けが

【おうち救急箱】ママナースが作った「子どもの病気・ケガ」お悩み解決マップ|発熱・嘔吐・ケガの判断に

深夜2時、体温計の「39.5℃」に心臓が凍る。その時、あなたはどうしますか?

ぐったりと赤らんだ顔で、浅い呼吸を繰り返す我が子。暗闇に光る体温計の「39.5℃」の文字。

「どうしよう…救急車?夜間病院?それとも、ただの風邪?」

心臓がドクドクと音を立て、頭が真っ白になる感覚。きっと、子育て中のあなたなら、一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

ナースとして働く私でさえ、我が子が病気の時は冷静ではいられません。知識があるはずなのに、我がこととなると、ただただ不安な一人の母親になってしまうのです。

このページは、そんな「もしもの時」に、あなたが少しでも落ち着いて行動するための「お守り」です。3姉妹の母として、そして現役ナースとしての経験を総動員して作った、家庭でできる「お悩み解決マップ」

ぜひブックマークして、いざという時にすぐ開けるようにしてくださいね。


症状別お悩み解決マップ|家庭でのケアと「病院へ行く」サイン

CASE 1:発熱・けいれん

子どもの体調不良で最も多い「発熱」。一番大切なのは、**熱の高さよりも「子どもの機嫌と様子」**です。

▶︎ まずは、おうちでケア

  • 水分補給: 麦茶やイオン飲料など、本人が飲めるものを少しずつ、こまめに与えましょう。
  • 食事: 無理に食べさせる必要はありません。食べたがるなら、おかゆやうどん、ゼリーなど消化の良いものを。
  • 服装と室温: 汗をかいたらこまめに着替えさせ、涼しく快適な環境を保ちましょう。厚着のさせすぎは禁物です。
  • 解熱剤: 38.5℃以上で、ぐったりして眠れない、水分が摂れないなど、辛そうな時に使いましょう。熱を下げることが目的ではなく、あくまで「症状を和らげて体を休ませる」ためのお守りです。

▷【!】すぐに病院へ行くべきサイン

  • 生後3ヶ月未満の赤ちゃんの38℃以上の発熱
  • けいれんを起こした(特に5分以上続く、左右非対称、繰り返す場合)
  • 呼吸が速い、苦しそう、肩で息をしている
  • 意識がはっきりしない、ぐったりして視線が合わない
  • 水分が全く摂れず、半日以上おしっこが出ていない
  • 体に紫色の斑点(押しても消えない発疹)がある

CASE 2:嘔吐・下痢

見ている親も辛いお腹の症状。何よりも怖いのは「脱水」です。

▶︎ まずは、おうちでケア

  • 水分補給が最優先: 吐き気が強い時は、無理に飲ませず、15〜30分ほど胃を休ませます。その後、経口補水液(OS-1など)や麦茶を、ティースプーン1杯から。5分おきに少しずつ与え、飲めるようなら徐々に量を増やします。
  • 食事: 吐き気が治まったら、本人が食べたがるものを。おかゆ、すりおろしリンゴ、野菜スープなどから始めましょう。乳製品や柑橘類、油っこいものは避けて。
  • おしりのケア: 下痢が続くとおしりがかぶれやすくなります。おむつ替えのたびに、ぬるま湯で優しく洗い流してあげましょう。

▷【!】すぐに病院へ行くべきサイン

  • 脱水症状がある(唇がカサカサ、泣いても涙が出ない、おしっこの量が極端に少ない)
  • 血便が出た、便が白っぽい(ロタウイルスの可能性)
  • 噴水のように激しく吐く、緑色の吐瀉物
  • 激しい腹痛を伴い、ぐったりしている

CASE 3:咳・鼻水

風邪の代表的な症状ですが、咳の種類によっては注意が必要です。

▶︎ まずは、おうちでケア

  • 加湿: 空気が乾燥すると咳が出やすくなります。加湿器を使ったり、濡れタオルを干したりして、湿度を50〜60%に保ちましょう。
  • 水分補給: のどを潤すと、痰が切れやすくなります。
  • 鼻水の吸引: 鼻が詰まって眠れない、ミルクが飲めない時は、鼻吸い器で優しく吸い取ってあげましょう。
  • 楽な姿勢: 咳で眠れない時は、クッションやタオルで上半身を少し高くしてあげると呼吸が楽になります。

