「最近の若い者は、言われたことしかやらない」「自分で考えて動けない」「成長が遅い」
そんな嘆きを、よく耳にします。
「それに比べて、自分たちの若い頃は…」
そう思った経験、あなたにもあるのではないでしょうか。
私たち、いわゆる「見て覚えろ」と言われて育った世代、別名「五十六方式」世代は、終身雇用、年功序列が当たり前の時代に社会に出ました。
「見て覚えろ」「失敗から学べ」「とにかくやれ」
上司からの指示は絶対であり、先輩の背中を見ながら、がむしゃらに働いたものです。
当時は、それが「当たり前」でした。
高度経済成長期、日本企業が右肩上がりの成長を遂げていたあの頃。
「絶対的な正解」が存在し、それを疑う事無く、忠実に実行することが求められた時代。
「見て覚えろ」方式は、そんな時代にマッチした、非常に効率的な人材育成方法だったのです。
この「見て覚えろ」方式、山本五十六の言葉である「やって見せて、言って聞かせて、やらせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」が、その代表的な例でしょう。
しかし、彼の言葉で最も重要視されているのは、「やらせてみて」であり、「褒めて」の部分だけなのです。
つまり、山本五十六自身は、このやり方が、全ての人に当てはまる育成方法などとは、考えていなかった事になります。
山本五十六の言葉を、さも「絶対的な正解」であるかのように盲信し、その一部だけを切り取って、人材育成をしてきた事こそが、現代における悲劇を生み出した真犯人なのです。
この「見て覚えろ」方式は、一部を切り取って運用された結果、以下のような功罪を生み出してきました。
「見て覚えろ」方式の功罪
功
- 均質的な人材育成: 決められた「正解」を、疑う事なく、忠実に実行できる人材を、大量に、効率的に育成できる。
- 組織の効率化: 上意下達、トップダウン型の組織運営により、業務を効率化できる。
- 経験の伝承: 熟練者の「経験」や「知識」を、組織内に蓄積できる。
罪
- 「考える力」の欠如: 「正解」を求めることだけに集中するあまり、自ら考え、判断する力が育たない。
- 「指示待ち」を生む: 上司からの指示を待つことが当たり前になり、自主性や主体性が育たない。
- 「変化」への不適応: 環境の変化に対応できず、組織が硬直化する。
- 「老害」を生み出す土壌となる:「正解」は不変である、という盲信が、「過去の経験」に固執する原因となり、意図せず「老害」と呼ばれるようになる。
つまり、「見て覚えろ」方式は、あくまでも人材育成の「入口」であり、「一部」でしかないのです。
しかし、「見て覚えろ」方式を、「絶対的な正解」と勘違いし、この一部だけを切り取った育成方法が、長年運用されてきました。
結果、この「見て覚えろ」方式は、現代においては通用せず、「過去の遺物」となってしまったのです。
時代は変わった – 「絶対的な正解」は、もう存在しない
かつて有効だった「見て覚えろ」方式が通用しなくなった理由は、「絶対的な正解」が存在しなくなったからです。
技術革新、グローバル化、価値観の多様化…現代社会は、めまぐるしく変化しています。
昨日までの「正解」が、今日には通用しなくなる。そんな時代に、私たちは生きています。
このような時代に求められるのは、上司の指示を忠実に実行する人材ではなく、自ら考え、判断し、行動できる「自律型」の人材 です。
これまでの「正解」に捉われず、自分自身の「納得解」を導き出せる人材です。
「見て覚えろ」方式は、人材育成の「入口」であり、「一部」でしかないのです。
「見て覚えろ」方式で育ってきたあなたは、決して「過去の遺物」などではありません。
しかし、現代を生き抜く為には、「入口」から先へ、つまり「絶対的な正解」から「納得解」へと、考え方をアップデートする必要があるのです。
そのためには、あなた自身が、「五十六方式」によって最適化された、あなたの思考の癖に気づき、それを意識的に変えていく必要があります。
「見て覚えろ」世代が取るべき、次の一歩
では、具体的にどうすればいいのか?
安心してください。
「見て覚えろ」方式で育ってきたあなたには、長年培ってきた「経験」と「知識」という、強力な武器があります。
しかし、残念ながら、その「経験」と「知識」という「武器」は、現代という戦場においては、少々古びてしまっていることも、また事実です。
しかし、考え方を変えれば、その「武器」は、まだまだ強力な「武器」として、あなた自身を助けてくれるのです。
その「武器」を、現代という戦場で、どの様に活用するのか?
次の記事では、その「武器」の捉え方を再定義し、「老害」と呼ばれる原因を徹底分析します。
そして、意図せず「老害」と呼ばれてしまう状況から脱却し、現代でも通用する「武器」へと強化する方法を、一緒に考えていきましょう。
「正解」を求めるのではなく、あなた自身の「納得解」を導き出す旅へ。
さあ、一緒に出発しましょう!
注釈:
- 山本五十六…大日本帝国海軍の軍人。最終階級は元帥海軍大将。
- 五十六方式…山本五十六の言葉に代表されるような、かつての日本企業で主流だった育成方法を指す、このブログシリーズ内での造語。
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