう…」「ステロイドって、使っても大丈夫なの?」
子どものアトピー性皮膚炎は、多くのママ・パパが抱える悩みの種ですよね。特に、ステロイド外用薬に対しては、「副作用が怖い」「肌が黒くなるって聞いた」「一度使うとやめられなくなるのでは?」といった不安や疑問を抱いている方も少なくないのではないでしょうか。私も3姉妹の母として、子どもの肌トラブルにはいつも心を痛めてきました。現役看護師として、アトピー性皮膚炎の患者さんと接する中で、ステロイドへの誤解や不安が、適切な治療を妨げているケースを多く見てきました。
でも、ご安心ください。ステロイドは、正しく使えばアトピー性皮膚炎の治療に非常に有効な薬です。今回は、現役ママナースの私が、ステロイドへの不安を解消し、アトピー性皮膚炎の正しい知識と使い方、そして日々のスキンケアの基本について、私の経験も交えながら分かりやすく解説します。この情報が、皆さんの不安を少しでも和らげ、お子さんの肌を健やかに保つ一助となれば嬉しいです。
アトピー性皮膚炎ってどんな病気?
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激やアレルゲンが侵入しやすくなることで、炎症や強いかゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返される病気です。遺伝的な要因や、アレルギー体質が関係していると考えられています。
主な症状
- 湿疹: 赤み、ブツブツ、ジュクジュク、カサカサなど、様々な湿疹ができます。
- かゆみ: 非常に強いかゆみを伴い、掻きむしることでさらに悪化することがあります。
- 乾燥: 皮膚が乾燥しやすく、バリア機能が低下しています。
悪化因子
- 乾燥: 空気の乾燥や、保湿不足。
- 汗: 汗をかいたまま放置すると、刺激となりかゆみが増します。
- 衣類: ウールや化学繊維など、肌に刺激となる素材。
- アレルゲン: ダニ、ハウスダスト、花粉、食物など。
- ストレス: 精神的なストレスも症状を悪化させることがあります。
ステロイドは怖い?正しい知識と使い方
ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎の炎症を抑えるために非常に効果的な薬です。しかし、その「怖い」というイメージから、使用をためらってしまう方が多くいます。まずは、ステロイドに関する正しい知識を身につけましょう。
ステロイドの役割
ステロイドは、体内で作られる副腎皮質ホルモンを人工的に合成したものです。炎症を強力に抑える作用があり、アトピー性皮膚炎の湿疹や赤み、かゆみを速やかに改善します。炎症を放置すると、皮膚のバリア機能がさらに低下し、悪循環に陥ってしまうため、早期に炎症を抑えることが重要です。
副作用について
ステロイド外用薬には、確かに副作用があります。しかし、それは「不適切な使い方」をした場合に起こりやすいものです。医師の指示通りに正しく使えば、過度に心配する必要はありません。
- 皮膚が薄くなる(皮膚萎縮): 長期間、強いステロイドを同じ場所に塗り続けたり、必要以上に広範囲に塗ったりした場合に起こることがあります。
- 毛細血管拡張: 皮膚が薄くなることで、毛細血管が透けて見えることがあります。
- ニキビのような発疹:
- 色素沈着: 炎症が治まった後に、一時的に色素沈着が起こることがありますが、これはステロイドの副作用ではなく、炎症後の変化です。時間とともに薄れていきます。
正しい使い方
- 医師の指示を守る: 処方されたステロイドの種類、塗る量、塗る回数、塗る期間を必ず守りましょう。自己判断で量を減らしたり、塗るのをやめたりしないことが大切です。
- 「塗る量」の目安: 軟膏やクリームの場合、人差し指の第一関節から先に出した量(約0.5g)で、大人の手のひら2枚分の広さに塗るのが目安です(FTU:フィンガーチップユニット)。子どもの場合は、その面積に合わせて量を調整します。
- 「塗る範囲」: 湿疹や赤みがある部分に、薄く均一に塗ります。症状がない部分には塗る必要はありません。
- 「塗る期間」: 症状が改善したら、医師の指示に従って徐々に弱いステロイドに切り替えたり、塗る回数を減らしたりします。急にやめるとリバウンドすることがあるので注意が必要です。
- 保湿剤との併用: ステロイドを塗った後に、保湿剤を重ねて塗ることで、皮膚のバリア機能を高め、ステロイドの効果を維持しやすくなります。
アトピー性皮膚炎のスキンケアの基本
ステロイド治療と並行して、日々のスキンケアを丁寧に行うことが、アトピー性皮膚炎の症状を安定させるために非常に重要です。
1. 清潔にする(入浴・シャワー)
- 毎日入浴: 汗や汚れ、アレルゲンを洗い流すために、毎日入浴またはシャワーを浴びましょう。
- ぬるめのお湯: 熱すぎるお湯は、皮膚のバリア機能を低下させ、かゆみを増す原因になります。ぬるめのお湯(38~40℃程度)にしましょう。
- 低刺激の洗浄剤: 石鹸やボディソープは、香料や着色料、防腐剤などが少ない、低刺激性のものを選びましょう。泡で出てくるタイプは、摩擦が少なくおすすめです。
- 優しく洗う: 泡で優しくなでるように洗い、ゴシゴシ擦らないようにしましょう。石鹸成分が残らないよう、しっかりと洗い流してください。
2. 保湿する
- 入浴後5分以内: 入浴後、体が温まっているうちに、5分以内に保湿剤を全身に塗りましょう。皮膚が乾燥する前に塗ることで、水分を閉じ込めることができます。
- たっぷりと塗る: 保湿剤は、ケチらずたっぷりと塗りましょう。皮膚がしっとりするくらいが目安です。
- 1日2回以上: 朝と入浴後など、1日2回以上塗るのが理想です。乾燥がひどい場合は、こまめに塗り直しましょう。
- 保湿剤の種類: ワセリン、ヘパリン類似物質、セラミド配合のクリームなど、様々な保湿剤があります。お子さんの肌に合ったものを選びましょう。
3. 悪化因子を取り除く
- 衣類: 綿100%など、肌に優しい素材の衣類を選びましょう。縫い目が肌に当たらないように、裏返して着せるのも良いでしょう。
- 室温・湿度: 快適な室温と湿度を保ち、汗をかきすぎないように注意しましょう。
- ダニ・ハウスダスト対策: こまめな掃除、寝具の洗濯・乾燥、空気清浄機の活用などで、アレルゲンを減らしましょう。
- 爪を短く切る: 掻きむしりによる皮膚の損傷を防ぐため、爪は常に短く切り、清潔に保ちましょう。
ママナースからのメッセージ:焦らず、根気強く、そして頼って
アトピー性皮膚炎の治療は、一進一退を繰り返すことも多く、ママ・パパにとっては精神的にも負担が大きいものです。私も、子どもの肌がなかなか良くならず、夜中に掻きむしる姿を見て、涙が止まらなくなった経験があります。
でも、焦らないでください。アトピー性皮膚炎は、適切な治療とスキンケアを継続することで、必ず良くなります。大切なのは、根気強く治療を続けること、そして一人で抱え込まずに、頼れる人に頼ることです。
もし、不安なことや疑問があれば、かかりつけの小児科医や皮膚科医、保健師さんに遠慮なく相談してください。私たちママナースも、皆さんの子育てを心から応援しています。お子さんの肌が健やかになり、笑顔で過ごせる日が来るよう、一緒に頑張りましょう!