▷【!】すぐに病院へ行くべきサイン

  • 犬が吠えるような「ケンケン」という咳、またはオットセイのような咳(クループ症候群の可能性)
  • 息を吐くときに**「ゼーゼー」「ヒューヒュー」**という音がする(喘息や気管支炎の可能性)
  • 呼吸が速く、小鼻がヒクヒクしている
  • 息を吸うときに、胸や鎖骨の間がペコペコとへこむ(陥没呼吸)
  • 顔色や唇の色が悪い(青白い、紫色)

CASE 4:ケガ(頭を打った・すり傷)

元気な子ほど、ケガはつきもの。慌てず、正しい初期対応を。

▶︎ 頭を打った場合

打った直後に大声で泣き、その後ケロッとしていれば、ひとまず安心なことが多いです。冷たいタオルなどで冷やしながら、最低でも24時間は様子を注意深く観察しましょう。

▷【!】すぐに病院へ行くべきサイン(頭を打った後)

  • 意識がない、ぼーっとしている、呼びかけへの反応が鈍い
  • けいれんを起こした
  • 何度も吐く
  • 手足の動きがおかしい、左右で違う
  • 瞳の大きさが左右で違う

▶︎ すり傷・切り傷の場合

  • 洗浄が第一: まずは、水道水で傷口の砂や泥をしっかりと洗い流します。石鹸を使ってもOK。
  • 消毒は不要: 昔と違い、今は消毒液で傷口を刺激することは推奨されていません。洗浄が一番の消毒です。
  • 湿潤療法: キズパワーパッドのような湿潤療法用の絆創膏を使うと、きれいに早く治りやすいです。

我が家の「おうち救急箱」の中身

いざという時のために、最低限これだけは揃えておくと安心です。

  • 体温計
  • 子ども用の解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)
  • 経口補水液(粉末タイプが場所を取らず便利)
  • 鼻吸い器
  • 保湿剤(ワセリンなど)
  • 大小さまざまなサイズの絆創膏
  • 湿潤療法用の絆創膏
  • 滅菌ガーゼ
  • サージカルテープ
  • 小さなハサミ
  • 毛抜き(トゲ抜き用)

最後に。最大の武器は「ママの直感」です

このマップは、あくまで一般的な目安です。

何より大切なのは、毎日お子さんを見ているあなたの「なんだかいつもと違う」という直感。その感覚は、どんな医学書よりも正しいことがあります。

「これくらいで病院に行くのは大げさかな?」なんて、絶対に思わないでください。迷ったら、ためらわずに、かかりつけ医や#8000(子ども医療電話相談)に電話してくださいね。

あなたの不安が、少しでも軽くなりますように。心から願っています。

転んでも泣かない子は偉い?ナースが語る「痛い」と言える環境の本当の大切さ

公園で転んで、膝を擦りむいても、泣かずに立ち上がる我が子。「偉いね」と褒めていませんか?

公園の遊具から、ドスンと落ちて、膝を擦りむいた我が子。
一瞬、顔を歪ませたものの、グッと唇を噛み締め、泣かずに立ち上がった。

「〇〇ちゃん、偉いね!泣かないで、強いね!」

周りのママ友も、「すごいねー!」と、褒めてくれる。
私も、内心、「うちの子、我慢強い子に育ったな」と、誇らしく思っていました。

でも、ナースとして、たくさんの子どもたちと接してきた経験から、
そして、3姉妹の母として、子育てをしてきた中で、
私は、あることに気づいたんです。

それは、「転んでも泣かない子が、本当に偉いわけではない」ということ。
むしろ、
「痛い」と素直に感情を表現できること、そして、その痛みを親が受け止めること
の方が、子どもにとって、はるかに大切なのではないか、と。

今日は、そんな、子どもの「痛み」と、親の「共感」について、ナースの視点から、お話しさせてください。

「転んでも泣かない子」は、本当に偉いのか?

一見すると、「転んでも泣かない子」は、「強い子」「我慢できる子」に見えますよね。
でも、その「泣かない」という行動の裏には、様々な理由が隠されている可能性があります。

  • 「泣いてはいけない」というメッセージ:親や周囲から「泣かないの!」「男の子(女の子)なんだから、我慢しなさい!」というメッセージを、繰り返し受け取っていると、子どもは「泣くことは悪いこと」だと学習してしまいます。
  • 感情の抑圧:痛いのに、泣けない。悲しいのに、悲しいと言えない。感情を抑圧することは、子どもの心に大きな負担をかけます。
  • 親への遠慮:親が忙しそうにしているから、心配をかけたくないから、と、子どもなりに親に遠慮している場合もあります。

痛みを我慢することが、子どもの心に与える影響は、決して小さくありません。
自分の感情を素直に表現できないことは、将来、ストレスを抱え込みやすくなったり、他者とのコミュニケーションに支障をきたしたりすることにも繋がりかねないのです。

小さな痛みを知らないと、大きな痛みが想像できない

これは、身体的な痛みだけでなく、心の痛みも同様です。

子どもは、小さな痛みを経験し、それを親に伝え、親がその痛みに寄り添い、受け止めてもらうことで、初めて「痛い」という感覚を、具体的に理解することができます。

そして、その経験があるからこそ、
「自分が痛い時、どんな気持ちになるか」
「相手が痛い時、どんな気持ちになるか」
を想像できるようになり、他者の痛みにも共感できる、優しい心を育むことができるのです。

「転んでも泣かない子」は、もしかしたら、この「小さな痛みを知る」という大切な経験を、十分にできていないのかもしれません。

「痛い」と言える環境を作るための、3つのステップ

では、どうすれば、子どもが「痛い」と素直に感情を表現できる環境を作れるのでしょうか。

ステップ1:「痛かったね」「びっくりしたね」と、共感する

子どもが転んだり、ぶつけたりした時、まず最初にすべきことは、子どもの感情に寄り添うことです。
「痛かったね」「びっくりしたね」「ママも見ててヒヤッとしたよ」
と、子どもの気持ちを言葉にして、共感してあげましょう。
この共感が、子どもにとって、何よりも大きな安心感を与えます。

ステップ2:「痛かったら、泣いてもいいんだよ」と伝える

「泣かないの!」ではなく、
「痛かったら、泣いてもいいんだよ」
「悲しかったら、悲しいって言っていいんだよ」
と、感情を表現することを、許容するメッセージを伝えましょう。
子どもは、親に感情を受け止めてもらえることで、安心して、自分の気持ちを表現できるようになります。

ステップ3:「ママがいるから大丈夫だよ」と、安心させる

痛みを共有し、共感した上で、
「ママがいるから大丈夫だよ」
「よしよし、痛いの痛いの飛んでいけー」
と、安心感を与える言葉やスキンシップで、子どもを包み込んであげましょう。
この安心感が、子どもの心を癒し、また次の一歩を踏み出す勇気を与えます。

ケガを恐れすぎないで。大切なのは「対処法」を教えること

もちろん、子どもには、できるだけケガをしてほしくない、と願うのが親心です。
でも、ケガをさせないようにと、過保護になりすぎるのは、子どもの成長の機会を奪ってしまうことにも繋がりかねません。

大切なのは、ケガを恐れすぎることではなく、
**「ケガをした時に、どうすればいいか」**を、子どもに教えることです。

  • 「痛い」と親に伝えること。
  • 傷口を清潔にすること。
  • 絆創膏を貼ること。

これらの対処法を、子どもと一緒に経験することで、子どもは、自分の体を守る術を学び、同時に、親への信頼感を深めていきます。

「痛い」と言える子が、本当に強い子

転んでも泣かない子が偉いのではなく、
「痛い」と素直に感情を表現できる子が、本当に強い子です。

親は、子どもの痛みに寄り添い、感情を受け止めることで、
子どもの心と体の両方を育むことができます。

どうか、あなたの目の前で、痛みを訴える我が子を、
「弱い子」だと、思わないでください。
その「痛い」という言葉は、あなたへの、そして、自分自身への、大切なメッセージなのですから。